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第9話 一方その頃、僕はエルフの美女と混浴中
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辺境都市テラでの冒険者登録と、衝撃のオーク・キング瞬殺劇から数日が経過した。
僕のランクはDに上がったが、ギルド内での扱いは「要注意新人(ルーキー)」というよりも、「触らぬ神に祟りなし」といった微妙な距離感で定着しつつある。
街を歩けば、強面の冒険者たちが道を譲ってくれるし、露店のおばちゃんは「お兄ちゃん、これおまけだよ」とリンゴをくれる。
なんとも住みやすい街になったものだ。
そんな平和な日々を送る中、僕は自宅のアレン・ハウスで、至福の時を過ごしていた。
「あ~、極楽極楽」
湯気けむる広大な浴室。
ヒノキ(世界樹)の香りが漂う露天風呂に肩まで浸かり、僕は大きく息を吐いた。
目の前には、庭園の緑と、遠くに広がる森の絶景。
お湯は適温、効能は『超回復』付き。
これ以上の贅沢があるだろうか。
「……あの、主様」
湯気の向こうから、遠慮がちな声が聞こえた。
「ん? どうしたのリーリヤ」
振り返ると、タオル一枚を巻いたリーリヤが、顔を真っ赤にして湯船の端に浸かっていた。
透き通るような白い肌が、蒸気でほんのり桜色に染まっている。
濡れた金髪が肌に張り付き、なんとも艶かしい。
「そ、その……やはり、混浴というのは、いささか刺激が強すぎるのではないでしょうか……?」
彼女は恥ずかしそうに身体を縮めている。
そう、我が家の大浴場は一つしかない。
いや、正確には個室のシャワーブースもあるのだが、リーリヤが「メイドたるもの、主様の背中をお流しするのが務めです!」と強硬に主張した結果、こうして一緒に入ることになったのだ。
もちろん、お湯は白濁した薬湯なので、水面下は見えないようになっている。紳士的な配慮だ。
「リーリヤが一緒に入りたいって言ったんじゃないか」
「は、はい……それはそうなのですが……いざとなると、心臓が……」
彼女は胸元を押さえている。
エルフ族は貞淑だと聞くが、彼女の場合は忠誠心が羞恥心を上書きしようとしてバグっているらしい。
「まあ、リラックスしてよ。背中なら後で流してもらうから」
「は、はいっ! お任せください!」
彼女は緊張しながらも、タオルを握りしめて近づいてきた。
その時、お湯の中からボコッ!と大きな泡が立った。
「ワンッ!」
水面から飛び出したのはシロだ。
彼(彼女?)も一緒に入浴中である。
犬かきで器用にお湯の上を泳ぎ、僕の肩に前足を乗せてくる。
「シロも気持ちいいか?」
「クゥン!」
シロは気持ちよさそうに目を細めた。
この薬湯のおかげか、シロの毛並みは以前にも増して輝きを放っている。
最近では、歩くだけで周囲の草花が開花するという、謎の『豊穣オーラ』まで纏うようになった。
「……フェンリルとエルフの王女と混浴する元冒険者。字面だけ見るとすごいな」
僕は苦笑した。
こんな生活、勇者パーティにいた頃には想像もできなかった。
あそこでは毎日が戦いと野営の繰り返し。風呂なんて川での行水が関の山だった。
ライオネルたちは「勇者は清潔でなければならない」とか言って、僕に『洗浄魔法(クリーン)』をかけさせていたが、自分たちは楽をして、僕だけが魔力を消費する日々。
思い出すだけで肩が凝る。
「主様、失礼します」
リーリヤが僕の背後に回り、スポンジ(魔獣の海綿)で背中を洗い始めた。
