奴隷身分ゆえ騎士団に殺された俺は、自分だけが発見した【炎氷魔法】で無双する 〜自分が受けた痛みは倍返しする〜

ファンタスティック小説家

文字の大きさ
20 / 49

上級騎士 対 炎の賢者 前編

しおりを挟む
 
「それが答えか。……いい覚悟だ」

 ウィリアムは薄く笑い──顔を引き締める。
 俺はこの半年で研究を重ねた父親の動きを予測する。

 まずは初動。
 ウィリアムは重心を前に置いた踏み込みを斬りこみを好む。
 特に俺のような格下相手だと、わりとムキになるところがあるので、踏み込みは深くなりやすい。
 利き手は右、左足がどれほど前へ来るかで、彼がどれくらい″ムキ″になってるか測ろうか。

「スゥ、はぁ…」

 呼吸を整えて、睨みあう。

 俺からは動かない。
 彼に勝てるとしたら、銀狼流剣術での受け流し、パリィ──ここら辺で優位性を確立してからの攻撃しかありえない。

「息巻いておいて消極的だな。失望したぞ」

 ウィリアムは肩をすくめて、軽薄に笑う。

 ただの挑発だ。
 乗ってはいけない。

「そうか、わかった──」
 
 次の瞬間、彼は姿勢を低くして、一息に踏み込んできた。

「ッ、はや──」
「ツァ!」

 踏み込みを測っている余裕などなかった。
 俺は振り抜かれる″殺す気の一太刀″に、剣をたててガードを間に合わせることしか出来ない。

 ウィリアムの腕力いっぱいで振り抜かれた剣で、俺は数メートルほど転がされた。

 芝生をはらって、すぐにたちあがる。

 ウィリアムは目の前にせまっていた。
 剣を拾いあげると同時に、そのまま下方から斬りあげをつかって牽制する。

 彼は俺の上昇する刃を、直剣の根本らへんでコンパクトにパリィした。

 俺の体勢がさらに崩される。
 
「ツァ!」

 ウィリアムの前蹴り。
 長い脚が俺の腹部に刺さった。
 強烈な衝撃に俺の視界が暗くなる。
 すぐ後、地面を転がる乱暴な反転と、屋敷の壁に激突する痛みに目を覚ました。

 俺の左の視界が真っ赤だった。
 まぶたを切ったらしい。

「ぉ、ぅ、ぐぅ……! くそ…っ」

 ダメだ、強すぎる。
 剣術もフィジカルもウィリアムは俺の遥に先の領域にいる。

「ヘンリー、お前ってこんな弱かったのか」
「っ」
「はは、これならそもそも浮雲の家督をやるって話も考え直さないといけなかったか」

 ぐぬぬ、この野郎、舐めやがって。

「俺が、どんな、思いで…毎日、毎日、死ぬ気で鍛えてきたと……ッ」

 負けられない。
 俺はウィリアムをぶっ倒して、その先にいるこのクソ野郎どもぶち殺さないといけないんだ。

 こんな場所でお高い芝生舐めてる場合じゃねえんだ。

「ぅぐ、ァアア!」

 圧倒的な力量差をまえに震える足を鼓舞して、なんとかたちあがる。

 ウィリアムの攻撃は重すぎる。
 受けてはならない。
 
「立たなきゃいいものを」

 ウィリアムは冷たく吐き捨てて、こちらへ走ってくる。

 一瞬で間合いを詰められ、彼は助走をつけた横薙ぎの一撃をいれてきた。

 俺は気がつく。
 フェイントだ。
 俺の親父はフェイントがさして上手くないのに、この手の技が好きだった。

 『百芸』なんて二つ名を背負ったゆえの、カッコつけるための付け焼き刃だ。

「本命は突き……!」
「っ」

 ウィリアムは素早く、剣の軌道を修正、腕を引きしぼり、槍のように勢いよく剣を突き出してきた。

 俺は全身をふって避ける。
 剣が屋敷の壁に深々とささった。
 
 初めて訪れたその隙を狙い、俺は叫びながら剣を思いきり父の腹にはしらせた。

 これはガード出来ないはずだ。

「甘いッ」
「ぇ」

 驚くことが起きた。
 ウィリアムのやつ間近にせまった俺の剣を、ヒザとヒジで上下から挟みこむことで受け止めていたのだ。

 俺の剣がピクリとも動かない。

「悪いな、ヘンリー。俺には″拳術″の心得もある」
「そんな、バカなこと──」

 見たことのないウィリアムの技術。
 そうだこの男は『百芸』と呼ばれるほどに才能豊かで、奇特な戦い方を好むんだった。

 拳術は付け焼き刃ではないと──?
 
「ツァア!」

 ウィリアムは上下からの力を込めて、俺の剣をへし折ってしまった。

 俺は剣身が半分なくなり、軽くなった直剣を手にフラフラとあとずさる。

 この男、本気で強い。
 これが上級騎士の強さ?

「武器破壊までするつもりはなかったんだが……まあ、こうなっちゃ仕方ないよな」

 ウィリアムは軽薄に微笑む。
 壁に刺さった剣をぬき「まだやるかい」と、剣で肩をトントンするガラの悪さを見せてくる。

 はは、面白い。
 
 俺は血で塗りつぶされ、半分になった視界でウィリアムの姿をとらえる。
 折れた剣を捨てて、腰のホルダーにおさめられた枯れ枝のような杖に手を伸ばした。

 






しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

治癒魔法で恋人の傷を治したら、「化け物」と呼ばれ故郷から追放されてしまいました

山科ひさき
恋愛
ある日治癒魔法が使えるようになったジョアンは、化け物呼ばわりされて石を投げられ、町から追い出されてしまう。彼女はただ、いまにも息絶えそうな恋人を助けたかっただけなのに。 生きる希望を失った彼女は、恋人との思い出の場所で人生の終わりを迎えようと決める。

処理中です...