もふもふ大好き聖女の異世のんびり生活

ファンタスティック小説家

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ライバル・ムギ

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 雲ひとつない晴天。
 昼下がりの牧場前には少年少女。

「ちっ、聖女候補生だかなんたか知らないけど、モフモンバトルをなめてるに違いないんだぜ……」

 他人のキャップを被って、自信満々の凛々しい顔してるユウリを見て、顔をしかめる。
 美少女にかぶってもらえて、嬉しい気持ちになっている事はない。ないったらない。

 ムギはやわらか玉を取り出す。

「一泡吹かせてやるぜ。いけ、モッフ!」
「メェエ!」

 クシャッと握って、手を開く。
 やわらか玉から、モッフが飛び出した。
 大きな体にもこもこの白毛。小さい頃からいっしよに育ってきたムギの相棒だ。

(ムギはモッフを使うんだ……なら、わたしは)

「コペルニクス、君に決めた!」
「オニャ!」

 ぴょんっと踊りでるコペルニクス。

 モフモンバトルは、こうしてモフモンを持つテイマー同士が、所持モフモンを1対1で戦わせるのスタンダードである。
 そして、個体スキルと呼ばれる、モフモン独自のワザを使ってテイマーはバトルを組み立てていくのだ。

 現代では、やわらか玉の普及でテイマーは急速に数を増やしている。属性の有利不利、個体スキルの見極め、的確な指示が求められるスリリングな戦い。

 近年注目をあびている競技だ。

「メェエ…」

 フランは不満げに鳴いた。
 自分も戦いたいと言ってるようだ。

「ごめんね、フランは今回はお休みね」

(ミラーマッチもいいけど、初戦だしね)

 ユウリはムギに向き直る。
 闘争心が宿る青い瞳。
 凛々しい眼差しが、戦いこそ、彼女の望むものだと見る者たちに教える。

「いくよ、ムギ」
「お、おう! かかってこいだぜ!」

 バトルが始まった。

「小綺麗な候補生さまに、バトルの厳しさを教えるぞ! モッフ、『たいあたり』だぜ!」
「メェエ!」

 モッフがコペルニクスに勢いよくぶつかりにいく。

「コペルニクス、よけて!」
「オニャ」

 モッフのたいあたりを、華麗にかわすコペルニクス。
 
「そこで、『ひっかく』!」

 すかさず鋭い爪がモッフを襲い掛かる。
 ズシャリ。モッフはころころ転がって、ダメージを受けた。
 
「メェエ…!」
「モッフ! よし、まだいけるな、ひるんじゃダメだ、もう一度『たいあたり』だぜ!」
「メェエっ!」

 負けたくないモッフのガッツ。
 力強く大地を蹴ってコペルニクスへの反撃に出る。
 
「コペルニクス、『マジックパワー』!」
 
 ユウリは常々試したいと思っていた個体スキルを発動した。
 
「オニャ…オニャ…オニャオニャーっ!」

 コペルニクスは二つ折りに畳まれた、柔らかい長耳をピンッとたてる。
 オニャニクスが普段長い耳を二つ折りにしているのは、そこに強力な魔法器官があるからだ。普段は危険なので封印してるのだ。
 
 力は戦いの場でこそ、解放される。

「メ、メェエ?!」
「も、モッフー……ッ! なんだこれ?!」

 ムギのモッフは、コペルニクスの『マジックパワー』によって宙に浮かび上がる。やけになって『たいあたり』を敢行したいたせいで避けることが頭から抜けていた。

 しかし、こんな時になってユウリの発作が始まった。

(くっ、ぅっ! まずい、モフ味が切れた…もふもふ、コペルニクスの尻尾っ、もふもふしないと、くっ、うぅう…ッ)

「はぁ、はあ、はやく決めないと…コペルニクス! そのまま叩きつけちゃって!」
「オニャニャー!」

 コペルニクスの耳が、青紫色の輝きを増幅させた。ユウリの苦しそうな顔が、彼に最大の力を発揮させる。表情があまりにも険しいので、モフ味に飢えてるとは見えなかった。

「メェエェエ~ッ?!」

 マジックパワーが炸裂して、モッフは整えられた芝生に思いっきり落とされる。

 地面が爆発し、巻き上がる砂埃。

 もふもふの毛がバウンドしていく。
 やがて、売店前の砂埃がおさまると、その中には、へにゃーっとして動かなくなったモッフの姿を見つけた。

 ユウリは想像を超える破壊力に、戦慄する。コペルニクスも自分がこんな強力な『マジックパワー』を使えると思っていなかったのかポカンとしていた。

「モッフ! 立つんだ、立ってくれ!」

 ムギの声は届かない。
 牧場主オオイネは見切りをつける。

「モッフ、戦闘不能! ユウリさまの勝利です!」

 父親の宣言で、ムギの戦いは終わった。
 虚脱顔に目の前が真っ暗になってしまう。
 
(やった! アッシュの真似したら勝てたよ!)

 アニメを見続けた経験値は伊達じゃない。
 ユウリのモフモンバトルの才能は、はじめから高い領域に到達していたようだった。

「やったね、コペルニクス!」
「オニャァ~!」

 喜色満面のコペルニクスが、てふてふ、歩いてきてユウリに飛びついた。紺色の毛並みをモフる。顔をうずめ鼻をスンスン動かす。

(ああ~癒される~! 回復全快!)

 あと少し吸引が遅れていたら、それこそ芝生のうえをのたうち回ってところだ。

「そんな…オレ、バトルでも…負けた……?」

 ムギは膝から崩れ落ちる。
 闘志を燃やしていたのは劣等感ゆえ。
 今回のモフモンバトルでの圧倒的なまでの敗北は、若き少年にとって痛烈なものだ。

「ムギ! すっごく楽しかったよ!」
「っ、ユウリ……」

 走り寄っていくる怨敵。
 彼女の口調はいつしか優等生から、気さくな友達へのものに変わっていた。

「でも、このキャップはまだ返せないかもね」
「……くそっ、次は、次は負けない…」

 ムギは込み上げてくる感情を抑え込んで、よろめき立ちあがる。
 ユウリはキョトンとし、すぐに満面の笑顔をうかべた。

「またバトルしようよ、ムギ!」
「……」

 ムギはニコニコ楽しそうなユウリを見つめる。

 くそ、そんなにオレを倒せて嬉しいか。
 
 ムギは悔しさに歯噛みする。
 そして、少年は決心した。
 必ず強くなってユウリを打ち負かすと。

「ああ、絶対に次は負けないぜ」

 その後、バトルしている所を目撃されたことで、ユウリはアウラ神父に連れ戻された。
 大量に孤児院に寄付されたモゥモウミルクのおかげで、聖女候補生たちからの評価はあがったが、罰則として朝食当番を1週間分がユウリに課せられるのだった。

 ────────────────────────────────────


 一方、その頃、ムギは……。

「ほんとうに行くのか?」
「ああ…オレ、兄貴みたいに最強の【テイマー】になって、あいつに絶対勝つんだ……!」

 父親の反対を押し切って、少年は荷物を背負う。
 かたわらには相棒のモッフがいる。

「そうか……よかった、ムギ。お前は熱くさせてけれるモノに出会えたんだな…っ」
「……行ってきます」

 その晩、ムギは修行の旅に出た。
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