その手つきは優しく、そして的確だ。
「ん~、そこそこ。上手だね」
「恐縮です。……主様の背中、とても広くて……そして傷一つない綺麗な背中ですね」
「まあ、後衛職だったからね。前線で剣を振るうことはなかったし」
「いいえ、物理的な傷という意味ではありません。……歴戦の英雄が纏うような、凄まじい『魔力の鎧』を感じます。肌の一寸先に、何重にも張り巡らされた絶対防御の結界……これがある限り、核撃魔法ですら届かないでしょう」
「……また買いかぶりすぎだよ」
ただの『皮膚硬化』と『衝撃吸収』の常時付与だ。
蚊に刺されないようにかけているだけなんだけど。
「……アレン様」
リーリヤの手が止まった。
「もし、魔王軍がここへ攻め込んできたら……貴方様はどうされますか?」
彼女の声には、隠しきれない不安が滲んでいた。
先日のオーク討伐や、黒牙隊の撃退で、ここの安全性が高いことは証明されている。
だが、魔王軍の本隊、特に『四天王』クラスとなれば話は別だと思っているのだろう。
「どうするって……まあ、追い払うかな」
「追い払う……」
「せっかく手に入れた平和な生活だ。邪魔する奴は、誰であろうと退場してもらうよ」
僕は湯船のお湯をすくい上げ、パシャリと顔にかけた。
言葉に魔力は込めていない。
だが、その一言には絶対的な自信――というより、マイホームを守るという家主としての確固たる決意が込められていた。
リーリヤは僕の背中を見つめ、そして頬を赤らめながら、そっと額を押し付けた。
「……はい。貴方様がいれば、この世界に恐れるものなどありませんね」
彼女の信頼が重い。
でも、悪い気はしない。
守るべきものが増えるというのは、意外と悪くないものだ。
「よし、そろそろ上がろうか。湯あたりしちゃう」
僕たちは風呂から上がり、リビングで冷たいフルーツ牛乳(自作)を飲んでくつろいだ。
これがスローライフの真骨頂だ。
◆ ◆ ◆
一方、その頃。
アレンの家から数百キロ離れた、王国北部の山岳地帯。
そこには、魔王軍の前線基地が築かれていた。
禍々しい黒い城壁に囲まれた砦。
その最奥にある玉座の間で、一人の巨漢がワイングラスを握りつぶしていた。
「……黒牙隊が、全滅しただと?」
低い声が響く。
玉座に座るのは、ライオンの頭を持つ巨躯の魔人。
魔王軍四天王の一角、『獣王』ガロンである。
Sランク冒険者パーティですら全滅させる実力を持つ、武闘派の幹部だ。
「は、はい! 斥候の報告によりますと、エルフの王女を追っていた黒牙隊の反応が、北の森の一角で突如として消失しました!」
部下のゴブリンが震えながら報告する。
「消失? 死んだということか?」
「いえ、それが……空の彼方へ『飛んでいった』との目撃情報が……」
「飛んだ? 鳥にでもなったか?」
ガロンは鼻で笑った。
だが、その目は笑っていない。
黒牙隊は彼の手塩にかけた精鋭部隊だ。それが一瞬で無力化されたという事実は、看過できない。
「場所はどこだ」
「北の未開の森、その深部です。そこに、数日前から奇妙な『城』が出現したとの情報も……」
「城だと? 人間がそんな場所に?」
ガロンは顎を撫でた。
北の森は、強力な魔獣が跋扈する人外魔境だ。
そこに城を建て、あまつさえ自分の部隊を瞬殺する存在。
ただの人間ではない。
あるいは、隠居した賢者か、あるいは……。
「面白い。エルフの王女がそこに逃げ込んだのなら、まとめて潰してやる」
ガロンが立ち上がる。
その巨体から放たれる威圧感だけで、部下のゴブリンたちが失禁しそうになる。
「俺自らが出る。軍を招集しろ! オーク、オーガ、サイクロプス、全戦力を投入して、その『城』ごと踏み潰してくれるわ!」
「ハ、ハッ! 直ちに!」
魔王軍が進軍を開始する。
その数、およそ五千。
小国なら一日で滅びる規模の大軍勢だ。
彼らが目指す先は、アレンがのんびりと風呂上がりの牛乳を飲んでいるマイホーム。
嵐の前の静けさ……と言いたいところだが、当のアレンは「明日は何の野菜を植えようかな」としか考えていなかった。
◆ ◆ ◆
そしてもう一組。
北を目指す勇者パーティ、ライオネルたち。
彼らはようやく、森の入り口付近にある小さな村『ココノエ村』にたどり着いていた。
「はぁ……はぁ……やっと、屋根のある場所で寝られる……」
ライオネルは村の入り口の看板にしがみついた。
ボロボロの革鎧、泥だらけのブーツ、無精髭。
かつての輝かしい勇者の面影は、もはや欠片もない。
「宿屋……宿屋はどこ……」
フィオナも杖を杖代わりにヨロヨロと歩く。
マリアに至っては、ライオネルの背におぶられて意識が朦朧としていた。
村人たちが、奇異な目で彼らを見ている。
「なんだあの乞食たちは」「山賊にでも襲われたのか」という視線が痛い。
だが、今の彼らには反論する気力すらなかった。
村唯一の安宿に転がり込み、硬いベッドに倒れ込む。
「……おい、聞いたか? 村人の話を」
ライオネルが天井を見上げながら言った。
「ええ……この先の森に、『魔王軍』が集結しつつあるって……」
フィオナが震える声で答える。
「しかも、そのさらに奥には、『謎の城』が出現して、そこには『世界を滅ぼす魔神』が住んでいるって噂……」
村の噂話は尾ひれがついて、アレンのことがとんでもない化け物扱いされていた。
『指一本でドラゴンを消し飛ばす』
『夜な夜な美女の生き血を啜っている』
『巨大な白い悪魔(シロ)を従えている』
「……魔神か。そいつが、俺たちの探している『古代の秘宝』を守っている番人かもしれないな」
ライオネルは、恐怖よりも期待を抱いていた。
強い番人がいるということは、それだけ価値のあるお宝があるということだ。
それに、魔王軍が動いているなら、漁夫の利を狙えるかもしれない。
「明日、出発するぞ。魔王軍と魔神が戦っている隙に、お宝を頂くんだ」
「でも、体力が……」
「ポーションだ! 村の道具屋で買い占めろ! 金は……まあ、なんとかなる!」
彼らは再び無謀な賭けに出ようとしていた。
自分たちが「蚊帳の外」の存在であることを認められず、物語の主人公であろうとし続ける悲しき道化。
◆ ◆ ◆
翌朝。
アレン・ハウス。
「主様、大変です!」
早朝、リーリヤが血相を変えて僕の寝室に飛び込んできた。
「どうしたの? 朝ごはんの卵が切れた?」
「違います! 敵襲です! しかも、軍隊規模の!」
僕は眠い目をこすりながら起き上がり、窓の外を見た。
結界の『遠見機能』を起動する。
森の入り口付近から、黒い染みのような大群がこちらに向かって進軍してくるのが見えた。
オーク、オーガ、そして巨大な一つ目の巨人サイクロプス。
空にはガーゴイルの群れ。
「うわぁ、いっぱい来たな」
「のんきなことを言っている場合ですか!? あれは魔王軍の本隊です! 数はおよそ五千……! 一国の軍隊でも防ぎきれるかどうか……!」
リーリヤがパニックになっている。
確かに、これだけの数を相手にするのは面倒だ。
庭の野菜が踏み荒らされたら困るし。
