うちの大型ワンコな夫が魔女様に目をつけられたので全力で守らなくては!

ファンタスティック小説家

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新しい旦那

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 翌日、セツはアルフレッドに行ってきますの口づけをして、家を出てきた。

 クールを装いながら、にへら顔をして職場である宮廷魔術工房へとむかう。

 工房に入ると二人の人物が待っていた。

 ひとりは見覚えのある魔女。
 もうひとりは顔の知らぬ男だ。
 身なりはかなりよく良い家の子息だとひと目でわかった。

「あら、セツ、ちょうどいいところに!」

 セツはチラッと顔をむけながら、外着である上級魔術師のローブをぬいでラックにしまった。

「なんでしょうか」
「まったく、セツったらぶっきらぼうなんだから! いい人を紹介してあげるって言ってるのにねー」
「はい?」

 セツが目を丸くすると、工房内にいた金持ちそうな若者が近寄ってくる。
 彼は咳払いをひとつして、やや緊張した面持ちで話しかけてきた。

「貴女がセツ・マキナですね」

 セツはうろんげな眼差しをむけ「はぁ」と曖昧な返事をした。

「ふふ、いえ、あまりにも他人行儀でしたね」

 男はひとりで照れ臭そうに笑っている。

 現時点ですでにセツは、なんとなーくこの男のヘラヘラした態度が気に食わない。が、もちろん顔にだすことはしない。セツの実家より間違いなく格上の貴族だからだ。

「失礼、挨拶がおくれましたな。我輩の名はヒッグズ・アパート・アレクサンドラ二世と申します」

 ヒッグズ。
 セツはこの部分だけ覚える事にした。

「こんにちは、ヒッグズ卿。して、貴方のような方がどうしてこちらへ?」
「なに言ってるのよ、紹介するって言ったでしょ、セツ。彼はあなたの新しい旦那様になるんだから、そんなサバサバしてたら失礼よ!」
「……ぇ?」

 なにを言ってるだ、この女は。

「という事ですな、マキリ殿、いえ、我輩もただセツ、とよんでよろしいだろうか?」

 ダメに決まってんだろ、ぶっ飛ばすぞ。セツは辺境の村で姉御と呼ばれていた時代のするどい睨みを効かせる。

「ふふ、2人ともとってもお似合いよ」
「あの、カレン様、先ほどから何をおっしゃているのかまるで理解できないのですが。これはなにかの冗談ですか?」
「いえいえ、まっさかね~。ほら、だってヒッグズがいれば、アルフレッドとあなたは別れられるのよ? マキナほど力の弱い貴族家ではアルフレッドと一緒にいたら次の代は間違いなく落ちぶれる──だから、助けてあげるってわけよ!」
「だから、わたしにこの男……、ヒッグズ卿と結婚しろと?」

 カレンは満面の笑顔で「うん!」とうなづいた。

「えーっとですね、カレン様、一から説明しましょう。まず、わたしはアルフレッドと望んで結婚したのであってですね──」

 セツが呆れながらカレンの言い分を訂正しようとする。

 この女は自分がアルフレッドを欲しいからと、勝手に嫁であるセツをどこの誰かもわからない貴族と結婚させようとしてる。

 ヒッグズも当たり前のように、セツの肩に手をまわして粘っこい視線をむけてるあたり同罪がすぎる。

「──というわけで、アルフレッドと別れるつもりなんて全くありませんので」

 セツはキッパリと言い切った。




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