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大型ワンコな夫
しおりを挟む「ただいまー」
セツが職場である宮廷魔術工房から商店街のパン屋へと帰宅した。
このパン屋はアルフレッドが他界した両親から若くして引き継いだものだ。
「おかえり、セツ。夕食できてるよ~」
そういい出迎えくれるのは、背の高く肩幅のひろい青年だ。
セツより2つ歳上の彼の名はアルフレッド。平民ながら貴族令嬢であり、魔術師であるセツの夫である。
アルフレッドは何も言わずにセツのローブとカバンを受け取り、それを片付けると彼女が靴をぬぐのを待っていた。
おかえりのハグ待機だ。
「あーもう毎回やらないとダメなの?」
セツはそういいながら満更でもないはにかんだ笑顔をうかべて、両手をひろげる。
背の高く大きなアルフレッドは、優しくセツの双肩をつつみこみ「おかえり♪」と彼女の髪に顔をうずめる。
彼はよくここですんすん匂いをかいでくるのだが、セツとしてはチェックされてるようであまり好きではなかった。
「こーら、すんすんしない。別に臭くないでしょーが」
顔を離して、アルフレッドのおでこをペチンっとたたく。
「むう、すんすん出来ないなんて。これじゃセツ不足になっちゃうよ。もう今朝から会ってないんだから」
「過剰摂取はキケンだからだめー」
セツはそういって「言うこと聞かない子は玄関で待ってなさい」と、すげなくアルフレッドを置いていってしまった。
ふと、ふりかえるとアルフレッドがシュンとして、情けなく肩をちぢめて、玄関に立ち尽くしているのが見える。
「いや! 本当に待ってなくていいから!」
セツはあまりにも素直な姿に、自分が嫌なやつに思えてしまい、わびれながらアルフレッドに駆け寄った。
アルフレッドはぱあっと顔を明るくして、セツに手をひかれる。
彼に尻尾があったら左右にぶんぶん降っているだろう。
しばらくして、セツとアルフレッドはいっしょに夕食の準備をして、食卓をかこんでいた。
メニューはたいてい残ったパンと、なんらかのスープだ。あるいはたまに肉とサラダがでる。
アルフレッドはもっと凝ったモノを作ろうとしていたが、セツは申し訳なくそうはさせなかった。
「どう? 美味しい?」
「うん、すっごく美味しい。いつもありがとう、アル」
セツが何気ない感謝をのべるだけで、アルフレッドは国王から名誉称号を授与されたくらい「まあ、まあ、まあ」といいながら、照れくさそうにわらった。
「明日はわたしが朝食つくってあげるね」
「い、いや、いいよ! 俺がやるから。セツは魔術師、俺はただのパン屋だ。神秘の研究で国に貢献してる君にごはん作らせてるなんて知られたら、きっと首がとぶ……!」
「んなわけないでしょ」
セツは夕食の皿を片付けようとする。
が、それですら、家計を主として支えているセツに申し訳ないのか、アルフレッドは「いいからいいから!」とテキパキ片付けてしまった。
夕食後、セツとアルフレッドはソファで言葉の勉強にはいった。
アルフレッドは読み書きができない。ゆえに学のあるセツは、彼の要望にこたえて教えてあげているのだ。
勉強がぼちぼち進んだところで、アルフレッドはセツの太ももに手を置いてきた。
確認するような手つきに、そのまま身をゆだねる。
と、ここでセツは羽ペンが視界にはいる。
「あ。インク乾いちゃうから片付けてから」
「あとでいいよ……っ、セツ、愛してる…っ」
「めっ!」
ペチンっとアルフレッドのおでこを叩く。
すると、彼はシュンとして手早く羽ペンとインクを片付けた。
「よしっ!」
そののち、後片付けをおえて意気揚々としてアルフレッドが、はだけたセツにがっついていったのは語るべくもない。
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