超転生者:最強魔術師目指して勉強はじめたけど……どこかで予定が狂った件について

ファンタスティック小説家

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第二章 現界の超能力者

第36話 ちょっと小さくなった?

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 精神世界から意識が途切れることなく、現実世界の体に帰還を果たす。

 ずっと感じなかった肉体の感覚が完全に戻った。
 なんという安心感なのだろう。

 先ほどまで感じていた、ふわふわと自分の形状を認識できないとのとはまるで違う。

「……ふふ、はは」

 ゆっくりとまぶたを開き上体を起こす。
 まずは、現在地を把握するところから始めようか。

「このベッド……師匠の家か」

 何度となく寝かされてきた自室のベッドの次によく眠っているベッドだろう。

 ミスマッチ石レンガ暖炉はご愛嬌。
 赤々と薪を燃やし家全体へ温もりを与えてくれる。

「師匠は、出掛けてんのかな」

 見た感じテニールハウスにはいないらしい。
 ちょっと困ってしまうな。
 あの後どうしたのか気になるのに。

 せめて時計が欲しい。
 この家、時計置いてないんだよな。

 時間を確かめるべく窓の外へと視線を向ける。
 外は明るい……と言っても昼間のような太陽の明るさによる温かい明かりではない。

 冷たい明るさーー夜という闇が星々や月たちによって照らされている清廉せいれんな明るさである。

 今夜は満月だったらしい。

 それもこの世界特有のお月様揃っての数ヶ月に一度の特別な満月だ。

 このトリプルでフルムーンになる日は夜でも昼間のような明るさになるのがこの世界の常識だ。

 この明るさならばさほど時間は経過していないはずだ。
 たしか軍人との戦闘の日も、このトリプルフルムーンデイだったからな。

 森で戦っていた時点で満月が出始めていたので、戦闘から数時間ほど経過したと考えるのが妥当だろう。
 体のだるさ具合も、気を失ってからあまり時間の経過はしていない事を肯定してくれている。
  
 だいたいの時間の経過を把握し、次に意識を向けるのは肉体の傷についてだ。

 腕を動かしペタペタ、と体を触って異常がないかを確認する。

 視界は良好、音もちゃんと聞こえる、においも感じる、触覚は……微妙に痺れたような感じで、鈍い気がするが……まぁ大丈夫だろう。

 屈伸したり軽くシャドウしてみたり、時間がない人のためのラジオ体操もやってみる。

 足も動く、腕も、首も回る。
 指先に若干の痺れがある程度で概ね問題はない。

 血みどろでこんがり焼けてしまってたから不安だったが……後遺症など無くて助かったぜ。
 これも吸血鬼の血の力なのかな?

 なんでもいいか。
 とりあえず回復してくれてよかった。

 再び体をペタペタさわる。
 そして妙な感触のする肌に違和感を抱き、おもむろに上着を脱ぎ体を見下ろした。

「ッ、あらぁ……」

 自分の素肌を見て驚愕の声がつい漏れてしまう。

 森で負った全身火傷によるダメージはほとんど回復していたが、それでも完全に元通りと言うわけには行かなかったようだ。

 傷跡が残ってしまったのである。

 別にモデルをやってるわけでも、グラビアをやってるわけでもないので傷跡ぐらい気にはしないのだが……これはまたかなり大胆に傷が残ってしまった。

 風呂場で「カタギじゃねぇな」とカタギじゃねぇ奴に言われそうな見た目だ。
 全身はゴツゴツして若干硬くなってる。

 しかし、最も注目すべきは左半身だろう。

 特に左脚部と左腕部分だが……この2箇所は傷は真っ黒で他の部分よりかなりくっきり残っている。
 木炭と質感的にはかなり似ているかもしれない。

 まぁうずく左腕ごっこなど、ちょっと厨二チックなプレイも楽しめそうだし個性が出てなかなかどうして悪くない。

 ポジティブにいこうじゃないか。
 というわけで感覚と肉体もチェックを終える。

「よし」

 次だ。
 これが最も大事なこと。

 短時間の間にあまりにも破茶滅茶なことが一度に起こりすぎた。

 少しずつ整理してみようじゃないか。

 謎の宇宙船っぽい金属の塊。
 謎の軍人っぽい奴。
 謎に唐突に覚醒した魔法の感覚。

 さて、どれから手をつけようか。

 いや、まずはティーでも飲もう。

 てなわけでゆっくりお茶でも飲みながら、情報を整理していこうと思う。

 むむ、ここは景気付けにチョコレートでもいいか。

 棚に保管されているこの世界の甘美なる嗜好品チョコレート先生の存在を思い出し俺はほくそ笑んだ。
 森であれだけの戦いがあったんだ。
 師匠も俺がチョコレートで勝利の宴をしていても怒りはしないだろう。

