41 / 62
第41話 アビスからの帰還
しおりを挟む
「私は一体……どうしてここにいるのか、誰なのかもわからない……」
「そ、そうですか……どうすりゃいいんでしょうね、ハハハ」
彼女をこんな風にしてしまった張本人がどうしていいかわからずにいた。笑ってごまかしている場合ではない。
考えあぐねている私を見かねてか、エレノーラ様がやってくる。
「お困りのようですね、タクト」
「は、はい……。師匠、彼女の件は一体どうしたら良いでしょう?」
エレノーラ様が人間となったリヴィアをひと目見る。彼女達の目が合う。
「これはもう見事というしかないですね。記憶もないのですね」
「はい」
「そうですね……。貴女はミリエラ=エルンとして私と共に来なさい。悪いようには致しませんので」
リヴィアの瞳が輝く。
「は……はい。名前までありがとうございます。貴女は?」
「私はエレノーラ=オーベルシュタイン。クラヴェール王国の聖女です」
「エレノーラ様、ありがとうございます」
こんなあっさり解決してしまうとは……さすがエレノーラ様。だがさっきまでデーモン・ロードだった彼女を連れ帰って本当にいいのだろうか?
「師匠、本当によろしいのですか?」
「構いませんわ。それにしてもタクト、貴方はとんでもない怪物を生み出しましたね。素晴らしいですわ」
「えっ?」
怪物? そりゃあ彼女はデーモン・ロードだった存在。それを改めて言うことでもないと思うが……。
「彼女に関する責任はすべて私が負いますので、心配ご無用ですわ」
「わ、わかりました。そこまでおっしゃるなら、よろしくお願いします」
もしリヴィアの記憶が戻ったとしても、エレノーラ様が何とかしてくださるだろう。
その後エレノーラ様は空から私達を主だった場所へ連れて行ってくださった。
「この辺りは以前私が来て地慣らししていますから、また今度ゆっくりと案内しますわ」
「は、はい……。わかりました」
今までに悪魔達の住処ともいえるこの広大な巣窟でどんなことをなさって来たのだろう……。考えるとゾッとするが、それでも興味は尽きない。
「ここでも座標を登録しておいてください。次はタクトに任せますからね」
「わかりました」
私は初めてこの地に来た場所をはじめ、いくつかの場所をテレポートに必要な座標登録を行う。人間の世界でも正確に登録する必要があるが、特にこのアビスでは雑にやると転移後に悪魔達と鉢合わせる可能性があり危険だ。
「師匠、座標の登録が終わりました」
「そうですか、早かったですね。さて、今日のところはこれで戻るとしましょうか」
「わかりました」
荒野だった土地が今はキラキラ輝きを放っている。悪魔の棲まう土地にもかかわらず、私達を引き留めようとする者はもはやいなかった。
アビス……。想像以上に恐ろしい場所だが、それ以上にエレノーラ様の力の絶大さを思い知った。底が知れないというか、もう神々でしか止められないのかもしれない。
「グレーター・テレポート」
エレノーラ様が呪文を唱えると、私達は元いたクラヴェール王国のカルシミール大聖堂の中広間に転移する。
「お疲れ様です。なかなかに大変な場所でしたね」
「そう感じましたか。これからもっと過酷になっていきますよ」
エレノーラ様はニコニコしながら答える。よほど楽しいのだろうな。ミリエラは彼女のメイドとして仕えてもらうのだそうだ。
「わかりました。頑張ります。今日もありがとうございました」
「明日からまたみっちりやりますので、今日はゆっくりしてくださいね」
エレノーラ様に挨拶し、部屋へ戻ることにする。エレノーラ様はミリエラと共に私を見送ってくださった。
部屋へ戻ると早速身を清めてさっぱりしてから、テーブルについて今日の振り返りをする。
「さてと、データを出すか」
インベントリを開きデータの可視化を行う。一度収納したデータは原本がなくても好きなようにデータを出すことができるようになった。少し前に発見した機能だ。
階層の地図、大体の状況解説、悪魔の分布とステータス情報。詳細に出ている。現地での敵情報にも活用できた。すべてエレノーラ様がまとめた情報である。
「今日の第一階層、結構膨大なデータだな」
エレノーラ様も完全に網羅は難しいとおっしゃっていた。半分くらいは不明となっている。だが調査したところはかなり詳細にデータ化されている。
「他の階層のデータもざっと見ておくか」
アビスの全階層が網羅されているわけではなく、バッサリと無い階層群もある。
「ここ全部に悪魔が棲んでいるんだよな。すごい場所だよなぁ……」
ちょうどその時、扉をノックする音がする。クララがやって来たようだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「面白いかも!」「続きが読みたい!」「陰ながら応援してるよ!」
ほんの少しでもそう思ってくれた方は、下にある【♡】【エールボタン】をポチッと押すのと、【お気に入り】をしていただけたら嬉しいです!
作者の励みになり、何よりの執筆のモチベーションになります!
