奴隷身分ゆえ騎士団に殺された俺は、自分だけが発見した【炎氷魔法】で無双する 〜自分が受けた痛みは倍返しする〜

ファンタスティック小説家

文字の大きさ
34 / 49

決別 前編

しおりを挟む

 ──転生から2年6ヶ月が経過した

 浮雲屋敷をでて半年。
 ルベントス家に住んで半年。
 弟子をとって半年とも言えるだろうか。
 
「見てみて、ヘンリー!」
「ん、なんだい、弟子くん」

 俺はラテナに手紙をもたせて空へ返しながら、すっかり練習場とかした廃屋でアルウへとむきなおった。
 
 最近、オオカミ獣人の彼女は夏毛仕様となっており、結構、モフ味はすくなくなった。
 が、以前として感情をよくあらわす尻尾とピンとたったり、シュンとしぼんだりする耳が愛らしい。

「見ててね。ふーん、うーん! はぁああ~…………《ファイアボール》!」

 アルウが持つ俺の杖から、いきおいよく火炎の球が飛び出した。
 それは、すっかり瓦礫の山とかした元・納屋を盛大に吹っ飛ばして炎を撒き散らす。

 凄まじい威力だ。

「ていうか無詠唱じゃん……」

 とっくに気がついていたことだが、俺の弟子アルウ・ルベントスは″バケモノ″だ。
 これは差別的な意味で言っているのではなく、彼女にねむる魔術の才能がバケモノ級と言っているのだ。

 そのすさまじさは、彼女は俺が自分の修行の片手間に教えたたったの6ヶ月で、火属性第三式魔術に到達してしまったほどである。

 俺みたいな素人の教育でこれほど成長するなんて、元がよほど良くないと、ここまでの成長はしない。

 王立魔術学院卒業のあの人を師にもった俺とは、いろいろと規格が違う気がする……。

 まあ、ゆいいつ負け惜しみを語るなら、アルウは血がいいことか。
 アランいわく母親がアルカマジに住んでいて魔術家系の出身らしい。

 とはいえ、あまりにも天才凄すぎるが。

 これが血の厳選がされた、本物の魔術師だとでも言うのだろうか。
 ポッと出のホットでごまかし続けてるなんちゃって賢者とは違うとでも?

「どうだった、ねえ、どうだった!」
「……凄い。すごいよ。うん。師匠として誇らしい気持ちです」

 嘘だ。
 死ぬほど悔しい。
 俺はフォッコ師匠に「100年に1度の天才です!」「神の傑作とはあなたのような子ことを言うのでしょうね」「世界にひとつだけの才能」「神武以来の秀才」などとさんざん褒めちぎられたというのに、俺より才能豊かだと?

 悔しい。
 アルウを師匠にだけは会わせたくない。

「はぁ……嫉妬なんてしてる場合かって」
「よーし、それじゃヘンリーみたいに氷魔術も練習しはじめよっかなー!」
「っ! ダメだ。それだけはやめて」

 俺のアイデンティティまで奪うつもりか。
 この可愛いイヌッコロめ。

「氷の魔術は極めて危険だからな。まずは、ほかの属性式魔術もコンプリートして、支援魔術とか、回復魔術とか勉強して……とりあえず、氷はダメ」
「ヘンリーのケチ」
「こら、師匠になんてこと言うんだ。謝りなさい」
「ひっ……ご、ごめんなさい」
「素直か」

 アルウの頭をポンポン撫でて、しっぽをもふって癒される。

「さてと……それじゃ、今日の練習はおしまいな」
「えー、ボクまだまだ出来るよ」
「ダメだ。俺は俺の勉強に戻らないと」
「ヘンリーはいつも1人で勉強してる! なんでボクに秘密にするの!」

 アルウは「アゥゥウウウ」と狼みたいに威嚇するうなり声をあげて不機嫌をあらわす。

「アルウは弟子。俺は師匠だ。師匠命令は絶対だ」
「そんな理不尽なこと言わないでよー!」

 はぁ……くそ。
 失敗だった。
 本当にすべてを間違えた。

 こいつがいるせいで、アルウがいるせいで、あの時のように──師匠の時のように、本来の使命を見失いそうだ。

 俺は行く。
 こいつを置いて。

「……まあ、お前も立派になった。もう俺がいなくても十分にやっていけるよ」

 俺はアルウの持つ杖を渡すように、手のひらをうえにしてだす。
 アルウはしぶしぶ杖を返してくれた。
 彼女の頭をわしわし撫でて背を向ける。

 本来ならここから俺は森に入って数時間後に家に帰るというのが常だ。

 だが、今日は違う。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした

セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。 牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。 裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

足手まといだと言われて冒険者パーティから追放されたのに、なぜか元メンバーが追いかけてきました

ちくわ食べます
ファンタジー
「ユウト。正直にいうけど、最近のあなたは足手まといになっている。もう、ここらへんが限界だと思う」 優秀なアタッカー、メイジ、タンクの3人に囲まれていたヒーラーのユウトは、実力不足を理由に冒険者パーティを追放されてしまう。 ――僕には才能がなかった。 打ちひしがれ、故郷の実家へと帰省を決意したユウトを待ち受けていたのは、彼の知らない真実だった。

処理中です...