「リーリヤ、落ち着いて。五千だろうが五万だろうが、関係ないよ」
僕はベッドから降り、軽くストレッチをした。
「ちょっと『掃除』してくる」
「そ、掃除……?」
「うん。庭の草むしり感覚でね」
僕は着替えるのも面倒なので、パジャマ(最高級シルク製、防御力はドラゴンの鱗並み)のまま、玄関へと向かった。
シロが「待ってました!」とばかりに尻尾を振ってついてくる。
「シロ、お前は留守番だ。リーリヤを守っててくれ」
「クゥーン……(暴れたかったのに)」
シロは残念そうにしたが、僕の命令には絶対服従だ。
リーリヤの横にお座りをして、キリッと番犬モードになる。
「行ってきます」
僕はサンダルを突っ掛け、外に出た。
朝の清々しい空気の中に、獣の臭いが混じっているのが不快だ。
「さて、どう料理してやろうかな」
僕は森の開けた場所までテレポートした。
目の前には、地平線を埋め尽くすほどの魔物の軍勢。
その先頭に立つ、ライオン頭の巨漢――獣王ガロンが、僕の姿を認めて足を止めた。
「貴様が……この城の主か?」
ガロンが嘲笑うように言った。
パジャマ姿のひ弱そうな人間を見て、勝利を確信したのだろう。
「いかにも。朝っぱらから騒々しいですね。近所迷惑ですよ」
「ハッ! 減らず口を! 我は獣王ガロン! 貴様の城を更地にし、エルフの王女を頂く! 死にたくなければ跪け!」
「お断りします」
僕は即答した。
「交渉決裂だな。……総員、突撃!! 踏み潰せ!!」
「オオオオオッ!!」
五千の軍勢が一斉に走り出した。
地響きが鳴り、土煙が上がる。
普通の人間なら、この光景だけで絶望して死ぬだろう。
だが、僕はあくびを一つした。
「『多重詠唱(マルチ・キャスト)』」
僕の周囲に、無数の魔法陣が展開された。
その数、百……いや、千。
空を埋め尽くすほどの幾何学模様が、虹色に輝く。
「なっ……!?」
ガロンが目を見開いた。
「『ファイア・アロー』『アイス・ランス』『サンダー・ボルト』『ウィンド・カッター』……あ、面倒だから全部混ぜちゃえ。『属性混合・魔力爆撃(エレメンタル・レイン)』」
僕が指を振り下ろした瞬間。
世界が光に包まれた。
ズドガガガガガガガッ!!
空から降り注ぐ極彩色の光の雨。
それは、一発一発が上級魔法に匹敵する威力を持ち、しかも自動追尾機能付きだ。
魔物たちが次々と光に貫かれ、爆散していく。
「ギャアアアッ!」
「グオオオッ!」
断末魔の叫びすら、爆音にかき消される。
五千の軍勢が、まるで雪解けのように消滅していく。
「ば、馬鹿な……! たった一人で……軍隊を……!?」
ガロンは自分の目を疑った。
魔法障壁を展開するが、光の雨はいとも容易くそれを貫通し、彼の自慢の鋼鉄の毛皮を焼き焦がす。
「ぐおおおおっ!!」
獣王が膝をつく。
わずか数秒。
たった数秒で、彼の軍団は壊滅した。
立っているのは彼一人だけだ。
「さて、大将さん。どうします? まだやります?」
僕はサンダルのまま、ゆっくりと彼に近づいた。
パジャマには埃一つついていない。
「き、貴様……何者だ……! 勇者か!? いや、勇者ごときがこれほどの魔法を……!」
「ただの付与術師ですよ。ちょっとバフのかけ方を工夫しただけです」
「ふ、付与術師だと……!?」
ガロンは戦慄した。
こいつは化け物だ。
関わってはいけない存在だったのだ。
「撤退……撤退だ!!」
ガロンはプライドを捨て、背を向けて逃げ出した。
四足歩行になり、獣の本能で全力疾走する。
「おっと、逃がしませんよ。『重力操作(グラビティ)』」
ズドンッ!
