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置き手紙
しおりを挟む師匠の背中が見えなくなる。
俺が8歳なんてガキじゃなければな。
この恋を実らせようとも思えただろう。
「……俺のへたれ」
すでに家族は屋敷へもどった。
俺は寂しい庭で立ちつくす。
「大丈夫ですよ、ヘンドリック。魔術世界で生きていくなら、すぐにまた会えるはずです」
ラテナは大きな翼でぎゅーっと俺をつつむように抱きしめてくれた。
フワフワしていて秋の冷たい空気をやわらげてくれる。
「そうだな、再会の日を楽しみに。今はただこれでよかったと思おう」
「その息ですよ。……時にヘンドリック」
「ん? なんだ?」
「私もヘンリーって呼んでいいでしょうか?」
「全然構わないけど」
ラテナは嬉しそうに羽をぶわぁっとたてて「また、仲良しになってしまいましたね」とおでこを擦りつけてきた。
俺は「そうだな」と言い、人懐っこい相棒のふわふわの羽毛を撫でてあげた。
──しばらく後
部屋にもどってくる。
机のうえに何やら手紙が置いてあった。
「これは……まさか師匠からの?」
彼女の置き手紙のようだった。
俺は何か気になり、すぐに手にとって開いた。
手紙は教養あふれる綺麗なエーテル語で、なおかつ整った筆記体で書かれていた。
『ヘンリー へ
まずはじめに、炎の賢者への昇段おめでとうございます。アルカマジ王立魔術大学でもこの領域に到達した子を見たことないです。
それもヘンリーの若さでとなると史上初かもしれません。誇張じゃなく本気の話です。
これは本当に凄いことです。
ちゃんと理解できていますかヘンリー?
変なところで弱腰なので気がついていないかもしれませんが、間違いなくあなたは歴史に名を残す天才です。
ん……いえ、やっぱり、やめましょう。これでは嫌味な師匠になってしまいますね。
実際のところ、多くの魔術師が第四段階へ進めずにその一生を終えると言われています。
それを成し遂げたことは、素晴らしいですが天狗にならないでこれからも励んでくださいね。
言葉をかえて、努力の天才とでも褒めておきましょうか。ヘンリー、あなたはこれまでわたしが出会った人々の中でも飛び抜けて秀才です。神武以来の秀才です。
ぜひ胸を張って生きてください。
……いけませんね、褒める言葉を探そうとすると、どうにも大袈裟になってしまいます。
と、まあ、散々書いておいてなんですが、この手紙を書いている時はまだ《ライジングサン》を教えてはいないです。けど、きっと、ヘンリーなら成功させるんでしょうね。
前置きが長くなりましたね。
ここからが本題です。
ヘンリーの稀有な才能を見込んで、アルカマジ王立魔術大学への推薦書を同封しておきます。これは開けないように。魔術大学入学の年まで大事にとっておいてください。
ヘンリーの素晴らしい才能は魔術の発展を100年単位で進歩させるものかもわかりません。ぜひとも、さらなる高みを目指すために学徒の門をたたいてみてください。
師
フォッコより』
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※複数話投稿切り替えます
1話が短くなります
本日はあと2話更新します
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