雑魚スキル【観察記録】のせいで婚約破棄された少年は、モンスター達とともに世界を無双する。

ファンタスティック小説家

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家出 中編

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 4年前、勝手に話を進めて、顔も知らない少年と婚約させられて、今度は「やっぱり、無しだ」だなんて。

 父の判断の理由はわかっていた。
 当然のようにアダン家の【怪物使役式】が失われたことが大きい。

 サウザンドラ家はアイリスで7代目だが、アダンはまだ3代目だ。
 魔術世界で言うなら、まだまだ青い家系としてあつかわれる。
 彼らアダンが注目されていたのは、すべてあの【怪物使役式】があったおかげなのだ。

「だとしても……こんなの勝手すぎでは!」

 アイリスは【錬血式】を赤く発光させる。
 普段、深く蒼い色合いをした瞳は、従者サアナの瞳のように血の色に染まった。

 アイリスの父親はそれをみてたじろく。

「落ち着け。アイリス、お前は偉大なるサウザンドラ家の次期当主である事を忘れるな。私たちの魔術が完成を見るには、ちかしい魔術分野で研究が進んでいて、力をもつ家でなければならない。お前もわかるだろう?」

 アイリスは歯噛みして、拳を叩きつけて食堂の長机をまっぷたつに叩き割った。

 彼の言葉を思い出していた。「魔術師として生まれた以上、自由な恋愛など望めない」アルバートは割り切っていた。

 でも、アイリスは彼がよかった。

 4年間、年に会う回数が増えていくうちに、いつしか彼に会う日が楽しみで仕方がなくなっていった。

 たぐいまれなる聡明さと、魔術師らしからぬ博愛の精神、成熟した人格を持っていた。

「嫌です、わたしは──アイリス・ラナ・サウザンドラは、アルバート・アダンでなければ結婚など絶対にしません」

 アイリスは瞳のふちに涙をためて、白いエプロンを叩きつけて食堂をあとにした。

 サアナはびっくりした様子で、アイリスのあとを追いかけていく。

「アイリス様…っ! まずいですよ、お父上を怒らせてしまいますよ!」
「いいです。どうせ家のことと、魔術協会からのご褒美にしか興味のないつまらない男です」
「アイリス様?!」

 その発言はやばいのでは?

 サアナはあわあわして、主人の危なすぎる発言が誰かに聞かれていないか心配する。

「サアナ、あなたはわたしの従者ですね?」

 蒼い瞳がたしかめるように見つめてくる。
 サアナは、こくこく、とうなづく。

「4歳の頃からアイリス様とともに育ちました。この命はあなた様に尽くすためにあります」

 『血の一族』たるサウザンドラが抱える、血の騎士の家系。それは、いざという時のために、大切な【錬血式】を分譲してあるほどに、絶大な信頼を置かれている魔術家だ。

 アイリスはサアナの銀髪を「よしよし」と嬉しそうになでた。
 
 手の甲にある【錬血式】に視線をおとす。

 この力は自らの未来を開くためにある。
 ならば自分がどうあるべきか、どうするべきなのか見定めてみようではないか。

 アイリスは覚悟をきめる。

「ついて来るのです、サアナ」
「はい、どこへでも」

 サアナもまた、決意の表情でうなづいた。
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