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第38話 魔の巣窟アビスへ
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私はグレッグ達と別れた後、テレポートで自室へと戻る。運んでもらった食事を済ませ、身を清めながらグレッグ達との戦闘を振り返る。
「なかなか大変だったなあ。みんなとの連携と敵の強さのバランスが難しい……」
グレッグ達はレベルを上げているが、ボスに立ち向かうにはまだ心もとない気がする。十分なバックアップが必要だと感じる。
服を着替えて準備を整え、エレノーラ様の部屋へ顔を出す。彼女は一通りの装備を整えて待ってくれていた。彼女は目をキラキラ輝かせている。
「師匠、只今戻りました。って、かなりの正装ですね」
「タクト、お疲れ様です。久しぶりのアビスですからね。グレッグ達とのダンジョンはどうでしたか?」
「はい。今日はバジリスクとバジルラージという大蛇を相手にしました」
「まあ、それはなかなかの強敵でしたわね」
「そうなんですよ。十階層でもボスは結構強い魔物が出るみたいです」
「なるほど。タクトにとっても良い修練となったようですね」
エレノーラ様は少し緊張した表情になり続ける。
「ですが、アビスはダンジョン以上に過酷な場所です。向かう前に準備を整えましょう」
エレノーラ様はそう言うと、私に様々な魔法をかけてくださった。
「これで一通りですね。今後は自分でかけてもらいますので覚えてくださいね」
「わかりました。ありがとうございます」
「アビスへ行くにあたって二つほど。まずはこれを受け取ってください」
エレノーラ様が杖を出現させる。大きな赤色の心臓を模した宝石がついた見事な錫杖だ。
「これは?」
「約束された聖杖です。聖属性の杖ですが魔力の調整などを行ってくれます。これを使いなさい」
「わかりました」
エレノーラ様から杖を受け取る。掴んだ瞬間神々しいオーラが身体に流れ込むのを感じる。私にとって初めてとなる杖だ。インベントリを出現させ、収納する。
「それともう一つ、魔力の制御をして気配を絶ってください。いつもの魔力制御以上にです」
エレノーラ様が手本を示して実践する。
「おお! 気配まで消えてますね」
「できますか?」
魔法というよりはスキルに近い感じだが、仕組みは似た魔法の手法で何とかなりそうだ。
「やってみます」
私は集中し、いつもの制御に乗せてやってみる。
「いいですね。そのくらいで大丈夫でしょう」
加減としてはそんなに難しくないし、疲れもほとんどない。すぐ慣れそうだ。
「注意事項は以上ですね。それでは、参りましょうか」
エレノーラ様が転移の構えを取る。
「アビスに行く方法はいくつかありますが、教皇様が直接のポータルを閉じてしまった事、この世界に悪魔が来ないようにするため、正規のルートを使いません」
エレノーラ様の話によると、アビスへの方法はアストラル・プロジェクション、ゲートの二つの呪文が存在するが、どちらも超高位魔法なのだそうだ。またアビスにはたくさんのポータルがあり、現世からポータルでつなぐこともできるそうだが、悪魔に侵攻される危険があり封じられたのだそうだ。
「ではどうやって行くのですか?」
「力技ですが直接転移します。まずはアビスの入り口へ、グレーター・テレポート!」
魔法が発動する。一瞬にして私達はアビスの入り口といわれる場所に転移する。
荒涼とした大地が広がり、空は一面灰色に包まれている。そしてところどころに大きな岩が浮遊し、悪魔達が徘徊している。多くの悪魔達の瘴気も感じる。
「ここが、アビス?」
「そうです。ここがアビス第一階層、パズニアです。タクト、この座標を記憶しておいてくださいね」
「わかりました」
「タクト、体調の変化はいかがですか?」
この世界に入ってから確かに違和感は感じるようになったが、さしたる変化はない。
「はい。今のところ問題ありません」
「そうですか。まだ入り口とはいえ、人間にとっては過酷な状況なのです。今までも耐性魔法があっても苦しむ人は多くおりました」
「なるほど」
エレノーラ様は続ける。
「この階層は始まりの地でありながら、すでに混沌が支配する世界です。様々な異邦人が訪れますが、同時に多くのデーモン・ロードが領地を持ち支配しているのです」
「こんな場所に訪れる人がいるのですか? だとしても、多くの危険が伴うということですね」
