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おおきな決断
しおりを挟む決闘から1日が経った。
「リクにぃに、怪我大丈夫?」
「平気だよ、レナ。母さんの回復魔術のおかげで大事にはいたってないよ」
カリーナの回復魔術はとても優秀なので、肉体の欠損さえしなければ、多くの怪我を癒すことができる。
俺やウィリアムが躊躇なく殺人級の剣技や魔術をつかったのは″本気であった″こともあるが、殺しさえしなければ、カリーナが何とかしてくれるという信頼があったからだ。
ただまあ、ウィリアムはカリーナに死ぬほど怒られていたが。
彼の方が重傷だったが……。
まあ、いいだろう。愛する息子にあれだけしたんだ。そこは父親として甘んじて受けいれてもらうことにしよう。
「ふくふく」
「よしよし、ラテナも安心していいからな」
「ふくふく♪」
「んじゃ、ちょっと行ってくるから。レナ、ラテナをよろしくな」
「うん、わかった!」
セレーナにラテナを預けて、俺は父親の寝室へとむかう。
──コンコン
扉をノックして「失礼します」と一言断ってから入室した。
部屋のなかでは微妙に火傷跡の残っているウィリアムが、上着を着替えているところだった。
身体中に包帯が巻かれており、さすがの回復魔術でも、昨日の強烈な怪我からはすぐに立ち直れていないことがわかった。
「ヘンリーか。怪我の方は平気か?」
「それはこっちのセリフですよ、父さん。それで……そっちこそ怪我の具合はどうですか。僕がやっておいてなんですけど」
「本当にな」
ウィリアムは快活に笑い「まだ痛むが問題ないさ」と肩をまわして見せた。
「まあ、座れ」
「はい」
俺は椅子に腰掛ける。
ウィリアムはベッドにぼふんっと腰を下ろすと「いたた…」と体勢を安定させる。
「まあ、なんだ。昨日の決闘の件だが、あの結果を認めることにした」
「ありがとうございます」
ウィリアムはポリポリとそり残したヒゲをかきながら、少し不満そうに言った。
負けず嫌いの性格がよく出ている。
その訳はわかる。
不完全燃焼というやつだろう。
俺の本気を引き出すために挑発したり。
賢者の魔術を体験するために攻めれる場面で攻めなかったり。
ウィリアムは、俺から見てもいろいろと落ち度のある戦いをしていた。
きっと最初から本気で来られたら、いっしゅんで勝負はついていたはずだ。
今回勝てたのは運がよかったからだ。
最後の瞬間、あの一瞬は俺が上回ったかもしれないが……総合的に見れば、俺とウィリアムの戦力には歴然とした差がある。
「ヘンリー、お前は俺との決闘で勝った。これは『勝者決定権』が適用されることを意味する」
「勝者決定権、ですか」
勝者決定権──アライアンス建国時からあるいにしえの法。チカラを示した者に保証された意思決定権のことだ。
騎士王国において、力ある者が意思を通せるという考え方はここから来ている。
俺は知らなかったのだが、ウィリアムもこの勝者決定権を行使して、余計なもめごとをなしに本家クラウディアから独立したらしい。
その際にウィリアム・クラウディアからウィリアム浮雲として再スタートしたのだ。
「ヘンリー、お前の意志を今一度教えてくれ」
「浮雲家の家督相続を辞退します」
そして、もうひとつ。
俺が団長や騎士──つまり、アライアンス騎士王国という『国』を敵に回すうえで必要なこと。
「浮雲の姓を捨てます」
俺ははっきりといいはなった。
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