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オオカミ少女 前編
しおりを挟む森近くでたすけた少年といっしょに、いったん浮雲家へとかえることにした。
彼の怪我を治療するためだ。
意気揚々と家出して来た手前、戻るのは恥ずかしいが、これは仕方がない。
「ふくふく」
「すごい、鳥ですね…! かわいいでふ!」
「いま噛んだ?」
「き、気のせいです、です!」
少年は俺のラテナが気に入ったようだ。
ラテナも彼の腕にとまり、機嫌よく楽しませてあげている。
俺はほどよい間を見つけて話しかける。
「名前はなんていうんだ?」
「アルウって、呼んでくれたら、うれしい、です」
「アルウか。良い名前だな」
可愛い名前って褒めようとおもったけど、やっぱりやめた。気にしてるかもしれない。
「良い名前でふか? えへへ、あ、ありがとう……ございます、ヘンドリック、様」
「ヘンドリックでいいよ。同い年なんだし」
「で、でも、お貴族様をそんな風には呼べない、ですよ」
「嘘だよアレ。俺、本当は貴族じゃないだ」
アルウはポカンとした顔をして俺の服を見る。
俺の衣服は浮雲家のものなので、仕立てのよい高級品ばかりだ。
つまるところ、俺は貴族の格好をしているわけだ。
「アルウの言いたい事はわかるよ。話せば長くなるんだ」
俺は要点をかいつまんでアルウに話をした。彼は心底わからないという風に終始、首をかしげて「もったいないですね…」と、眉尻をさげて言った。
しばらくして、屋敷に帰ってくる。
「ここが浮雲屋敷、ブワロ村を守る騎士の家だよ」
門をあけて帰宅する。
そのまま玄関へ向かおうとし──ふりかえると、まだアルウは門の前にいた。
首をかしげると「こ、この豪邸、が、ヘンドリックの家……」とかなり驚いてるようだった。
庭園を見渡してキョロキョロ落ち着きないアルウの手をとり、安心させ、ともに参る,
家にあがるとセレーナが走ってきて「にぃにがもう帰ってきた?!」と大声でさけび、嬉しそうに胸に飛び込んできた。
カリーナとウィリアムもすぐに飛んできて「気が変わったのか?!」と質問したきたが、俺はゆっくり首を横にふった。
戻ってきたわけを話すと、カリーナは手早くアルウの手当てをして回復魔術をつかってくれた。
手当てしてる途中、セレーナがずっとアルウの灰色の尻尾をいじって遊んでたが、アルウ本人は穏やかな笑顔のまま、気にしてないようだった。
うらやましい。
俺ももふっても文句言われないだろうか。
「えっ…しっぽ、触りたいの……?!」
聞いてみたところ、こんな反応をされた。
露骨すぎるだろ、アルウ少年。
セレーナは少女だからいいとして、やっぱり同性の野郎から触られるのは嫌ってか。
「よし、それじゃタオル貸してあげるよ」
「? あ、ありがとう、ございます」
温水でぬらしたタオルでアルウの顔をふいてあげる。
彼は気持ちよさそうにし、うっとりした顔で見上げてくる。
可愛い顔だ。
マダムや姉さんに好かれそう。
益体のないことを考えながら「腕上げて」といって、俺はアルウのシャツを脱がした。
地面に転がされていたし、服のなかまで拭いたほうがいいだろうと思ったからだ。
「ふぇ……?」
「どうした」
瞬間、アルウはほうけた表情をしていた。
時間がとまったような感覚だった。
何かしてしまっただろうか?
俺はじーっとアルウの身体を見下ろす。
まったいらで子供らしい身体だ。
すこし……なんというか、筋肉がすくなすぎるような気はするけれど。
「うわぁあああ?!」
アルウは涙を目にためて、さけびながら風呂場を飛びだしていってしまう。
「なにが起こったんだ……?」
俺はアルウの上着を手にたちつくすばかりであった。
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