冴えない社畜、異世界で最凶聖女に地獄指導されて魔王軍に挑む

ワスレナ

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第39話 パズニアの悪魔

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 エレノーラ様が接近する悪魔の群れを見て話す。

「あれはタナーリとオビリスの悪魔ですね。アビスのほとんどの悪魔がタナーリ族です」

 頭の中のデータと目の前の悪魔が一致する。地上と空を様々な種類の悪魔達がこちらへ向かっている。グレッグ達でも簡単に倒せるだろう者もいれば、バジルラージ以上の力を所有するであろう者もおり、バラエティーに富んでいる。時折り金切り声をあげ、招かれざる客にイラついているようにも見える。

「攻撃はしてきませんね」

「まだ見計らっているのでしょう。そのうち来ますよ」

 エレノーラ様のおっしゃる通り、悪魔達の数がどんどん増え、徒党を組み始める。

「どうしますかね。ここはタクトにやってもらいましょうか」

「え? 何をすれば?」

「一番効くのは聖属性魔法です。『聖なる領域ホーリー・フィールド』を展開しましょうか」

「わかりました」

 私はインベントリを開き約束された聖杖プレッジハートロッドを取り出す。
 
 空と地上の悪魔が一帯を埋め尽くす。私は呪文の構えに入る。血気盛んな悪魔が先走って襲いかかってくる!

けがれたすべてを洗い流せ! 『聖なる領域ホーリー・フィールド』!」

 私を中心に魔法が発動する! 聖属性の空間が一気に空へ放出され、同心円状で辺り一帯に広がっていく。

 攻撃を仕掛けてきた悪魔はもちろん、集結していた悪魔達がまばゆい光を浴びて浄化され、消滅していく。


グオオオオオオオオ!!!


 彼らの攻撃は一つたりとも私には届かず、悪魔達の断末魔が響き渡る。

「なかなか良い感じですね。静かになりました」

 エレノーラ様がめてくださる。聖属性を帯びたフィールドは半径三キロくらいだろうか。一帯の悪魔達が消滅した。不穏な空気も同時に浄化することができた。

 しかしこの階層全体が異常を感じたのか、遠くで禍々まがまがしい雲が形成されている。

「師匠、あの雲は一体?」

「上位の悪魔達が来そうですね。警戒しておいてください」

「わかりました」

 雲の中から大きな気配がいくつか出現する。だが遠くて姿までは確認できない。

「デーモン・ロードの気配ですね」

 エレノーラ様が冷静に分析を下す。気配はこちらに気付き近づいてくる。近くを浮遊している悪魔達もついて来る。

 やがて到達したデーモン・ロード達が空中から私とエレノーラ様を見下ろす。心なしか手が振動しているように見える。

「き、貴様達か! パズニアのことわりを乱すやからは!」

 先頭に立つ声の主は、深緑色のひょろ長い顔で全身ぶくぶくに太っており、多くの勲章をつけたダブダブの軍服を着ている。体中から液体を流し、シュウシュウと音を立てている。

「あらあら。ここはアビスでしょう? ことわりがあるなどと初耳ですわ」

「う、うるさい! お、俺達の世界には俺達の流儀があ、あるのだ。お、俺達が来たからにはもう何もさせぬぞ!」

「ふふふ」

 エレノーラ様が不敵なみを浮かべる。

「な、何がおかしい!」

「しばらく見ないうちに偉くなりましたね、バルタゾ」

「くっ! お、俺はもともと偉いぞ!」

「私を忘れてしまったのでしょうか? ああ、貴方は馬鹿でしたからね」

「な、何をお!」

「私は聖女です。嘘は申せませんわ」

「ど、どこが聖女だ! この……あ、悪魔めが!」

「面白い冗談ですね。めて差しあげますわ」

「ば、馬鹿にしおって!!」

「ええ。貴方は馬鹿ですから」

 バルタゾと呼ばれる太ったデーモン・ロードはエレノーラ様の挑発に激昂げきこうしている。

「何もできずに死んだのをもう忘れたのですか。本当に馬鹿な悪魔ですね」

 エレノーラ様、すごく挑発している……大丈夫なのか?

「あ、あの時は……ゆ、油断しただけだ。もう油断もないぞ」

「馬鹿でもさすがに覚えておりましたか。いいですわ、全力で来なさい。復活してどれほど強くなったか採点して差しあげますわ」

「い、言わせておけば!! 食らいやがれ!」

グルオオオオオオッ!!!

 バルタゾは全力の咆哮ほうこうを上げ、漆黒の衝撃波を撃ち放つ!

「ぬるい」

 漆黒の衝撃波がエレノーラ様に届くことはなかった。

「ぐぎゃあぁぁぁ!!!」

 エレノーラ様のまばたきだけで無情にもすべてがかき消える。バルタゾは浄化、消滅してしまう。

「一点ですわね。もちろん百点中です」

 エレノーラ様が残ったデーモン・ロード達を見つめる。

「全然足りませんわ。あれから何もしてなかったのですか。がっかりですわ」

 残った他のデーモン・ロード達が焦りと恐怖で引きつっている。

 【欺瞞ぎまん羽衣はごろも】レゼシュ=ファラル、【焙獄ばいごくの鉄輪】ゾル=ガザン、【戦歌の飢女きじょ】リヴィア=エル、【骨塔の語り部】イクリズ=オラフ。エレノーラ様の記録したデータによれば、いずれもパズニアに居を構える中位クラスのデーモン・ロードだそうだ。
 
「あり得ぬ。人間に恐怖するなど!!」

「私は聖女です。恐怖などもたらすことはありません」

「ふ、ふざけるな!」

 彼らは気合を上げてエレノーラ様への恐怖を払拭しようと試みる。今までより力が二段階は上がったようだ。

「グフフフフ!! 力があふれるぜ。悪魔をめるなよ!」

 デーモン・ロード達は更にまがまがしさを強め、私達に牙をむくのだった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【まめちしき】

【タナーリ】……アビスにむデーモンの主流種族。彼らは混沌にして悪の定命存在の魂が進化したものだ。その死の瞬間にアビスそのものから生まれたのである。常に互いに陰謀を巡らせあい領地を侵略している。

【オビリス】……最古のデーモンの種族で、タナーリが生まれる前にアビスを支配していた。現在は敗残勢力で少数派であり、絶滅に向け死にゆく種族。

【バルタゾ】……弱小デーモン・ロード。深緑色の皮膚に長い顔。皮膚からは病的な液体が噴き出し、軍服にまで染み出している。偉大なデーモン・プリンスであるフラズ・アーブルの家臣として仕え、”虚ろの中心”に続く穴で歩哨ほしょうに立っている。

※バルタゾ以外のデーモン・ロードについては次回に解説いたします。


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