 よし、そうと決まれば早速準備をしようか。

 ー

 ココアを100パーセント楽しむ為に暖炉の前に置かれているソファへ向かう。
 絵面的にも雰囲気という意味でも、これ以上のポジションはないだろう。

 すると、あるものが視界に飛び込んで来た。

「な、んだと…….?」

 驚愕にココアを床にぶちまける。

「……ぇ、なんで!? なんでなんで!?」

 その未知の物質を形容するための言葉を人類は未だに発明出来ていない。

 では何といおうか。

 あえて難しい言葉を使わないのなら、
 こう一言で表現してみよう。

 視界に飛び込んで来たそれは、毛玉である、と。

「シヴァ! シヴァじゃ!」
「ぐぅ……ぐぅ……」

 暖炉の前で丸くなっていた毛玉はシヴァだった。

 首輪も付けてないしなんか微妙に小さくなってる気がするが……この柴犬は間違いなくシヴァだ。

 この世に存在する全ての純粋が具現化したのかと勘違いしてしまうモコモコとした茶白い毛並み。

「生きてたのかよ! 炭になってたから死んじゃったかと思った! シヴァシヴァ!」
「ぐぅ……ぅぅわふぅ……」

 シヴァは眠そうにしながらも、首をもたげて律儀に反応してくれている。
 とんでもなく面倒くさそうな顔だ。
 眠いから放っておいてくれと。
 こんなの完全にシヴァじゃないか。

「よーしよしよし! よしーよしよし!」
「わふわふっ」
「あー! 柴犬の音ー!」

 あぁやっぱりシヴァだ。
 ちょっと縮んでいるけどこれはシヴァなんだ。

「でも、あの状態から復活したのか……?」

 顔をシヴァのお腹に擦り付けながらも、改めて柴犬という種族の強大さに畏敬の念を覚えざる負えない。

 師匠はシヴァのこともポーション壺に突っ込んでくれたのだろうか?

 いや、だとしてもこれほどまでに元通りなるなんてことがあるのか?

 体内の魔力量が膨大であるとかだろうか?

 この世界の回復手段であるポーションは、使用者の保有する魔力を使って傷を癒す物なので傷の回復率は対象によって大きな差が生じる。

 と、ここまで考えてみると手足にだけ残ってしまった黒ずんだ傷跡に合点がいった。

「俺もポーションに突っ込まれて……魔力が足りなかった……のか?」

 俺は最後に放ったあの魔力放出で一気に全ての魔力量を出し切ってしまったので、ポーションで回復するための十分な魔力が残っていなかったのかもしれない。

 そのためほぼ均一に全身を焼かれたはずなのに傷の残り方に違いがあるのかな?

 まぁ考えても仕方ない事だ。
 結局のところ推測でしかない。
 事実は不明である。

 とりあえずシヴァは生きてるし、俺も無事だ。
 師匠は死ぬイメージが出来ないので、生きてるのは確定だろう。

「銃をぶっ放されたり、全身を黒焦げされて炭に変えられたり、血を沸騰させられて喉まで焼かれたりした……銃で撃たれた時は流石に死んだと思ってーー」
「わふわふっ」

 記憶を整理することを忘れてシヴァに話しかける。

 共に死地を乗り越えた兵士には特別な絆が生まれるというが、俺は今まさにその絆というやつを柴犬との間に感じているのかもしれない。

 考えなくてはいけないことは山程ある。

 あの宇宙船のこととか軍人とか。
 あと俺が実は二重人格かもしれないって事とか。

 ちゃんと軍人を殺せたのかとか。
 師匠どこ行ったんだよってのに加え、エヴァとアディが心配してるんじゃないかって事も気になる。

「エラとアレックスはもう寝たかな……」

 沢山気になる事とか考えなくちゃいけないことはあるかど……なんだかまた眠たくなってきた。

 情報の整理は少し先送りしてもいいか。
 もう少しだけシヴァの背中を借りさせてもらおう。

「わふわふっ」
「シヴァ……」

 目覚めたばかりですぐ二度寝をするとは怠惰な事だが今日ばかりは許して欲しい。

 今思えば普段ストイックに生活しすぎて、
 安らぎの時間が足りていなかったような気もする。

 というわけで俺は睡魔に逆らう事なく再び眠らせてもらうことにした。

 数秒の後、バタッと俺の意識は途絶えーー。

 ーーガチャ

「おやおや」
「あ、なんだ意外と平気そうだな」
「アークぅぅぅぅぅうぅッッッ!!」
「ぁ、ん?」

 途絶えかけた意識が急速に浮上。
 どうやら二度寝はさせてもらえないようだ。

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