ガロンの身体が地面にめり込んだ。
見えない巨大な手が彼を押し潰しているかのように、指一本動かせない。
「ぐ、ぐ、ぐ……!」
「ゴミを散らかしたまま帰るのはマナー違反です。ちゃんと片付けてからにしてくださいね」
僕は冷ややかに見下ろした。
これが、最強の(元)付与術師による、一方的な蹂躙劇の幕開けだった。
続く
僕のランクはDに上がったが、ギルド内での扱いは「要注意新人(ルーキー)」というよりも、「触らぬ神に祟りなし」といった微妙な距離感で定着しつつある。
街を歩けば、強面の冒険者たちが道を譲ってくれるし、露店のおばちゃんは「お兄ちゃん、これおまけだよ」とリンゴをくれる。
なんとも住みやすい街になったものだ。
そんな平和な日々を送る中、僕は自宅のアレン・ハウスで、至福の時を過ごしていた。
「あ~、極楽極楽」
湯気けむる広大な浴室。
ヒノキ(世界樹)の香りが漂う露天風呂に肩まで浸かり、僕は大きく息を吐いた。
目の前には、庭園の緑と、遠くに広がる森の絶景。
お湯は適温、効能は『超回復』付き。
これ以上の贅沢があるだろうか。
「……あの、主様」
湯気の向こうから、遠慮がちな声が聞こえた。
「ん? どうしたのリーリヤ」
振り返ると、タオル一枚を巻いたリーリヤが、顔を真っ赤にして湯船の端に浸かっていた。
透き通るような白い肌が、蒸気でほんのり桜色に染まっている。
濡れた金髪が肌に張り付き、なんとも艶かしい。
「そ、その……やはり、混浴というのは、いささか刺激が強すぎるのではないでしょうか……?」
彼女は恥ずかしそうに身体を縮めている。
そう、我が家の大浴場は一つしかない。
いや、正確には個室のシャワーブースもあるのだが、リーリヤが「メイドたるもの、主様の背中をお流しするのが務めです!」と強硬に主張した結果、こうして一緒に入ることになったのだ。
もちろん、お湯は白濁した薬湯なので、水面下は見えないようになっている。紳士的な配慮だ。
「リーリヤが一緒に入りたいって言ったんじゃないか」
「は、はい……それはそうなのですが……いざとなると、心臓が……」
彼女は胸元を押さえている。
エルフ族は貞淑だと聞くが、彼女の場合は忠誠心が羞恥心を上書きしようとしてバグっているらしい。
「まあ、リラックスしてよ。背中なら後で流してもらうから」
「は、はいっ! お任せください!」
彼女は緊張しながらも、タオルを握りしめて近づいてきた。
その時、お湯の中からボコッ!と大きな泡が立った。
「ワンッ!」
水面から飛び出したのはシロだ。
彼(彼女?)も一緒に入浴中である。
犬かきで器用にお湯の上を泳ぎ、僕の肩に前足を乗せてくる。
「シロも気持ちいいか?」
「クゥン!」
シロは気持ちよさそうに目を細めた。
この薬湯のおかげか、シロの毛並みは以前にも増して輝きを放っている。
最近では、歩くだけで周囲の草花が開花するという、謎の『豊穣オーラ』まで纏うようになった。
「……フェンリルとエルフの王女と混浴する元冒険者。字面だけ見るとすごいな」
僕は苦笑した。
こんな生活、勇者パーティにいた頃には想像もできなかった。
あそこでは毎日が戦いと野営の繰り返し。風呂なんて川での行水が関の山だった。
ライオネルたちは「勇者は清潔でなければならない」とか言って、僕に『洗浄魔法(クリーン)』をかけさせていたが、自分たちは楽をして、僕だけが魔力を消費する日々。
思い出すだけで肩が凝る。
「主様、失礼します」
リーリヤが僕の背後に回り、スポンジ(魔獣の海綿)で背中を洗い始めた。
その手つきは優しく、そして的確だ。
「ん~、そこそこ。上手だね」
「恐縮です。……主様の背中、とても広くて……そして傷一つない綺麗な背中ですね」
「まあ、後衛職だったからね。前線で剣を振るうことはなかったし」
「いいえ、物理的な傷という意味ではありません。……歴戦の英雄が纏うような、凄まじい『魔力の鎧』を感じます。肌の一寸先に、何重にも張り巡らされた絶対防御の結界……これがある限り、核撃魔法ですら届かないでしょう」
「……また買いかぶりすぎだよ」
ただの『皮膚硬化』と『衝撃吸収』の常時付与だ。
