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家出 後編
しおりを挟む一方そのころ、食堂ではサウザンドラ家現当主フレデリック・ガン・サウザンドラが、曇りゆく窓の外を眺めていた。
「よろしかったのですか、フレデリック様」
「なに、所詮は子どものざれごとだ。あの子は賢い。すぐに感情にまかせた無礼をわびるためにここへ戻ってくるさ」
フレデリックは自信たっぷりな表情で、1番の信頼をおく優秀な執事に顔を向ける。
執事──アルソールは「左様でございますか」と納得のいってなさそうな顔で言った。
「ところで、例の件はどうなっている」
フレデリックは、散らかった食堂をメイドたちが片付けているのを横目にたずねる。
「暗殺の件ですね」
アルソールは声をひそめて言った。
「順調に進んでおります。隣国の暗殺ギルド『アルガス』から暗殺者を雇えるという形で決まりました。2日後の晩に決行します」
「ふむ。足跡はついてないだろうな」
「はい、もちろんです。サウザンドラ家の関与の証拠はいっさいございません」
フレデリックはうなづき、ふと首の動きをとめると「かのガキも暗殺リストに加えておけ」と言った。
「アルバート・アダンですか」
「ああ。あいつは親父よりよほど野心的で優秀だ。今のうちに消しておいたほうがいい」
「よろしいのですか?」
「構わん。連絡の超速鳥便をだしておけ。あいつが死ねばアイリスも諦めがつくというものだろう」
クククっとしわの多い顔に笑みをうかべてわらった。
「ん? あれはなんだ?」
薄ら笑いするフレデリックは、窓の外をみて間のぬけた声をだす。
目を凝らして窓の外を見てみると、馬に乗って2人ほど、門をでていくではないか。
こんな夜遅くに馬を走らせるなんておかしい。その姿がローブを深く被った旅装であるものだから、なおのこと誰かわからない。
向かい風がふいた。
フードが風ではずされて、長くしなやかな輝く金髪が、たなびく宙にあらわになった。
フレデリックは窓に顔を貼りつけて、内側から押しあけ「アイリスッ!!」と叫んだ。
彼女はチラッと振りかえり、フードを被り直すと、そのまま馬の速度をあげて屋敷から出て行ってしまった。
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