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257・違和感の原因
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オルキアに同行を許可してもらった私達は、一緒にアルティーナの元に行く事になった。
どうやらこの『結晶の大地』から離れた場所に彼女達の陣地があるらしく、しばらく歩く事になったけれど……こっちが私達が死んだ時用の陣地だと考えたら、そんなに離れていないのかもしれない。
「なんだか、さっきまで戦っていたって考えると、ちょっとドキドキしますね」
「ああ、わかる! 襲い掛かってくるかもーって思っちゃうよね!」
「こっちはドワーフの隊長とやりあったんだから尚更だよなぁ」
ジュールとリュネーが共感している中に、まさかのフォルスが割って入っていた。どうやら彼らは小隊と戦う事になってしまったようで、その辺りの苦労話で盛り上がっているようだ。
「ウォルカはいいの? 参加しなくて」
「僕はあんまりいいところ見せられなかったからね。今後の課題にはなったけど、今混ざったって笑い話にされるのがオチだよ」
疲れたような自虐的な笑みを浮かべてるけれど……よっぽど嫌な事でもあったのだろうか? あんまり追及するのは良くないだろう。
「私も……最後にはなんとかお役に立つ事が出来ましたけど、自分がまだまだだと思い知らされました。今度、雪風さんに鍛えてもらいましょうか……」
「偶にでしたら構いませんよ。その代わり、厳しく行きますが……それでよろしいですか?」
「……! でしたら、是非お願いします!!」
「だったら僕も一緒に訓練お願いできる? やっぱり他種族との近接戦をもうちょっと突き詰めたいっていうかさ」
「勿論ですよ」
各々今後の課題を見つけたところで、兵士達が一番集まっている場所――決闘に負けたアルティーナ達がいる場所に辿り着いた。
「……やっぱり、皆さん怯えていますね」
ここに来るまで触れなかったことだけれど、兵士達の大半が私の事を畏怖するような視線を向けていた。あそこまで派手にやってしまったんだし、当然の事だろう。
これからどうなるのか……もし再びあの力が自分達に向いたら……。
そんな風に思っているのが手に取るようにわかる。これは……後でしっかりと言ってあげる必要があるだろう。『今』じゃないのは、単純にアルティーナの件があるからだ。
決闘官達が四方を囲んで、その中央に彼女達はいた。縛られていたり、腕輪を付けていないところを見ると、一応大人しくしているようだ。
「アルティーナさん」
「……エールティアさ、ん」
座ったまま相当不満が溜まっているような目で、こちらを睨んでいるアルティーナ。どうやら、全く戦意喪失していないみたいだ。今にも掴みかかってきそうな雰囲気で、自嘲気味に笑っていた。
「ふふっ、良い様でしょう。どう? 満足しました? 私を這いつくばらせて……!」
「え、全然はいつ――」
「ジュールちゃんはちょっと黙っててね」
余計な事を言おうとしていたジュールの口を塞いで後ろに下がったリュネーから視線を外して、改めてアルティーナに向かい合う。相変わらずの負けん気だけれど……普通、もう少ししおらしくなるものじゃないんだろうか?
「アルティーナさ……いいえ、アルティーナ。これは貴女が招いた結果よ」
「私が……? 何を馬鹿な事を。貴女が私達を陥れるために仕組んだ癖に……!」
「え?」
「よくもこの私にこんな屈辱を……!!」
オルキアの方に視線を向けるけれど、彼女の方は肩を竦めるだけだ。
どうにも話が噛み合わない。そういえば決闘前から様子がおかしかったし、何か誤解があるのかもしれない。
ただ、このままだったらそれを解くことも難しそうだ。……仕方ない。
「オルキア、ちょっと魔導使うけど……いいわね?」
「ええ。攻撃系でなければ構いませんよ」
兵士や決闘官達の視線が集まってる中、何も言わずに魔導を使うのは流石に不味い。そう思った私は、オルキアに許可を取って、アルティーナに近づいた。
彼女は私に恨みでもあるのか、物凄い形相で睨みつけている。視線だけで人を殺せるなら、こんな感じになるのかも。
「【リラクション】」
心身の異常を清める魔導。何か異変が起こってるなら、これが最適だろうと思って発動したのだけれど……どうやら成功みたいだ。
一瞬だけ禍々しい雰囲気を纏ったアルティーナは、憑き物が落ちたかのように穏やかな表情になった。この調子だと、フラウスも同じような状況だろう。
「……エールティアさん? なんで貴女が? それにここは……」
戸惑うような声を出したアルティーナは、何か結論に至ったのか座ったまま後退りをしている。
「どう思ったのか何となくわかるから言うけど、今まで決闘していたのよ? 覚えてる?」
「けっ……と、う?」
全く身に覚えがないのか、初めて聞いたような反応を返してくる。どうやら、記憶が曖昧なようだ。
「……どういう事ですか?」
アルティーナの態度が理解できない周囲を代表して、ジュールが問いかけてきた。決闘官達の大半は我関せず、と言ったところのようだ。
まあ、国のいざこざは関係ないところなんだろう。
「簡単よ。戦いはまだ、終わってない」
