28 / 57
謎のスーパーファング
しおりを挟むサウザンドラ家は力のある魔術家だ。
自分の領地だって持っている。
ゆえに、屋敷をぬけだしてきたアイリスと、従者サアナのふたりが、サウザンドラの目から完全に逃れるのは容易ではなかった。
とはいえ、ピリピリして都市と街をぬける逃亡生活もおわりを迎えようとしている。
なぜならば、ふたりはサウザンドラの領地から、はるか遠い土地まで逃げてこれたからだ。
もうすぐジャヴォーダンに到着する。
「アイリス様、ほんとうにアルバート・アダンに会われるのですか?」
「もちろん。そのためにここまで来たのですよ」
サアナは困っていた。
主人の勢いにおされてついてきてしまったが、はっきり言うと彼女はこの家出にとことん否定的であった。
「アダン家の継承の儀から1週間が経ちました。アーケストレス魔術王国内であの家の悲劇を知らないものはいないです」
「だから、どうしたと。なにが言いたいんですか、サアナ」
「アダン家に未来はありません。サウザンドラ家の令嬢としてあの家といっしょになることは……その、本当にむずかしい事だと思うんです」
「ここにいるのはサウザンドラ家の令嬢ではありません。ただのアイリスです。わたしはかねてより、自分の運命が家の都合で決まってしまうことに疑問を抱いてました。これは魔術世界への抗議でもあるのですよ」
「うーむ、それでは、アダン家がサウザンドラをうらんでいるとしたら?」
「……」
「婚約をむすんで喜んでいたのは、なにもアイリス様だけじゃなかったはずです。約束を破棄されて不満があったのはアダン家もおなじはずです」
「アルバートは知略に富み、計略に優れた魔術師です。彼ならばサウザンドラ家との既成事実を喜びますよ…たぶん」
アイリスはすこし自信なく言う。
アルバートは家のために、自分と結ばれる選択肢をとるだろうか。
それとも、憎しみの感情のほうがまさっていて自分に復讐をしようとするだろうか。
彼女には、わからなかった。
そうこうして、すくなからずの不安を抱えたまま、ふたりはジャヴォーダンへ到着した。
通りを歩いていく。
すると、活気のある青年がおおきな声で闘技場でのブロンズ冒険者 対 ファングの興業をチラシとして配っていた。
「ジャヴォーダンの闘技場はまだ運営してるんですね」
サアナは含みを持たせた声でいう。
「アダンがモンスターを供給してるおかげでしょう」
アイリスは淡々と答える。
サアナは好意的な解釈をされて、口をへの字にまげた。
ふたりはその後、街で聞きこみをしてみることにした。
彼女たちは貴族たる魔術師だが、戦いを経験するために冒険者ライセンスは以前から取得していた。
そのため、下から2番目の等級であるシルバーライセンスを首から見えるようにさげて、冒険者ギルドで話を聞くことにした。
「ジャヴォーダンでのニュースですかい。そりゃ今朝のニュースでいったら、アレしかないでしょうに」
備品販売の店員は、そういって新聞をひとつ手渡してくれた。
アイリスは紙面を見て、「スーパーファング?」と首をかしげた。
ファングと言えば冒険者ギルドのブロンズ等級で駆られている有名なモンスターだ。
しかし、スーパーファングという種については効いたことがない。
「なんですか、このスーパーファングって」
「ジャヴォーダンにゃ、歴史ある古い闘技場があるんだけどな、そこの持ち主がなんでもとんでもないファングを仕入れたんだってよ」
「とんでもないファングですか」
「そのファングってのが、あまりに見事なもんだからよ、午前中に開かれたオークションでは魔術家が大金はたいて買ったんだとさ」
「いくらくらいで売れたんですか?」
「なんとファング1匹で金貨8枚だって!」
「ファングで、ですか。確かにいささか値がつきすぎているように思えますね」
アイリスはアダン家との親睦の深さから、モンスターの取引相場というものにくわしかった。
金貨8枚がファングにつけられる値段として法外なのは、すぐにわかった。
アイリスは不思議なこともあるものだ、とこの時は特に気にとめず、新聞を片手に通りへともどった。
0
あなたにおすすめの小説
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
婚約破棄された令嬢、気づけば王族総出で奪い合われています
ゆっこ
恋愛
「――よって、リリアーナ・セレスト嬢との婚約は破棄する!」
王城の大広間に王太子アレクシスの声が響いた瞬間、私は静かにスカートをつまみ上げて一礼した。
「かしこまりました、殿下。どうか末永くお幸せに」
本心ではない。けれど、こう言うしかなかった。
王太子は私を見下ろし、勝ち誇ったように笑った。
「お前のような地味で役に立たない女より、フローラの方が相応しい。彼女は聖女として覚醒したのだ!」
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
魔法筆職人の俺が居なくなったら、お前ら魔法使えないけど良いんだよな?!
川井田ナツナ
ファンタジー
俺は慈悲深い人間だ。
だから、魔法の『ま』の字も理解していない住民たちに俺の作った魔法筆を使わせてあげていた。
だが、国の総意は『国家転覆罪で国外追放』だとよ。
馬鹿だとは思っていたが、俺の想像を絶する馬鹿だったとはな……。
俺が居なくなったら、お前ら魔法使えなくて生活困るだろうけど良いってことだよな??
善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる