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616・最後の花火
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嫌な予感がした私はその直感に従うように残った二体の内、ブレス攻撃を使用してきたリーダータイプのゴーレムを狙う事にした。
「【プロトン】――」
魔導を発動しようとしたと同時に襲いかかってくる尻尾。とっさのことだから一度中断して回避に専念する。ここで変な欲を出して無意味に攻撃を受ける方が問題だ。
これ以上私に攻撃させるものかと襲い掛かってくるあたり、何かの意志……のようなものを感じる。
他の竜のゴーレムが見掛け倒しだったとすると、このリーダー格は全く違う。明らかに意志を持った戦い方をしてくる。他の竜が攻撃を仕掛けている間に時間差で一撃入れようとしてくるし、先程のブレス攻撃にしてもそうだ。今までそんな事をしてくる気配すらなかったのにいきなりこれだ。
おまけに最後に残った一体はリーダーの側にいて庇うように私に攻撃を仕掛けてくる。五体いた時はこうはなかったはずなのだけど……。
「それでも、これくらいなら……! 【イグニアンクス】!」
巨大な竜をも包み込む様に炎の巨人が出現して、リーダー格の竜を守るように立ちふさがるゴーレムを抱きしめ飲み込む。
「ぐるああああぁぁぁぁ!!」
その瞬間、リーダーゴーレムが大きく吠えてブレス攻撃に移った。
「残念ね。【フレアライズ】!」
その可能性は十分に考慮した。だからこそもう一つ魔導を発動させる。地面からいきなり現れた巨大な炎はリーダーの竜を包み込み、その身体を蹂躙する。咆哮はそのまま悲鳴のように変わっていく。これで終わった。燃え続ける彼らの末路を眺めながらそう思ったけれど……。
「がああああああぁぁぁぁっっ!!」
大きな声を一つ上げた竜のゴーレムの全身が光輝きだす。
「え……?」
いきなりの事で思考が追い付いていなかったが、あの竜のゴーレムを中心に光っているようだ。近くで活動していたゴーレムが停止して、遠くの方にいた兵器も活動を停止させているようだ。
一体何が起きているのか? 不思議に思うけれど、嫌な予感はどんどんと胸の中に膨らんでくる。
「【プロトンサンダー】!」
最後の一体を速やかに排除すべく全力で発動させた一撃は、普通であれば間違いなくゴーレムを消し飛ばす程の威力を秘めている。それなのにあのゴーレムは命中しても完全に行動を停止させたとは言えない形になってしまった。
「嘘……!」
仕留めた。そう思っていても現実は非情であると教えてくれるようにリーダーのゴーレムはその場で更に力を溜めていた。むしろ私が【プロトンサンダー】を発動したせいか余計に光が強くなっているように見える。
大きく膨れ上がって今にも爆発しそうな光を見て間に合わないと判断した私は、可能な限り自身を守れる膜を構築する事にした。柔軟性に富んでおり衝撃を吸収しやすい形態。熱や刃物などの鋭いものを受け止め、そして破れないような……そんなイメージ。
「【バリア・アブソプション】!」
想像と構築。そして発動が終わったと同時にゴーレムの光が解き放たれて激しい爆発が引き起こされる。
耳にはつんざくような爆音。視界を埋めつくような光の奔流が溢れて何も見えなくなる。
「――――ッッ!」
走る痛みに衝撃。そして最近では何度も体験しているような身体が地面を転がる感覚。それを先程発動した魔導が和らげてくれる。この膜の外は激しい熱量に苛まれているだろう――そんな風にすら思うほど長い光が私の視界を覆い隠して一切何も見えない。
辺りで何が起こっているのか全く分からない状況がしばらく続いて……ようやく光が収まったと思ってゆっくりと目を開ける。最初は強烈な光に当てられすぎて中々景色が見えなかったけれど、次第に目が慣れていって……慣れたころには辺りは何も生えていないクレーターが広がっていた。あまりにもひどい光景に思わず呆然としてしまった。近くに多少の木々があった草原だったはずなのに、今では荒野みたいだ。
草木一本も残っていない。しかも見渡す限り。私もそれなりに傷を負ったけど、一応はまだ戦える状態だ。
「……どうなったの?」
一応私の周辺には兵士はいなかった。混血の黒竜人族が立ちふさがっていたくらいだ。それもこれで完全に吹き飛んでしまっただろう。いかんせん得られる情報が何もないからどれくらい時間が経ったのか、敵軍との戦いがどうなったかすらよくわからない。なにせ見渡す限り荒野みたいな状況なのだ。こんな事じゃ何もわかるわけがない。とりあえず動いてみると、かなり広い範囲ぼこぼこになっている事がわかる。
しばらく歩いて行くとようやく協会になっている場所を見つける事が出来た。その周囲もかなり悲惨で敵味方問わずあらゆる兵士達が地面に横たわっている。まるで全部が死んでいったみたいだ。
「これがあれ一体に?」
残った竜がたった一体で引き起こした割には広範囲過ぎる。どれだけ魔力を蓄えていたのか想像もつかない。ただ一つわかるのは、ここまでの被害を受けたら両軍ともに無事では済まない。それだけだった。
「【プロトン】――」
魔導を発動しようとしたと同時に襲いかかってくる尻尾。とっさのことだから一度中断して回避に専念する。ここで変な欲を出して無意味に攻撃を受ける方が問題だ。
これ以上私に攻撃させるものかと襲い掛かってくるあたり、何かの意志……のようなものを感じる。
他の竜のゴーレムが見掛け倒しだったとすると、このリーダー格は全く違う。明らかに意志を持った戦い方をしてくる。他の竜が攻撃を仕掛けている間に時間差で一撃入れようとしてくるし、先程のブレス攻撃にしてもそうだ。今までそんな事をしてくる気配すらなかったのにいきなりこれだ。
おまけに最後に残った一体はリーダーの側にいて庇うように私に攻撃を仕掛けてくる。五体いた時はこうはなかったはずなのだけど……。
「それでも、これくらいなら……! 【イグニアンクス】!」
巨大な竜をも包み込む様に炎の巨人が出現して、リーダー格の竜を守るように立ちふさがるゴーレムを抱きしめ飲み込む。
「ぐるああああぁぁぁぁ!!」
その瞬間、リーダーゴーレムが大きく吠えてブレス攻撃に移った。
「残念ね。【フレアライズ】!」
その可能性は十分に考慮した。だからこそもう一つ魔導を発動させる。地面からいきなり現れた巨大な炎はリーダーの竜を包み込み、その身体を蹂躙する。咆哮はそのまま悲鳴のように変わっていく。これで終わった。燃え続ける彼らの末路を眺めながらそう思ったけれど……。
「がああああああぁぁぁぁっっ!!」
大きな声を一つ上げた竜のゴーレムの全身が光輝きだす。
「え……?」
いきなりの事で思考が追い付いていなかったが、あの竜のゴーレムを中心に光っているようだ。近くで活動していたゴーレムが停止して、遠くの方にいた兵器も活動を停止させているようだ。
一体何が起きているのか? 不思議に思うけれど、嫌な予感はどんどんと胸の中に膨らんでくる。
「【プロトンサンダー】!」
最後の一体を速やかに排除すべく全力で発動させた一撃は、普通であれば間違いなくゴーレムを消し飛ばす程の威力を秘めている。それなのにあのゴーレムは命中しても完全に行動を停止させたとは言えない形になってしまった。
「嘘……!」
仕留めた。そう思っていても現実は非情であると教えてくれるようにリーダーのゴーレムはその場で更に力を溜めていた。むしろ私が【プロトンサンダー】を発動したせいか余計に光が強くなっているように見える。
大きく膨れ上がって今にも爆発しそうな光を見て間に合わないと判断した私は、可能な限り自身を守れる膜を構築する事にした。柔軟性に富んでおり衝撃を吸収しやすい形態。熱や刃物などの鋭いものを受け止め、そして破れないような……そんなイメージ。
「【バリア・アブソプション】!」
想像と構築。そして発動が終わったと同時にゴーレムの光が解き放たれて激しい爆発が引き起こされる。
耳にはつんざくような爆音。視界を埋めつくような光の奔流が溢れて何も見えなくなる。
「――――ッッ!」
走る痛みに衝撃。そして最近では何度も体験しているような身体が地面を転がる感覚。それを先程発動した魔導が和らげてくれる。この膜の外は激しい熱量に苛まれているだろう――そんな風にすら思うほど長い光が私の視界を覆い隠して一切何も見えない。
辺りで何が起こっているのか全く分からない状況がしばらく続いて……ようやく光が収まったと思ってゆっくりと目を開ける。最初は強烈な光に当てられすぎて中々景色が見えなかったけれど、次第に目が慣れていって……慣れたころには辺りは何も生えていないクレーターが広がっていた。あまりにもひどい光景に思わず呆然としてしまった。近くに多少の木々があった草原だったはずなのに、今では荒野みたいだ。
草木一本も残っていない。しかも見渡す限り。私もそれなりに傷を負ったけど、一応はまだ戦える状態だ。
「……どうなったの?」
一応私の周辺には兵士はいなかった。混血の黒竜人族が立ちふさがっていたくらいだ。それもこれで完全に吹き飛んでしまっただろう。いかんせん得られる情報が何もないからどれくらい時間が経ったのか、敵軍との戦いがどうなったかすらよくわからない。なにせ見渡す限り荒野みたいな状況なのだ。こんな事じゃ何もわかるわけがない。とりあえず動いてみると、かなり広い範囲ぼこぼこになっている事がわかる。
しばらく歩いて行くとようやく協会になっている場所を見つける事が出来た。その周囲もかなり悲惨で敵味方問わずあらゆる兵士達が地面に横たわっている。まるで全部が死んでいったみたいだ。
「これがあれ一体に?」
残った竜がたった一体で引き起こした割には広範囲過ぎる。どれだけ魔力を蓄えていたのか想像もつかない。ただ一つわかるのは、ここまでの被害を受けたら両軍ともに無事では済まない。それだけだった。
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