「その通りです。そして私もかなり調査しましたが、広大すぎてすべてを知るには至っておりません」
そんな危険な場所で、エレノーラ様は一体何を成そうとしているのだろう? まあ息抜きとはおっしゃっていたが……割に合わない息抜きだと思う。
「ただ、かなりの地域の浄化をしましたし、ポータルに関しては三分の一くらいはどこにつながっているのかを一つ一つ調べて記録はしています。うかつに入るとどこに飛ばされるかわかりません」
確かにパッと見ただけでもポータルらしきものが散見される。標識もなくいくつも立っている様子は気味が悪い。
途方もない広さとまがまがしさ、流れる空気感で大変な場所であると直感する。浄化したとおっしゃっているが、しばらくすればまた戻ってしまうのだろう。
私達が話をしていると、どこから嗅ぎつけてきたのか悪魔が集まってくる。大小様々な種類の悪魔だ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【まめちしき】
【約束された聖杖】……白金に輝く杖身は銀糸のような繊細な装飾に覆われ、先端には心臓の形を模した紅玉《オス・コードジェム》が脈動するように輝いている。杖を握ると、持ち主の鼓動と共鳴する神聖な律動が手のひらを通じて伝わる。この杖は、かつて世界を癒した伝説の聖女が、「必ず守る」という誓いの末に神より託された奇跡の具現である。神聖そのものの意志が込められており、嘘偽りなき誓いにだけ真価を発揮する。
【アストラル・プロジェクション】……最高位呪文。術者は自分の物質的肉体から霊体を解き放ち、アストラル体を他の次元界に投射する事で、他の次元界での行動が可能になる。
【ゲート】……最高位呪文。術者の次元界と望みの次元界との間を接続し、往来できる。また、ゲートを通して特定の存在、特定種類の存在を招き入れられる。
【第一階層パズニア】……荒れ果てた荒野の上空に巨大な地片が浮遊し、飛行デーモンが徘徊する世界。頻繁に熱風や疫病が発生して、デーモン以外の住人は苦しむ。岩がちな渓谷の底にはスティクス河が流れ、より深い階層に流れ落ちる。この階層には無数の次元門が存在する。他の次元界に繋がっているものや、奈落のより深い階層へ直通しているものなど様々。中央にグランド・アビスと呼ばれる巨大な亀裂があり、その壁面には特に奈落の様々な階層との次元門が多く開いている。
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「なかなか大変だったなあ。みんなとの連携と敵の強さのバランスが難しい……」
グレッグ達はレベルを上げているが、ボスに立ち向かうにはまだ心もとない気がする。十分なバックアップが必要だと感じる。
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「師匠、只今戻りました。って、かなりの正装ですね」
「タクト、お疲れ様です。久しぶりのアビスですからね。グレッグ達とのダンジョンはどうでしたか?」
「はい。今日はバジリスクとバジルラージという大蛇を相手にしました」
「まあ、それはなかなかの強敵でしたわね」
「そうなんですよ。十階層でもボスは結構強い魔物が出るみたいです」
「なるほど。タクトにとっても良い修練となったようですね」
エレノーラ様は少し緊張した表情になり続ける。
「ですが、アビスはダンジョン以上に過酷な場所です。向かう前に準備を整えましょう」
エレノーラ様はそう言うと、私に様々な魔法をかけてくださった。
「これで一通りですね。今後は自分でかけてもらいますので覚えてくださいね」
「わかりました。ありがとうございます」
「アビスへ行くにあたって二つほど。まずはこれを受け取ってください」
エレノーラ様が杖を出現させる。大きな赤色の心臓を模した宝石がついた見事な錫杖だ。
「これは?」
「約束された聖杖です。聖属性の杖ですが魔力の調整などを行ってくれます。これを使いなさい」
「わかりました」
エレノーラ様から杖を受け取る。掴んだ瞬間神々しいオーラが身体に流れ込むのを感じる。私にとって初めてとなる杖だ。インベントリを出現させ、収納する。
「それともう一つ、魔力の制御をして気配を絶ってください。いつもの魔力制御以上にです」
エレノーラ様が手本を示して実践する。
「おお! 気配まで消えてますね」
「できますか?」
魔法というよりはスキルに近い感じだが、仕組みは似た魔法の手法で何とかなりそうだ。
「やってみます」
私は集中し、いつもの制御に乗せてやってみる。