「そ、そうですか……どうすりゃいいんでしょうね、ハハハ」
彼女をこんな風にしてしまった張本人がどうしていいかわからずにいた。笑ってごまかしている場合ではない。
考えあぐねている私を見かねてか、エレノーラ様がやってくる。
「お困りのようですね、タクト」
「は、はい……。師匠、彼女の件は一体どうしたら良いでしょう?」
エレノーラ様が人間となったリヴィアをひと目見る。彼女達の目が合う。
「これはもう見事というしかないですね。記憶もないのですね」
「はい」
「そうですね……。貴女はミリエラ=エルンとして私と共に来なさい。悪いようには致しませんので」
リヴィアの瞳が輝く。
「は……はい。名前までありがとうございます。貴女は?」
「私はエレノーラ=オーベルシュタイン。クラヴェール王国の聖女です」
「エレノーラ様、ありがとうございます」
こんなあっさり解決してしまうとは……さすがエレノーラ様。だがさっきまでデーモン・ロードだった彼女を連れ帰って本当にいいのだろうか?
「師匠、本当によろしいのですか?」
「構いませんわ。それにしてもタクト、貴方はとんでもない怪物を生み出しましたね。素晴らしいですわ」
「えっ?」
怪物? そりゃあ彼女はデーモン・ロードだった存在。それを改めて言うことでもないと思うが……。
「彼女に関する責任はすべて私が負いますので、心配ご無用ですわ」
「わ、わかりました。そこまでおっしゃるなら、よろしくお願いします」
もしリヴィアの記憶が戻ったとしても、エレノーラ様が何とかしてくださるだろう。
その後エレノーラ様は空から私達を主だった場所へ連れて行ってくださった。
「この辺りは以前私が来て地慣らししていますから、また今度ゆっくりと案内しますわ」
「は、はい……。わかりました」
今までに悪魔達の住処ともいえるこの広大な巣窟でどんなことをなさって来たのだろう……。考えるとゾッとするが、それでも興味は尽きない。
「ここでも座標を登録しておいてください。次はタクトに任せますからね」
「わかりました」
私は初めてこの地に来た場所をはじめ、いくつかの場所をテレポートに必要な座標登録を行う。人間の世界でも正確に登録する必要があるが、特にこのアビスでは雑にやると転移後に悪魔達と鉢合わせる可能性があり危険だ。
「師匠、座標の登録が終わりました」
「そうですか、早かったですね。さて、今日のところはこれで戻るとしましょうか」
「わかりました」
荒野だった土地が今はキラキラ輝きを放っている。悪魔の棲まう土地にもかかわらず、私達を引き留めようとする者はもはやいなかった。
アビス……。想像以上に恐ろしい場所だが、それ以上にエレノーラ様の力の絶大さを思い知った。底が知れないというか、もう神々でしか止められないのかもしれない。
「グレーター・テレポート」
エレノーラ様が呪文を唱えると、私達は元いたクラヴェール王国のカルシミール大聖堂の中広間に転移する。
「お疲れ様です。なかなかに大変な場所でしたね」
「そう感じましたか。これからもっと過酷になっていきますよ」
エレノーラ様はニコニコしながら答える。よほど楽しいのだろうな。ミリエラは彼女のメイドとして仕えてもらうのだそうだ。
「わかりました。頑張ります。今日もありがとうございました」
「明日からまたみっちりやりますので、今日はゆっくりしてくださいね」
エレノーラ様に挨拶し、部屋へ戻ることにする。エレノーラ様はミリエラと共に私を見送ってくださった。
部屋へ戻ると早速身を清めてさっぱりしてから、テーブルについて今日の振り返りをする。
「さてと、データを出すか」
インベントリを開きデータの可視化を行う。一度収納したデータは原本がなくても好きなようにデータを出すことができるようになった。少し前に発見した機能だ。
階層の地図、大体の状況解説、悪魔の分布とステータス情報。詳細に出ている。現地での敵情報にも活用できた。すべてエレノーラ様がまとめた情報である。
「今日の第一階層、結構膨大なデータだな」
エレノーラ様も完全に網羅は難しいとおっしゃっていた。半分くらいは不明となっている。だが調査したところはかなり詳細にデータ化されている。
「他の階層のデータもざっと見ておくか」
アビスの全階層が網羅されているわけではなく、バッサリと無い階層群もある。
「ここ全部に悪魔が棲んでいるんだよな。すごい場所だよなぁ……」
ちょうどその時、扉をノックする音がする。クララがやって来たようだ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「面白いかも!」「続きが読みたい!」「陰ながら応援してるよ!」
ほんの少しでもそう思ってくれた方は、下にある【♡】【エールボタン】をポチッと押すのと、【お気に入り】をしていただけたら嬉しいです!
作者の励みになり、何よりの執筆のモチベーションになります!
0
あなたにおすすめの小説
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~
日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!
斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。
偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。
「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」
選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる