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430・薄っぺらい厳重
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レアディ、アロズの二人と離れた私達は、ヒューを連れて王城へと向かった。古から存在するグルムガンド城よりも小さいけれど、堅牢なイメージを抱かせる。流石に近代で建てられた城だけある。昔の建物には趣があるけれど、実際に使うには不便な面もあるのだろう。
……まあ、私は城に住みたいなんて思わないけれど。あんまり広い建物で生活しても落ち着かないし、故郷の館ぐらいがちょうどいい。あそこも十分広いしね。
ベアルが門番と幾つか言葉を交わした後、すんなりと城の中へと入る事が出来た。これが私達だけならそうはいかないだろう。マデロームの時と違い、王都にはそんなに長く滞在しなかったしね。
「それでは向かいましょう」
話しが終わったベアルの案内で私達は城の中を進んでいく。城内は妙にピリピリしていて、武装している兵士達の姿もよく見かける。
「随分と賑やかだね」
「それは当然だろう。あの拠点を一人で制圧する姫と敵の……複製体? とかいう物騒な男を中に招き入れるのだ。何が起こっても対処できるようにするだろう」
ファリスの呟きに胸を張るベアルだけど、それは私とヒューが危険だからこんな物々しい事になっていると言っているようなものだ。かなりの失言だけど、気にしないでおこう。
これを気にするのなら、そもそもあのリシュファスにある学園のルールとか色々突っ込むところも多いしね。
――聖黒族は何事にも動じず、強くあるべし。
これが根底にあるから逆境はむしろ望むところ。不利な状況こそ笑顔で迎え撃つべし――みたいな感じなのだ。強さこそ私達のステータスであり、弱者を庇護しなければならない。
だから聖黒族というだけで他の種族とは違った対応を取られる。数は少ないけれど、圧倒的に強い存在。それが私達であり、こと戦いに関連する決闘の場合は逃げ腰になるわけにはいかない。
そんな訳で、こんな対応をされてもある程度は納得しておかないといけない。
「ファリス、そんな嫌そうな顔しないで」
「だって……これじゃあまるで、ティアちゃんが危険だって思われてるみたいだもん」
頬を膨らませて拗ねるような顔をしているファリスの頭を優しく撫でる。それだけで機嫌が治るのだから現金なものだ。
「彼らは私達と違うのだから仕方がない事なの。ただまあ……この程度で止められると思われていたのなら心外だけど」
ベアルの方ににっこりと笑うと不気味なものを見たような顔をして視線を逸らした。
今からここにはティリアースの中でも最も強大な力を持つルティエル女王陛下がいらっしゃる。そこに私とファリス。そしてヒューと複製体も含めて力を持つ聖黒族がここに集うのだから、この程度の練度の兵士達だけでなんとかなると思っているのだったら随分甘い見通しをしている事になる。
「エールティア姫。そう威圧しないでください。周囲の兵士達も怯えておりますので……」
いや、別に威圧とかしてないのだけれど……。ただ少しだけ冷たい笑みを浮かべただけなのだけれど、ベアル達には十分に威圧したように映るらしい。
ファリスやヒューなんかは涼しい顔で平然としているのに、少し臆病になりすぎなのではないだろうか。
「普通に振舞っているつもりなんだけど……まあいいわ。会議する部屋に案内してちょうだい」
あまり色々言っても仕方がないし、さっさと部屋に連れて行ってもらう事にした。ピリピリした雰囲気に包まれて歩いて行くと、縦長の大きな部屋に案内された。兵士達がいなくなって、一気に空気が穏やかになっていった。
まだ誰もいない……という事は、私達が一番のりという事だろう。席順的には……私達が手前で奥で対面できるように設置されているところが女王陛下とガンドルグ王の席だろう。
いくら力が強くても、国と国の会談なのだから対等の関係でなければならない――そういう訳だ。
「まだ誰も来てないの?」
「私達は王を待つ側――先に来て準備しなければならない立場にあるからな」
ベアルの言う通り、この場では私達が下だ。……とは言っても何も準備する事はないし、ただ待つだけって感じだ。
「……なんだか少し緊張してきた」
ファリスはこういうのが初めてなのだろう。普段と違う空気にのまれているようだった。対してベアルの方はかなり落ち着いている。むしろ先程の方が焦っているようだった。
「ヒューは大丈夫?」
「ははっ、この程度の事で何も緊張する事なんてないな。むしろさっきのお前の方がよっぽど冷えた」
てっきり平気だと思っていたけれど、ヒューも他の兵士達と似たような気持ちだったようだ。ベアルがよくわかるとうんうん頷いている。そんな風に適度に会話をしていると……部屋の外が騒がしくなって扉が開いた。まずは護衛の魔人族の兵士が二人ほど中に入ってくる。それだけでこの場に来たのがガンドルグ王ではなく、ルティエル女王陛下だという事がわかった。ガンドルグ王だったら魔人族の兵士じゃなくて獣人族の兵士を連れているはずだからね。
