26 / 49
オオカミ少年 前編
しおりを挟む浮雲屋敷をあとにした俺は、ブワロ村を迷いない足取りで横断していた。
ただいま、ウィリアムが用意してくれた俺を住まわせてくれるという心優しい人の家へむかっている途中だ。
そこを仮拠点として、俺は王都出発にむけて準備を始めようと思っている。
「今日も平和だな、この村は」
「ふくふく」
のどかなブワロ村の畑をぶらぶら歩きながら、道行く村民たちに挨拶をする。
「ヘンドリック様、すこしよろしいですか」
「どうしましたか」
すれ違いざまに不安そうな顔をした村民の話を聞くと、なにやら子どもたちの間でいざこざがあるらしいと教えてもらった。
認知してるならお前がとめてやれよ、とも思わなくもなかったが……まあ、仕方ない。
もう貴族ではないが、それは村民たちの預かり知らぬところ。
「ヘンリー、これは私たちの使命の予感がしますね」
「そうだな、今の俺はさながら家を失い、アテもなくさまよう流浪人だ。新しい家に行く前に、人助けのひとつでもしてこうか」
トランク片手に俺は畑道を駆けだした。
──しばらく後
森の近くの廃屋へやってきた。
今は使われていない納屋が何軒かある。
ここら辺で村の子どもが遊んでいると聞いたが、あっているだろうか。
「こっちくるな、バケモノ!」
聞き逃せない罵声が聞こえてきた。
俺は駆け足で現場へむかう事とする。
「ケモノ耳! 森へかえれー!」
「けむくじゃらのモンスターめ、この俺さまが退治してやるぞっ!」
「ひぃ、やめ、やめてよ……っ」
少年数人がかりがひとりをイジめていた。
歳の頃は9歳ほど。木の枝を勇者の剣のようにもち、それを容赦なくふりおろした。
「痛いッ、痛いよ、やめて…!」
「なんだよ、ただの木の枝だろ! モンスターならこんなんじゃ痛がらないぞ!」
もう一度、大将らしいガキが木の枝をふりおろす。させるか。俺は両者のあいだに駆けこみ、少年を守るべく立ちふさがった。
突然現れた帯剣する俺の姿に、いじめ少年たちは見るからに動揺していた。
「な、なんだよ、おまえ!」
「ヘンドリック……ヘンドリック浮雲だ。浮雲家当主ウィリアム浮雲が第一の息子である」
丁寧に名乗ってやっても少年たちの頭のうえにはクエスチョンマークが浮かんでいる。
さっそく嘘をついてしまった。
この方が事態を解決しやすいと思ったが……大丈夫だったか?
うーん、まあ、今日くらいは貴族の権威をかりても問題ないよな。
ひとり納得して自分を正当化する。
「浮雲? だからなんだよ!」
大将はへっと出所不明の自信を顔にはりつけて言った。
言わんとわからんのか。
「俺は貴族だ」
「っ、お貴族様……? でも、まだ子どもじゃん……」
ようやく伝わったらしい。
地方騎士としてブワロ村の治安を守っているウィリアムは、有事の際以外は、基本的に″散歩してる人″くらいにしか認識されてない。
遊ぶことが仕事の子どもたちともなれば、騎士貴族のこと知らなくても仕方ないか。
「イジメは悪いことだ。今すぐこの子に謝れ、お前たち」
「いやだね、そいつが悪いんだ」
「俺の目にはそうは見えなかったが」
「だって、そいつ、俺さまの髪に勝手に触ったんだ!」
それでキレるのもよくわからんな。
イジめられていた少年に視線をむける。
その容姿を見て、俺はハッと息を呑んだ。
少年は獣人であったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした
セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。
牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。
裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる