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氷結魔術 前編
しおりを挟む浮雲屋敷からルベントスの家に引っ越してきてから数日が経過した。
ルベントスはアルウと、その父アランの姓だ。
彼らは俺に非常によくしてくれる。
部屋も用意してもらったし、庶民的な服も用意してくれた。
毎日は穏やかに過ぎていく。
朝早く起きて、近くの井戸で水をくんで、台所の窯に水を貯める。
朝の羊小屋から彼らを解放してやり、森には薬草を採集しにいく。
どれも奴隷として、雑用係として、そして貴族としてやってこなかった新しい生活だ。
ただ、俺は日の多くをアルウやアランと過ごすわけではない。
俺にはミラー、ガレット、クベイル、そしてアイガスターのような汚い人間たちに、俺たちが受けた痛みを倍返ししてやらなくてはいけない。
そのために、俺は《ホット》を覚えたことでほとんど使い切ってしまった俺の魔術キャパシテを″とっておき″のためにやりくりしてるのだ。
術の練度が高まれば″嘘つきはいなくなる″。
俺はほくそ笑み、にやける悪い顔を両手ではさんでマッサージする。
いかんいかん。
まだ笑う時じゃない。
笑うのは勝利を手に入れたその時だ。
「あ、ヘンドリック、今日もいくの?」
「もちろん。それじゃ行ってくるな、アルウ、帰りは夕方になると思う」
俺は今で手を緑色に染めて、薬草を樽に詰め替えていたアルウへ手をふって家を出る。
向かった先はアルウと俺が出会った廃屋、そのさらに奥にある森だ。
浅域をぬけて深い領域に足を踏み入れた。
ほどよく強いモンスターたちを見つけて、俺は杖を片手に群れのなかへ入っていく。
──2時間後
本日の実戦を終えて、俺は家へ帰宅しようとしていた。
上級騎士ウィリアム浮雲は、俺の想像を超える強さであった。
では、戦闘能力においてその上をいくアイガスターはどれくらい強いのか。
彼を倒すためには、近寄らせず、剣を振らさず、何もさせないで一方的に殺すしかない。
そのためにはチカラが必要だ。
俺は思い悩みながら獣道を歩いていく。
「ん?」
ふと、俺はなにか叫び声が聞こえたような気がした。
耳をすましてみると「わあああ!」と悲鳴にちかい鬼気迫る気配がつたわってくる。
村人が迷い込んだか──。
俺はそう思い、声のする方へ急いで走っていった。
前方に村人を襲うモンスターが複数匹見えてくる。
俺はすぐに杖を手にとり、走りながら手のなかに《ファイアボルト》を生成して、勢いそのままに投擲した。
四足獣のモンスターの一匹がブォンっと音を立てて、はるか向こうに吹っ飛んでいく。
それに気がついたモンスターが、第三者の存在に気がつき、俺の方へむきなおった。
「凍てつけ──《フロスト》」
手のひらに蓄積させた芯まで凍るような冷たさを、俺は魔術としてはきだした。
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