大体一年くらい女王陛下に会っていないけれど……彼女の姿を見ると、まるで自国に帰ってきたかのような懐かしさを覚えたのだった。
……まあ、私は城に住みたいなんて思わないけれど。あんまり広い建物で生活しても落ち着かないし、故郷の館ぐらいがちょうどいい。あそこも十分広いしね。
ベアルが門番と幾つか言葉を交わした後、すんなりと城の中へと入る事が出来た。これが私達だけならそうはいかないだろう。マデロームの時と違い、王都にはそんなに長く滞在しなかったしね。
「それでは向かいましょう」
話しが終わったベアルの案内で私達は城の中を進んでいく。城内は妙にピリピリしていて、武装している兵士達の姿もよく見かける。
「随分と賑やかだね」
「それは当然だろう。あの拠点を一人で制圧する姫と敵の……複製体? とかいう物騒な男を中に招き入れるのだ。何が起こっても対処できるようにするだろう」
ファリスの呟きに胸を張るベアルだけど、それは私とヒューが危険だからこんな物々しい事になっていると言っているようなものだ。かなりの失言だけど、気にしないでおこう。
これを気にするのなら、そもそもあのリシュファスにある学園のルールとか色々突っ込むところも多いしね。
――聖黒族は何事にも動じず、強くあるべし。
これが根底にあるから逆境はむしろ望むところ。不利な状況こそ笑顔で迎え撃つべし――みたいな感じなのだ。強さこそ私達のステータスであり、弱者を庇護しなければならない。
だから聖黒族というだけで他の種族とは違った対応を取られる。数は少ないけれど、圧倒的に強い存在。それが私達であり、こと戦いに関連する決闘の場合は逃げ腰になるわけにはいかない。
そんな訳で、こんな対応をされてもある程度は納得しておかないといけない。
「ファリス、そんな嫌そうな顔しないで」
「だって……これじゃあまるで、ティアちゃんが危険だって思われてるみたいだもん」
頬を膨らませて拗ねるような顔をしているファリスの頭を優しく撫でる。それだけで機嫌が治るのだから現金なものだ。
「彼らは私達と違うのだから仕方がない事なの。ただまあ……この程度で止められると思われていたのなら心外だけど」
ベアルの方ににっこりと笑うと不気味なものを見たような顔をして視線を逸らした。
今からここにはティリアースの中でも最も強大な力を持つルティエル女王陛下がいらっしゃる。そこに私とファリス。そしてヒューと複製体も含めて力を持つ聖黒族がここに集うのだから、この程度の練度の兵士達だけでなんとかなると思っているのだったら随分甘い見通しをしている事になる。
「エールティア姫。そう威圧しないでください。周囲の兵士達も怯えておりますので……」
いや、別に威圧とかしてないのだけれど……。ただ少しだけ冷たい笑みを浮かべただけなのだけれど、ベアル達には十分に威圧したように映るらしい。
ファリスやヒューなんかは涼しい顔で平然としているのに、少し臆病になりすぎなのではないだろうか。
「普通に振舞っているつもりなんだけど……まあいいわ。会議する部屋に案内してちょうだい」
あまり色々言っても仕方がないし、さっさと部屋に連れて行ってもらう事にした。ピリピリした雰囲気に包まれて歩いて行くと、縦長の大きな部屋に案内された。兵士達がいなくなって、一気に空気が穏やかになっていった。
まだ誰もいない……という事は、私達が一番のりという事だろう。席順的には……私達が手前で奥で対面できるように設置されているところが女王陛下とガンドルグ王の席だろう。
いくら力が強くても、国と国の会談なのだから対等の関係でなければならない――そういう訳だ。
「まだ誰も来てないの?」
「私達は王を待つ側――先に来て準備しなければならない立場にあるからな」
ベアルの言う通り、この場では私達が下だ。……とは言っても何も準備する事はないし、ただ待つだけって感じだ。
「……なんだか少し緊張してきた」
ファリスはこういうのが初めてなのだろう。普段と違う空気にのまれているようだった。対してベアルの方はかなり落ち着いている。むしろ先程の方が焦っているようだった。
「ヒューは大丈夫?」
「ははっ、この程度の事で何も緊張する事なんてないな。むしろさっきのお前の方がよっぽど冷えた」
てっきり平気だと思っていたけれど、ヒューも他の兵士達と似たような気持ちだったようだ。ベアルがよくわかるとうんうん頷いている。そんな風に適度に会話をしていると……部屋の外が騒がしくなって扉が開いた。まずは護衛の魔人族の兵士が二人ほど中に入ってくる。それだけでこの場に来たのがガンドルグ王ではなく、ルティエル女王陛下だという事がわかった。ガンドルグ王だったら魔人族の兵士じゃなくて獣人族の兵士を連れているはずだからね。
大体一年くらい女王陛下に会っていないけれど……彼女の姿を見ると、まるで自国に帰ってきたかのような懐かしさを覚えたのだった。
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