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正義を為すために
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浮雲家とのつながりを断つ。
ウィリアム、カリーナ、セレーナ。
彼らは大切な家族だ。
だからこそ捨てる。
もし俺が団長に負けることがあった時の、いわゆる保険である。これは必須だ。
大切な浮雲家を、俺という犯罪者を生んだ責任から守らなくてはならない。
ウィリアムはとても優秀な騎士かつ、国家や不死鳥騎士団への献身で、アイガスターに気に入られている。
ゆえに糾弾される可能性は低いだろう。
ただ、何があるかわからない。
ウィリアムには抗弁する正当な理由を残しておいてやった方がいい。
″その犯罪者と我が家の縁は切れています″
とな。
「ヘンリー、少し考えてからでもいいんじゃないか? お前は9歳とは思えないくらい賢く、強く、聡明だ。文字も俺より綺麗にかくし、難しい単語も知ってる。でも、まだお前は子供だろう、そんなに焦らなくたっていいじゃないか」
ウィリアムは心配するように言ってきた。
「家督はセレーナが継げばいい。だからってお前が家の名を捨てる必要はないんだぞ?」
ウィリアム、それは出来ない。
俺は近いうちに重大な犯罪をおかす。
なればこそ、一刻も早く浮雲家の枠組みから俺は外れたほうがいい。
「ごめんなさい、父さん。でも、これは考えて決めたことなんです。無礼極まりない申し出だとはわかっていますが、なにとぞお許しください」
俺の言葉にウィリアムは「そうか……」と残念そうに言った。
「わかった。王都に鳥をとばそう。騎士貴族浮雲家からお前の名を……」
ウィリアムはそう言い、言葉をつまらせた。
「……ヘンリー、理由を聞かせてくれ。お前がアルカマジ王立魔術学院に行って、魔道を歩みたい、その気持ちはわかる。でも、それは浮雲の名を捨てなくちゃいけないことなのか?」
ウィリアムは半分瞳をうるませながら、心の底から懇願してくる。
頼むからやめろ、と。
彼は息子である俺を、心の底から愛してくれているのだ。
決闘で負けたとて「はい、そうですか」と簡単には認められないし、決められない。
俺はまぶたを閉じて今一度思案する。
しかし、導き出された答えは同じだった。
「父さん、俺にはやらなければならない事があるんです」
「それは、それは、なんなんだ……9歳のお前にそんな大事なことがあるのか……?」
「………………″正義を為す″ためです」
言葉にしてみて、自分のなかにある気持ちが復讐だけではないと気がついた。
団長だけじゃない。
この世界のいたるところで、理不尽にあえぎ、弱者はいつだって虐げられる。
俺は正義を為したいんだ。
ムチをもった奴隷商に目をつけられないよう、毎日をビクビクおびえて暮らしたり、騎士団のなかで波風立たずに″自分だけ我慢″しなければいけない──そんな苦しみに耐えている人間に教えてやりたい。
俺が言いたい「正義はある」と。
「ヘンリー……」
「僕は浮雲家にいないほうがいい。きっとこれから先、たくさん迷惑をかけてしまいますから」
俺は言葉に力をこめていった。
俺の思い、覚悟すべてを乗せた。
ウィリアムは「わかった」と涙を隠すように顔に手をあてて、しばらく沈黙した。
「明日、王都に鳥をとばす……」
「ありがとうございます」
「近日中に荷物をまとめておけ」
「はい」
「……もう行っていいぞ」
俺は頭をさげて「失礼しました」とウィリアムの部屋をあとにした。
ウィリアム、カリーナ、セレーナ。
彼らは大切な家族だ。
だからこそ捨てる。
もし俺が団長に負けることがあった時の、いわゆる保険である。これは必須だ。
大切な浮雲家を、俺という犯罪者を生んだ責任から守らなくてはならない。
ウィリアムはとても優秀な騎士かつ、国家や不死鳥騎士団への献身で、アイガスターに気に入られている。
ゆえに糾弾される可能性は低いだろう。
ただ、何があるかわからない。
ウィリアムには抗弁する正当な理由を残しておいてやった方がいい。
″その犯罪者と我が家の縁は切れています″
とな。
「ヘンリー、少し考えてからでもいいんじゃないか? お前は9歳とは思えないくらい賢く、強く、聡明だ。文字も俺より綺麗にかくし、難しい単語も知ってる。でも、まだお前は子供だろう、そんなに焦らなくたっていいじゃないか」
ウィリアムは心配するように言ってきた。
「家督はセレーナが継げばいい。だからってお前が家の名を捨てる必要はないんだぞ?」
ウィリアム、それは出来ない。
俺は近いうちに重大な犯罪をおかす。
なればこそ、一刻も早く浮雲家の枠組みから俺は外れたほうがいい。
「ごめんなさい、父さん。でも、これは考えて決めたことなんです。無礼極まりない申し出だとはわかっていますが、なにとぞお許しください」
俺の言葉にウィリアムは「そうか……」と残念そうに言った。
「わかった。王都に鳥をとばそう。騎士貴族浮雲家からお前の名を……」
ウィリアムはそう言い、言葉をつまらせた。
「……ヘンリー、理由を聞かせてくれ。お前がアルカマジ王立魔術学院に行って、魔道を歩みたい、その気持ちはわかる。でも、それは浮雲の名を捨てなくちゃいけないことなのか?」
ウィリアムは半分瞳をうるませながら、心の底から懇願してくる。
頼むからやめろ、と。
彼は息子である俺を、心の底から愛してくれているのだ。
決闘で負けたとて「はい、そうですか」と簡単には認められないし、決められない。
俺はまぶたを閉じて今一度思案する。
しかし、導き出された答えは同じだった。
「父さん、俺にはやらなければならない事があるんです」
「それは、それは、なんなんだ……9歳のお前にそんな大事なことがあるのか……?」
「………………″正義を為す″ためです」
言葉にしてみて、自分のなかにある気持ちが復讐だけではないと気がついた。
団長だけじゃない。
この世界のいたるところで、理不尽にあえぎ、弱者はいつだって虐げられる。
俺は正義を為したいんだ。
ムチをもった奴隷商に目をつけられないよう、毎日をビクビクおびえて暮らしたり、騎士団のなかで波風立たずに″自分だけ我慢″しなければいけない──そんな苦しみに耐えている人間に教えてやりたい。
俺が言いたい「正義はある」と。
「ヘンリー……」
「僕は浮雲家にいないほうがいい。きっとこれから先、たくさん迷惑をかけてしまいますから」
俺は言葉に力をこめていった。
俺の思い、覚悟すべてを乗せた。
ウィリアムは「わかった」と涙を隠すように顔に手をあてて、しばらく沈黙した。
「明日、王都に鳥をとばす……」
「ありがとうございます」
「近日中に荷物をまとめておけ」
「はい」
「……もう行っていいぞ」
俺は頭をさげて「失礼しました」とウィリアムの部屋をあとにした。
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