冴えない社畜、異世界で最凶聖女に地獄指導されて魔王軍に挑む

ワスレナ

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第12話 突然の火種

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 エレノーラ様から魔法講義を受け始めてから一週間後。

 私は講義最終日にのぞんでいる。今日は複数の属性魔法を操ることになっている。

 あれから毎日社畜のごとく魔法習得に励んだ。おかげでほぼすべての属性魔法を習得したのだ。

 だだっ広い荒野にエレノーラ様と二人だけ。少し離れた場所で彼女が見守る中、私は詠唱を開始する。

「闇と凍気をまといし雷の矢よ」

 詠唱に反応し、三属性の力を持つ槍サイズの矢が少し離れた先に出現する。

「力となりて敵を撃て。漆黒の雷ダークネス・サンダー!」

 矢は勢いよく轟音ごうおんとともに飛んでいき、数キロ先の対象物に刺さり爆発する。

「お見事ですわ。素晴らしいです」

 エレノーラ様が称賛しょうさんし私に近づく。

「ふぅ。何とかできましたね」

「いい感じですよ。では次は五つの属性魔法を同時に発動してみましょう」

「えっ?」

 エレノーラ様から鬼クエストが出される。三日目以降ずっとこの調子である。だが今日は格別に難易度が上がっている気がする。

「師匠、さすがにそれはちょっと……」

「タクトならできますわ。やってみてくださいな」

「は、はい」

 エレノーラ様はニコニコしている。ずっとこの調子でやってきている。

「まぁ、師匠がそうおっしゃるならできるのかもしれませんね」

「大丈夫です。私がしっかり見てますから」

 こうなってはもう後には引けない。私は数度の試行錯誤の上で何とか術を発動させることができた。

「ほら、できたじゃないですか。素晴らしいですわ」

「は、はぁ……」

 できはしたがまだまだ微調整が必要のようだ。本当にエレノーラ様にはかなわない。

 その時、私達のもとに突然転移する者が現れる。

「大丈夫、敵ではありません。王族直属の兵士です」

 銀の甲冑に身を包む金髪の男。相当の手練てだれのようだ。彼は私を一目見るも、すぐにエレノーラ様の方を向いて話し始める。

「突然の転移ご容赦ください。聖女様に火急かきゅうの要件がありはせ参じました」

「どうしましたか?」

「ここでは伝えられぬ件でして、共にお越しいただけますか」

「わかりました」

 不測の事態が起きたのだろうか。こんな事は初めてだ。

「タクト、しばらく自習していてください。すぐに戻りますので」

「わかりました。お気をつけて」

 エレノーラ様は兵士のエスコートで転移していった。

「さて、復習しておくかな。違う属性で試してみるか」

 もう一度五属性同時発動をやってみる。微妙な調整も試してみることにした。

 少しすると、エレノーラ様が帰還してきた。

「持ち場を離れてしまい申し訳ありませんでした。続きを行いますね」

「お疲れ様です。何か問題があったのですか?」

「ええ。関わりが出てくるのでタクトにも話しておきます。どうやら隣国との関係が悪化し、戦争になりそうとのことでした」

「へ? それは大事おおごとじゃないですか!?」

「ええ。そういう時は国家を代表する勇者同士の決闘で決着をつけるのですが、今我が国の勇者、イグノールがダンジョンの深層を攻略中で連絡がつかないのだそうです」

「え? それってまずいのでは?」

 エレノーラ様は少し困り顔で答える。

「そうなんです。で、先ほど聞いてきた話によると、もしかすると私達が代役をすることになるかもしれないのです」

「は? 師匠は戦闘されるのですか?」

「聖女は戦闘しません。貴方が矢面やおもてに立たされるかもしれないのです」

「ええっ!」

 ここに来てから一週間が過ぎたが、まさか国家間の戦争にり出されることになるとは。

「それはいつなのですか?」

「まだはっきりしたことは決まっていないそうです。現在戦争を回避すべく交渉中のようです」

「そうですか……」

「勇者イグノール達に何かあったのかもしれません。勇者不在で代理を立てると不利な状況になってしまいますね……」

 まあ、考えてみればそもそも世界の危機で召喚されたのだから、遅かれ早かれこんな状況が来るのはわかっていた。転移していきなりそうならなかっただけでも幸運だったのかもしれない。

「今日で講義を終える予定でしたが、事が決まるまではもっと高度な修練をいたしましょうか」

「わかりました。引き続きよろしくお願いいたします」

 準備に越したことはない。エレノーラ様の申し出を受けることにした。

 その後ハードな魔法修練が続き私は社畜のごとく励んだ。夕暮れになる頃にはヘトヘトになっていた。

「今日はここまでにしましょう。ゆっくり休んでくださいね」

「ハァ、ハァ、ありがとうございました。また明日からよろしくお願いします、師匠」

 あおむけに倒れながらエレノーラ様に挨拶する。彼女は微笑ほほえみながらヒールをかけてくださり、私は体調を回復できた。

「ありがとうございます。助かりました」

「では修道院に戻りましょうか」

「はい」

 冴えないサラリーマンだった私がこの異世界に大きく関わる時が近づいていた。

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