奴隷身分ゆえ騎士団に殺された俺は、自分だけが発見した【炎氷魔法】で無双する 〜自分が受けた痛みは倍返しする〜

ファンタスティック小説家

文字の大きさ
18 / 49

分岐路

しおりを挟む
 俺はまぶたを閉じて師匠のあたたかな言葉をかみしめる。

 彼女の声は脳内再生余裕だ。

「ありがとうございます、師匠」

 俺は手紙を綺麗におりたたみ、封筒にしまって、同封されていた推薦書を手にとる。

 厳かな印の封蝋がされていた。
 これは師匠の身分を保証するものだろう。

 俺は彼女の手紙と、魔術大学の推薦書を引き出しの奥深くに大事にしまった。

 窓を開いて、口笛をふく。
 遠くまでよく響く音は練習の成果だ。
 とおくの空からラテナが帰ってきた。
 俺の口笛で彼女には、すぐ戻ってくるようにしてもらっているのだ。

「どうしましたか、ヘンドリック」

 ラテナは俺の腕にとまって、耳をつんつん甘噛みしてくる。最近の彼女は俺の耳がお気に入りらしい。

「アルカマジ王立魔術大学ってどこにあるか知っているか?」
「魔術王国の名門魔術学校ですか。そこならアルカマジの片田舎にあるといいますよ」
「田舎なのか。てっきり王都にあると思ったけど」
「王都と比較しても遜色ないくらい大きな学園都市が築かれているらしいですね。アルカマジには学校の数だけ都市があるんです」

 どうすれば入学できるのか聞くと、金出せば入れるとだけ答えが返ったきた。

「面接みたいなのはあるようですが」
「年齢制限はある? 俺は今からでも入れるか?」
「ヘンリーはすこし若すぎますかね。一番下が12歳くらいだった気がします」
 
 あと3年は入学できないか。
 師匠も推薦書を大事にしまっておけとか言ってたし、時間かかるとは思ったけど。

「オーケー、だいたいわかった」
「お役に立てて光栄です、ふくふく」

 俺はラテナを空へかえして部屋に戻る。

 将来は決まった。
 師匠の母校に入学して魔術世界で名をあげる。
 それで、いつか師匠に再会するんだ。

 1日1万のホットじゃ生温い。
 今日から1日2万回感謝のホット開始だ。
 

 ─────────────
         ───────────


 ──転生から2年が経過した

 師匠と別れて半年以上がたった。
 俺は9歳になり身体も大きくなっていた。
 それにともないウィリアムの1日における剣術指南の時間がどんどん増えてきている。
 
 今ではパリィ、受け流し、防御、カウンターに重きを置いた銀狼流剣術も結構身についてきた。
 
 まだ一段だが、それでも以前の俺とは比べ物にならないくらいにも強くなれている。

 ──ある日の稽古
 
「流石はヘンリーだ、ほんとうに飲み込みがはやいぞ。12歳までに二段まで獲得できれば、ソーディア騎士学校でも大注目間違いなしだ」
「ええ、そうですね。ソーディア騎士学校……学校……? ぇ、父さん今なんて?」

 俺は汗をぬぐいながら聞きかえすと、ウィリアムは目をまるくした。

「話してなかったか? 騎士になるためには騎士学校に行かないといけない。騎士の跡取りでもそれは変わらなくてな。俺がどんなに国にお願いしても、ここはどうにもならないんだ」
「あー……えっと……」

 話を聞くとウィリアムは、あたかも俺が騎士になることが当然のように言ってきた。

 12歳になってからソーディア領最大の街にあるソーディア騎士学校にて、知識と経験をつみ卒業して晴れて一介の騎士になると。

「浮雲家は父さんで一代目だからな、ここから歴史を積みあげていくんだぞ。はは、いっしょに頑張ろうな、ヘンリー」

 歴史を重ねる魔術師の家系があるように、武勲を積みあげる騎士の家系もある。

 俺はつまり″こっち側″なわけだ。

 だが、俺は騎士になりたくない。
 騎士学校ではなく、魔術学校にいきたい。
 師匠がそう期待してくれたように。

「……そろそろ頃合いもいいだろ」

 師匠が旅立ちはやいもので半年。
 俺は打倒団長のために、ずっと上級騎士というひとつの実力ラインを観察してきた。

 そろそろ、踏み込んだデータを恐れずに取りにいくべきだ。

「ん? どうしたんだ、ヘンリー」

 俺はギラついた目で、顔の汗をぬぐったタオルを、芝生のうえに叩きつけた。
 ウィリアムは目を見開き、ポカンと口をあけた。

 タオルを叩きつける行為は騎士王国において決闘の申し込みを意味する。
 古来では左手の手袋をたたきつけるのが、慣習だったが、今ではタオルでも同じ意味をもつ。

「……」

 ウィリアムは訳がわからず困惑しているようだった。

 それもそのはず。
 タオルの叩きつけ方次第では「手合わせお願いします」から「どちらかが死ぬまでやろう」と、決闘の本気度を幅広くとれるのだ。

 ちなみに俺はめっちゃ強く叩きつけた。

「…………拾え」
「拾いません」

 父親の冷たい声に俺は断固としてかえす。
 
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神スキル【絶対育成】で追放令嬢を餌付けしたら国ができた

黒崎隼人
ファンタジー
過労死した植物研究者が転生したのは、貧しい開拓村の少年アランだった。彼に与えられたのは、あらゆる植物を意のままに操る神スキル【絶対育成】だった。 そんな彼の元に、ある日、王都から追放されてきた「悪役令嬢」セラフィーナがやってくる。 「私があなたの知識となり、盾となりましょう。その代わり、この村を豊かにする力を貸してください」 前世の知識とチートスキルを持つ少年と、気高く理知的な元公爵令嬢。 二人が手を取り合った時、飢えた辺境の村は、やがて世界が羨む豊かで平和な楽園へと姿を変えていく。 辺境から始まる、農業革命ファンタジー&国家創成譚が、ここに開幕する。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

処理中です...