「いいですね。そのくらいで大丈夫でしょう」
加減としてはそんなに難しくないし、疲れもほとんどない。すぐ慣れそうだ。
「注意事項は以上ですね。それでは、参りましょうか」
エレノーラ様が転移の構えを取る。
「アビスに行く方法はいくつかありますが、教皇様が直接のポータルを閉じてしまった事、この世界に悪魔が来ないようにするため、正規のルートを使いません」
エレノーラ様の話によると、アビスへの方法はアストラル・プロジェクション、ゲートの二つの呪文が存在するが、どちらも超高位魔法なのだそうだ。またアビスにはたくさんのポータルがあり、現世からポータルでつなぐこともできるそうだが、悪魔に侵攻される危険があり封じられたのだそうだ。
「ではどうやって行くのですか?」
「力技ですが直接転移します。まずはアビスの入り口へ、グレーター・テレポート!」
魔法が発動する。一瞬にして私達はアビスの入り口といわれる場所に転移する。
荒涼とした大地が広がり、空は一面灰色に包まれている。そしてところどころに大きな岩が浮遊し、悪魔達が徘徊している。多くの悪魔達の瘴気も感じる。
「ここが、アビス?」
「そうです。ここがアビス第一階層、パズニアです。タクト、この座標を記憶しておいてくださいね」
「わかりました」
「タクト、体調の変化はいかがですか?」
この世界に入ってから確かに違和感は感じるようになったが、さしたる変化はない。
「はい。今のところ問題ありません」
「そうですか。まだ入り口とはいえ、人間にとっては過酷な状況なのです。今までも耐性魔法があっても苦しむ人は多くおりました」
「なるほど」
エレノーラ様は続ける。
「この階層は始まりの地でありながら、すでに混沌が支配する世界です。様々な異邦人が訪れますが、同時に多くのデーモン・ロードが領地を持ち支配しているのです」
「こんな場所に訪れる人がいるのですか? だとしても、多くの危険が伴うということですね」
「その通りです。そして私もかなり調査しましたが、広大すぎてすべてを知るには至っておりません」
そんな危険な場所で、エレノーラ様は一体何を成そうとしているのだろう? まあ息抜きとはおっしゃっていたが……割に合わない息抜きだと思う。
「ただ、かなりの地域の浄化をしましたし、ポータルに関しては三分の一くらいはどこにつながっているのかを一つ一つ調べて記録はしています。うかつに入るとどこに飛ばされるかわかりません」
確かにパッと見ただけでもポータルらしきものが散見される。標識もなくいくつも立っている様子は気味が悪い。
途方もない広さとまがまがしさ、流れる空気感で大変な場所であると直感する。浄化したとおっしゃっているが、しばらくすればまた戻ってしまうのだろう。
私達が話をしていると、どこから嗅ぎつけてきたのか悪魔が集まってくる。大小様々な種類の悪魔だ。
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【まめちしき】
【約束された聖杖】……白金に輝く杖身は銀糸のような繊細な装飾に覆われ、先端には心臓の形を模した紅玉《オス・コードジェム》が脈動するように輝いている。杖を握ると、持ち主の鼓動と共鳴する神聖な律動が手のひらを通じて伝わる。この杖は、かつて世界を癒した伝説の聖女が、「必ず守る」という誓いの末に神より託された奇跡の具現である。神聖そのものの意志が込められており、嘘偽りなき誓いにだけ真価を発揮する。
【アストラル・プロジェクション】……最高位呪文。術者は自分の物質的肉体から霊体を解き放ち、アストラル体を他の次元界に投射する事で、他の次元界での行動が可能になる。
【ゲート】……最高位呪文。術者の次元界と望みの次元界との間を接続し、往来できる。また、ゲートを通して特定の存在、特定種類の存在を招き入れられる。
【第一階層パズニア】……荒れ果てた荒野の上空に巨大な地片が浮遊し、飛行デーモンが徘徊する世界。頻繁に熱風や疫病が発生して、デーモン以外の住人は苦しむ。岩がちな渓谷の底にはスティクス河が流れ、より深い階層に流れ落ちる。この階層には無数の次元門が存在する。他の次元界に繋がっているものや、奈落のより深い階層へ直通しているものなど様々。中央にグランド・アビスと呼ばれる巨大な亀裂があり、その壁面には特に奈落の様々な階層との次元門が多く開いている。
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