ここに来ていない元凶が必ずいる。そのために、アルティーナには色々と聞かなければならないだろう。
どうやらこの『結晶の大地』から離れた場所に彼女達の陣地があるらしく、しばらく歩く事になったけれど……こっちが私達が死んだ時用の陣地だと考えたら、そんなに離れていないのかもしれない。
「なんだか、さっきまで戦っていたって考えると、ちょっとドキドキしますね」
「ああ、わかる! 襲い掛かってくるかもーって思っちゃうよね!」
「こっちはドワーフの隊長とやりあったんだから尚更だよなぁ」
ジュールとリュネーが共感している中に、まさかのフォルスが割って入っていた。どうやら彼らは小隊と戦う事になってしまったようで、その辺りの苦労話で盛り上がっているようだ。
「ウォルカはいいの? 参加しなくて」
「僕はあんまりいいところ見せられなかったからね。今後の課題にはなったけど、今混ざったって笑い話にされるのがオチだよ」
疲れたような自虐的な笑みを浮かべてるけれど……よっぽど嫌な事でもあったのだろうか? あんまり追及するのは良くないだろう。
「私も……最後にはなんとかお役に立つ事が出来ましたけど、自分がまだまだだと思い知らされました。今度、雪風さんに鍛えてもらいましょうか……」
「偶にでしたら構いませんよ。その代わり、厳しく行きますが……それでよろしいですか?」
「……! でしたら、是非お願いします!!」
「だったら僕も一緒に訓練お願いできる? やっぱり他種族との近接戦をもうちょっと突き詰めたいっていうかさ」
「勿論ですよ」
各々今後の課題を見つけたところで、兵士達が一番集まっている場所――決闘に負けたアルティーナ達がいる場所に辿り着いた。
「……やっぱり、皆さん怯えていますね」
ここに来るまで触れなかったことだけれど、兵士達の大半が私の事を畏怖するような視線を向けていた。あそこまで派手にやってしまったんだし、当然の事だろう。
これからどうなるのか……もし再びあの力が自分達に向いたら……。
そんな風に思っているのが手に取るようにわかる。これは……後でしっかりと言ってあげる必要があるだろう。『今』じゃないのは、単純にアルティーナの件があるからだ。
決闘官達が四方を囲んで、その中央に彼女達はいた。縛られていたり、腕輪を付けていないところを見ると、一応大人しくしているようだ。
「アルティーナさん」
「……エールティアさ、ん」
座ったまま相当不満が溜まっているような目で、こちらを睨んでいるアルティーナ。どうやら、全く戦意喪失していないみたいだ。今にも掴みかかってきそうな雰囲気で、自嘲気味に笑っていた。
「ふふっ、良い様でしょう。どう? 満足しました? 私を這いつくばらせて……!」
「え、全然はいつ――」
「ジュールちゃんはちょっと黙っててね」
余計な事を言おうとしていたジュールの口を塞いで後ろに下がったリュネーから視線を外して、改めてアルティーナに向かい合う。相変わらずの負けん気だけれど……普通、もう少ししおらしくなるものじゃないんだろうか?
「アルティーナさ……いいえ、アルティーナ。これは貴女が招いた結果よ」
「私が……? 何を馬鹿な事を。貴女が私達を陥れるために仕組んだ癖に……!」
「え?」
「よくもこの私にこんな屈辱を……!!」
オルキアの方に視線を向けるけれど、彼女の方は肩を竦めるだけだ。
どうにも話が噛み合わない。そういえば決闘前から様子がおかしかったし、何か誤解があるのかもしれない。
ただ、このままだったらそれを解くことも難しそうだ。……仕方ない。
「オルキア、ちょっと魔導使うけど……いいわね?」
「ええ。攻撃系でなければ構いませんよ」
兵士や決闘官達の視線が集まってる中、何も言わずに魔導を使うのは流石に不味い。そう思った私は、オルキアに許可を取って、アルティーナに近づいた。
彼女は私に恨みでもあるのか、物凄い形相で睨みつけている。視線だけで人を殺せるなら、こんな感じになるのかも。
「【リラクション】」
心身の異常を清める魔導。何か異変が起こってるなら、これが最適だろうと思って発動したのだけれど……どうやら成功みたいだ。
一瞬だけ禍々しい雰囲気を纏ったアルティーナは、憑き物が落ちたかのように穏やかな表情になった。この調子だと、フラウスも同じような状況だろう。
「……エールティアさん? なんで貴女が? それにここは……」
戸惑うような声を出したアルティーナは、何か結論に至ったのか座ったまま後退りをしている。
「どう思ったのか何となくわかるから言うけど、今まで決闘していたのよ? 覚えてる?」
「けっ……と、う?」
全く身に覚えがないのか、初めて聞いたような反応を返してくる。どうやら、記憶が曖昧なようだ。
「……どういう事ですか?」
アルティーナの態度が理解できない周囲を代表して、ジュールが問いかけてきた。決闘官達の大半は我関せず、と言ったところのようだ。
まあ、国のいざこざは関係ないところなんだろう。
「簡単よ。戦いはまだ、終わってない」
ここに来ていない元凶が必ずいる。そのために、アルティーナには色々と聞かなければならないだろう。
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