蚊に刺されないようにかけているだけなんだけど。
「……アレン様」
リーリヤの手が止まった。
「もし、魔王軍がここへ攻め込んできたら……貴方様はどうされますか?」
彼女の声には、隠しきれない不安が滲んでいた。
先日のオーク討伐や、黒牙隊の撃退で、ここの安全性が高いことは証明されている。
だが、魔王軍の本隊、特に『四天王』クラスとなれば話は別だと思っているのだろう。
「どうするって……まあ、追い払うかな」
「追い払う……」
「せっかく手に入れた平和な生活だ。邪魔する奴は、誰であろうと退場してもらうよ」
僕は湯船のお湯をすくい上げ、パシャリと顔にかけた。
言葉に魔力は込めていない。
だが、その一言には絶対的な自信――というより、マイホームを守るという家主としての確固たる決意が込められていた。
リーリヤは僕の背中を見つめ、そして頬を赤らめながら、そっと額を押し付けた。
「……はい。貴方様がいれば、この世界に恐れるものなどありませんね」
彼女の信頼が重い。
でも、悪い気はしない。
守るべきものが増えるというのは、意外と悪くないものだ。
「よし、そろそろ上がろうか。湯あたりしちゃう」
僕たちは風呂から上がり、リビングで冷たいフルーツ牛乳(自作)を飲んでくつろいだ。
これがスローライフの真骨頂だ。
◆ ◆ ◆
一方、その頃。
アレンの家から数百キロ離れた、王国北部の山岳地帯。
そこには、魔王軍の前線基地が築かれていた。
禍々しい黒い城壁に囲まれた砦。
その最奥にある玉座の間で、一人の巨漢がワイングラスを握りつぶしていた。
「……黒牙隊が、全滅しただと?」
低い声が響く。
玉座に座るのは、ライオンの頭を持つ巨躯の魔人。
魔王軍四天王の一角、『獣王』ガロンである。
Sランク冒険者パーティですら全滅させる実力を持つ、武闘派の幹部だ。
「は、はい! 斥候の報告によりますと、エルフの王女を追っていた黒牙隊の反応が、北の森の一角で突如として消失しました!」
部下のゴブリンが震えながら報告する。
「消失? 死んだということか?」
「いえ、それが……空の彼方へ『飛んでいった』との目撃情報が……」
「飛んだ? 鳥にでもなったか?」
ガロンは鼻で笑った。
だが、その目は笑っていない。
黒牙隊は彼の手塩にかけた精鋭部隊だ。それが一瞬で無力化されたという事実は、看過できない。
「場所はどこだ」
「北の未開の森、その深部です。そこに、数日前から奇妙な『城』が出現したとの情報も……」
「城だと? 人間がそんな場所に?」
ガロンは顎を撫でた。
北の森は、強力な魔獣が跋扈する人外魔境だ。
そこに城を建て、あまつさえ自分の部隊を瞬殺する存在。
ただの人間ではない。
あるいは、隠居した賢者か、あるいは……。
「面白い。エルフの王女がそこに逃げ込んだのなら、まとめて潰してやる」
ガロンが立ち上がる。
その巨体から放たれる威圧感だけで、部下のゴブリンたちが失禁しそうになる。
「俺自らが出る。軍を招集しろ! オーク、オーガ、サイクロプス、全戦力を投入して、その『城』ごと踏み潰してくれるわ!」
「ハ、ハッ! 直ちに!」
魔王軍が進軍を開始する。
その数、およそ五千。
小国なら一日で滅びる規模の大軍勢だ。
彼らが目指す先は、アレンがのんびりと風呂上がりの牛乳を飲んでいるマイホーム。
嵐の前の静けさ……と言いたいところだが、当のアレンは「明日は何の野菜を植えようかな」としか考えていなかった。
◆ ◆ ◆
そしてもう一組。
北を目指す勇者パーティ、ライオネルたち。
彼らはようやく、森の入り口付近にある小さな村『ココノエ村』にたどり着いていた。
「はぁ……はぁ……やっと、屋根のある場所で寝られる……」
ライオネルは村の入り口の看板にしがみついた。
ボロボロの革鎧、泥だらけのブーツ、無精髭。
かつての輝かしい勇者の面影は、もはや欠片もない。
「宿屋……宿屋はどこ……」
フィオナも杖を杖代わりにヨロヨロと歩く。
マリアに至っては、ライオネルの背におぶられて意識が朦朧としていた。
村人たちが、奇異な目で彼らを見ている。
「なんだあの乞食たちは」「山賊にでも襲われたのか」という視線が痛い。
