奴隷身分ゆえ騎士団に殺された俺は、自分だけが発見した【炎氷魔法】で無双する 〜自分が受けた痛みは倍返しする〜

ファンタスティック小説家

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捕獲作戦 中編

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「なんだ、あの顔は。失礼な平民め。このクベイル・タイフンが俺の子を孕むチャンスをやろうと言っているのに──」

 俺が浴室の扉をあけたと時、全裸の彼は風呂につかりながらそんな事を呟いていた。

 クベイルと目があう。

 今は盗賊のマントなど着てないので、なんの問題もなくあちらは俺の姿が見えるはずだ。

 しかし、クベイルは固まって動かなかった。

 それは油断しきったパーソナルスペースに、突然得体の知れない不審者があらわれたゆえの困惑なのだろう。

「ッ、だ、だだ、誰だか貴様?!」

 クベイルは転がるように浴槽からでて、すぐ脇においてあった剣を手にとった。
 
「お前の罪を焼きにきた」
「なんのことだ! この俺をクベイル・タイフンと知っての狼藉か、愚か者め!」
「忘れたのか。2年と半年前、お前が殺した人間のことを」

 俺は気まぐれに問いかけてみると、クベイルは「斬り捨てた有象無象のことなど覚えたはいない!」と誇らしげにほざくと、突撃してきた。

 俺は一歩も動かず、ただ指輪のはまった右手で火炎をつくりだし《スコーチ》をはなって焼いた。

「ァァガァアァ?!」

 猛炎に皮膚を焼かれて踊り狂うクベイルは、すぐさま浴槽に飛び込んで焼死からのがれる。

 俺はゆっくり浴槽にちかづく。
 皮膚が半分ほど焼けたクベイルは、恐怖を顔にはりつけて見返してきていた。

「ままま、待ってくれっ! 頼む、本当にわからないんだ! きっと、人違いだ! なにか誤解をしてるんだ!」
「俺は知っているぞ。リクと呼ばれた雑用係がかつて不死鳥騎士団にいたことをな」

 そう言うと、クベイルの顔色がどんどんと蒼白に変わっていった。

「俺は正義の執行者だ。お前を捌きにきた」
「た、たた、頼む、待てよ! いまさらそんな昔のこと持ち出されたって困る! あれは騎士見習いの時にやった、不祥事だろが! なんで2年も経ってからそんな事を言われなきゃならないんだよ! こんなのおかしいだろ!」

 クベイルは「誰か! 誰かこい! 侵入者がいる! 俺を助けろ!」と大声で叫びはじめた。
 
 俺は手のなかに冷気の力をためて、浴槽ごと《フロスト》で氷つかせた。

 
 ───しばらく後


 俺はガレット・ハリケンの屋敷へやってきていた。

 例のごとく盗賊のマントの2着目を消費して、真っ昼間に真正面からどうどうと侵入した。

 屋敷の規模としてはクベイルのトルネイ家とあまり変わらない。

 俺は頭のなかに、暗記しておいた屋敷の見取り図を思い浮かべる。

 闇のブローカーを通じて手に入れた情報を信用するならば、この先にガレットの書斎があるはずだ。

 俺は部屋のまえに立つ。

 扉に耳をあてると、中から何やら人の喋る声が聞こえてくる。

「いつになったら出てきてくれるんだい、ナタリア」
「ふふ、もうガレット様ったら気が早いんだから。当分は会えませんからね」

 幸せそうな声音だった。
 俺は瞳を閉じて扉を押し開けた。
 同時に効果の切れたマントを焼いて、火の粉をまといながら入室する。

 窓際の安楽椅子にゆられるお腹のわずかに膨らんだ若い少女。
 そのお腹に顔をちかづけて口づけする青い髪の青年。

 ガレットだ。
 以前は隠気でずる賢そうな顔をしていたが、いまでは顔色もよく見違えている。

 ガレットとその少女は異様な現れかたをした、不審な格好の俺に顔をこわばらせている。

「叫んだら部屋ごと焼きつくす」

 俺は威圧感をこめて、ただそれだけつげると、手のなかに轟々と燃えさかる炎玉を出現させた。

 その反動で生じた冷素で、足元の品の良い絨毯が凍りついていく。

 ガレットは俺のもつ戦力の大きさを察したように眉をひそめ「部屋を出るんだ」と、安楽椅子にすわる少女に言った。

「ガレット様、あ、あの人は誰ですか…?」
「静かに。言うことを聞いて」

 不安そうな少女は重たそうにお腹を両手で抱えながら、俺のとなりをぬけていく。

 ガレットはその間に、壁に飾られていた剣を手にとって鋭い眼差しを向けてきた。
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