奴隷身分ゆえ騎士団に殺された俺は、自分だけが発見した【炎氷魔法】で無双する 〜自分が受けた痛みは倍返しする〜

ファンタスティック小説家

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上級騎士 対 炎の賢者 前編

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「それが答えか。……いい覚悟だ」

 ウィリアムは薄く笑い──顔を引き締める。
 俺はこの半年で研究を重ねた父親の動きを予測する。

 まずは初動。
 ウィリアムは重心を前に置いた踏み込みを斬りこみを好む。
 特に俺のような格下相手だと、わりとムキになるところがあるので、踏み込みは深くなりやすい。
 利き手は右、左足がどれほど前へ来るかで、彼がどれくらい″ムキ″になってるか測ろうか。

「スゥ、はぁ…」

 呼吸を整えて、睨みあう。

 俺からは動かない。
 彼に勝てるとしたら、銀狼流剣術での受け流し、パリィ──ここら辺で優位性を確立してからの攻撃しかありえない。

「息巻いておいて消極的だな。失望したぞ」

 ウィリアムは肩をすくめて、軽薄に笑う。

 ただの挑発だ。
 乗ってはいけない。

「そうか、わかった──」
 
 次の瞬間、彼は姿勢を低くして、一息に踏み込んできた。

「ッ、はや──」
「ツァ!」

 踏み込みを測っている余裕などなかった。
 俺は振り抜かれる″殺す気の一太刀″に、剣をたててガードを間に合わせることしか出来ない。

 ウィリアムの腕力いっぱいで振り抜かれた剣で、俺は数メートルほど転がされた。

 芝生をはらって、すぐにたちあがる。

 ウィリアムは目の前にせまっていた。
 剣を拾いあげると同時に、そのまま下方から斬りあげをつかって牽制する。

 彼は俺の上昇する刃を、直剣の根本らへんでコンパクトにパリィした。

 俺の体勢がさらに崩される。
 
「ツァ!」

 ウィリアムの前蹴り。
 長い脚が俺の腹部に刺さった。
 強烈な衝撃に俺の視界が暗くなる。
 すぐ後、地面を転がる乱暴な反転と、屋敷の壁に激突する痛みに目を覚ました。

 俺の左の視界が真っ赤だった。
 まぶたを切ったらしい。

「ぉ、ぅ、ぐぅ……! くそ…っ」

 ダメだ、強すぎる。
 剣術もフィジカルもウィリアムは俺の遥に先の領域にいる。

「ヘンリー、お前ってこんな弱かったのか」
「っ」
「はは、これならそもそも浮雲の家督をやるって話も考え直さないといけなかったか」

 ぐぬぬ、この野郎、舐めやがって。

「俺が、どんな、思いで…毎日、毎日、死ぬ気で鍛えてきたと……ッ」

 負けられない。
 俺はウィリアムをぶっ倒して、その先にいるこのクソ野郎どもぶち殺さないといけないんだ。

 こんな場所でお高い芝生舐めてる場合じゃねえんだ。

「ぅぐ、ァアア!」

 圧倒的な力量差をまえに震える足を鼓舞して、なんとかたちあがる。

 ウィリアムの攻撃は重すぎる。
 受けてはならない。
 
「立たなきゃいいものを」

 ウィリアムは冷たく吐き捨てて、こちらへ走ってくる。

 一瞬で間合いを詰められ、彼は助走をつけた横薙ぎの一撃をいれてきた。

 俺は気がつく。
 フェイントだ。
 俺の親父はフェイントがさして上手くないのに、この手の技が好きだった。

 『百芸』なんて二つ名を背負ったゆえの、カッコつけるための付け焼き刃だ。

「本命は突き……!」
「っ」

 ウィリアムは素早く、剣の軌道を修正、腕を引きしぼり、槍のように勢いよく剣を突き出してきた。

 俺は全身をふって避ける。
 剣が屋敷の壁に深々とささった。
 
 初めて訪れたその隙を狙い、俺は叫びながら剣を思いきり父の腹にはしらせた。

 これはガード出来ないはずだ。

「甘いッ」
「ぇ」

 驚くことが起きた。
 ウィリアムのやつ間近にせまった俺の剣を、ヒザとヒジで上下から挟みこむことで受け止めていたのだ。

 俺の剣がピクリとも動かない。

「悪いな、ヘンリー。俺には″拳術″の心得もある」
「そんな、バカなこと──」

 見たことのないウィリアムの技術。
 そうだこの男は『百芸』と呼ばれるほどに才能豊かで、奇特な戦い方を好むんだった。

 拳術は付け焼き刃ではないと──?
 
「ツァア!」

 ウィリアムは上下からの力を込めて、俺の剣をへし折ってしまった。

 俺は剣身が半分なくなり、軽くなった直剣を手にフラフラとあとずさる。

 この男、本気で強い。
 これが上級騎士の強さ?

「武器破壊までするつもりはなかったんだが……まあ、こうなっちゃ仕方ないよな」

 ウィリアムは軽薄に微笑む。
 壁に刺さった剣をぬき「まだやるかい」と、剣で肩をトントンするガラの悪さを見せてくる。

 はは、面白い。
 
 俺は血で塗りつぶされ、半分になった視界でウィリアムの姿をとらえる。
 折れた剣を捨てて、腰のホルダーにおさめられた枯れ枝のような杖に手を伸ばした。

 






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