奴隷身分ゆえ騎士団に殺された俺は、自分だけが発見した【炎氷魔法】で無双する 〜自分が受けた痛みは倍返しする〜

ファンタスティック小説家

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ただのヘンドリック

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 ──翌日

 俺とセレーナ、ウィリアムは乱れた庭園を直していた。

「えー、なんでリクにぃに家出て行っちゃうの?」
「いろいろとやる事があるんだよ、レナ」
「むう、そんなのつまんないよー! リクにぃにが出て行くなら、レナも出て行くもん!」

 花壇の手入れをしながら、セレーナはスコップをふりまわし、ウィリアムへむけて声を荒げた。

「ダメだ、レナには浮雲家の子として家を継いでもらわないとな」
「なんでー! リクにぃには外行くのに!」
「ヘンリーは俺に勝ったからな。やりたいようにする権利を持ってる。でも、レナお前は違うぞ」
「むぅ!」

 レナは怒ったようにスコップで花壇を攻撃しはじめた。せっかく整えたのに。

「落ち着けよ、レナ。出て行くって言ってもしばらくはブワロ村にいるから。この屋敷に住まなくなるだけだって」
「ほんとにー? 家に帰ってくるの?」

 俺はウィリアムのほうを見る。
 彼はうなずいてくれた。

「いいらしい。屋敷の人間じゃないだけだ」
「リクにぃがいるならやっぱり家にいよーっと」
「それがいいぞ。母さんや父さんと会えなくなるのは寂しいだろ」
「うーん、確かに……!」

 レナはハッとした顔で言った。

 そこ気がついてなかったんかい。

「よし、まあ、花壇はこんなもんだろ」

 花壇の整理をおえて、俺たち3人は本日の後片付けを終えた。明日は俺が焼き焦がしたぶんの芝の植えかえ作業だろうか。

「レナ、それじゃさっそく稽古をはじめるぞ」
「稽古ー? 今日はピアノと絵画の稽古はないよ、パパ」
「いいや、剣の稽古な」

 この日より、セレーナの剣術訓練がはじまった。騎士家系を継ぐためには、騎士学校に行かなければならない。
 セレーナはこれからは、嫁に出すために芸達者になるのではなく、本人が剣を取れる方向へシフトして頑張って行くんだろう。

 ──5日後

 俺は剣術訓練から逃げるセレーナをとっ捕まえるという、″浮雲″としての最後の任務をおえて庭へやってきた。

 庭には大きなトランクがある。
 俺が荷造りしてまとめたものだ。

「ヘンリー……私はまだわからないわ」
「母さん、ごめんなさい。失望させちゃって」

 涙目のカリーナがしゃがみ、俺と目線を同じにして温かな抱擁をしてくれる。

 俺も抱きしめかえす。

「愛してます、母さん」
「ヘンリー……っ、どうして……」
「行かなくちゃいけないんです。僕の正義を貫くために」

 カリーナは全然納得してないような顔だった。
 ウィリアムは彼女を優しく抱きしめる。
 
「じゃあね、リクにぃ! また明日会おうね!」

 セレーナはあんまり状況がわかっていないのか、あっけらかんとしていた。

 この方がやりやすい。
 俺だって家族から親戚になったくらいの感覚なんだしな。

「ヘンリー」

 ウィリアムは妻を抱きしめ頭を撫でながら、最後の言葉をつげる。

「王都からの通達だ。今日をもってヘンドリック浮雲を、騎士貴族・浮雲の系譜からはずす。……お前はもう貴族ではない」
「はい」

 淡々と答える。
 
「ふくふくー!」

 ラテナが飛んできて、俺の肩にとまった。
 ウィリアムは思い入れがあるように、ラテナのことを見つめて「頼んだぞ」と言った。

「ふくふく」
「それじゃ……行きますね」

 俺はかるく頭をさげて、深呼吸をする。
 そして、トランクを引いて浮雲家の門前をあとにした。

「ヘンリー!」
「はい? なんですか、父さん」
「お前は貴族じゃないかもしれないが、俺たちの家族だ。……そのことを忘れるなよ」

 胸の奥がじんわりと温かくなった。
 師匠が我が家に感じたぬくもりとは、こういうものだったんだろうか。

 ようやくわかった気がする。

「ヘンリー、私たちは家族よ」
「母さん……はい、僕はあなたたちの息子です。この事実は変わりません」

 俺はそういい、深々と頭をさげた。

 今までお世話になりました。

 今度こそ背を向けて歩きだす。
 すこしして振り返ると、小高い丘のうえにある浮雲家の門は遠く離れていた。

「新しいスタートですね、ヘンリー」
「そうだな、ラテナ。……ここからだ」

 俺は今日、ただのヘンドリックになった。
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