だが、今の彼らには反論する気力すらなかった。
村唯一の安宿に転がり込み、硬いベッドに倒れ込む。
「……おい、聞いたか? 村人の話を」
ライオネルが天井を見上げながら言った。
「ええ……この先の森に、『魔王軍』が集結しつつあるって……」
フィオナが震える声で答える。
「しかも、そのさらに奥には、『謎の城』が出現して、そこには『世界を滅ぼす魔神』が住んでいるって噂……」
村の噂話は尾ひれがついて、アレンのことがとんでもない化け物扱いされていた。
『指一本でドラゴンを消し飛ばす』
『夜な夜な美女の生き血を啜っている』
『巨大な白い悪魔(シロ)を従えている』
「……魔神か。そいつが、俺たちの探している『古代の秘宝』を守っている番人かもしれないな」
ライオネルは、恐怖よりも期待を抱いていた。
強い番人がいるということは、それだけ価値のあるお宝があるということだ。
それに、魔王軍が動いているなら、漁夫の利を狙えるかもしれない。
「明日、出発するぞ。魔王軍と魔神が戦っている隙に、お宝を頂くんだ」
「でも、体力が……」
「ポーションだ! 村の道具屋で買い占めろ! 金は……まあ、なんとかなる!」
彼らは再び無謀な賭けに出ようとしていた。
自分たちが「蚊帳の外」の存在であることを認められず、物語の主人公であろうとし続ける悲しき道化。
◆ ◆ ◆
翌朝。
アレン・ハウス。
「主様、大変です!」
早朝、リーリヤが血相を変えて僕の寝室に飛び込んできた。
「どうしたの? 朝ごはんの卵が切れた?」
「違います! 敵襲です! しかも、軍隊規模の!」
僕は眠い目をこすりながら起き上がり、窓の外を見た。
結界の『遠見機能』を起動する。
森の入り口付近から、黒い染みのような大群がこちらに向かって進軍してくるのが見えた。
オーク、オーガ、そして巨大な一つ目の巨人サイクロプス。
空にはガーゴイルの群れ。
「うわぁ、いっぱい来たな」
「のんきなことを言っている場合ですか!? あれは魔王軍の本隊です! 数はおよそ五千……! 一国の軍隊でも防ぎきれるかどうか……!」
リーリヤがパニックになっている。
確かに、これだけの数を相手にするのは面倒だ。
庭の野菜が踏み荒らされたら困るし。
「リーリヤ、落ち着いて。五千だろうが五万だろうが、関係ないよ」
僕はベッドから降り、軽くストレッチをした。
「ちょっと『掃除』してくる」
「そ、掃除……?」
「うん。庭の草むしり感覚でね」
僕は着替えるのも面倒なので、パジャマ(最高級シルク製、防御力はドラゴンの鱗並み)のまま、玄関へと向かった。
シロが「待ってました!」とばかりに尻尾を振ってついてくる。
「シロ、お前は留守番だ。リーリヤを守っててくれ」
「クゥーン……(暴れたかったのに)」
シロは残念そうにしたが、僕の命令には絶対服従だ。
リーリヤの横にお座りをして、キリッと番犬モードになる。
「行ってきます」
僕はサンダルを突っ掛け、外に出た。
朝の清々しい空気の中に、獣の臭いが混じっているのが不快だ。
「さて、どう料理してやろうかな」
僕は森の開けた場所までテレポートした。
目の前には、地平線を埋め尽くすほどの魔物の軍勢。
その先頭に立つ、ライオン頭の巨漢――獣王ガロンが、僕の姿を認めて足を止めた。
「貴様が……この城の主か?」
ガロンが嘲笑うように言った。
パジャマ姿のひ弱そうな人間を見て、勝利を確信したのだろう。
「いかにも。朝っぱらから騒々しいですね。近所迷惑ですよ」
「ハッ! 減らず口を! 我は獣王ガロン! 貴様の城を更地にし、エルフの王女を頂く! 死にたくなければ跪け!」
「お断りします」
僕は即答した。
「交渉決裂だな。……総員、突撃!! 踏み潰せ!!」
「オオオオオッ!!」
五千の軍勢が一斉に走り出した。
地響きが鳴り、土煙が上がる。
普通の人間なら、この光景だけで絶望して死ぬだろう。
だが、僕はあくびを一つした。
「『多重詠唱(マルチ・キャスト)』」
僕の周囲に、無数の魔法陣が展開された。
その数、百……いや、千。
空を埋め尽くすほどの幾何学模様が、虹色に輝く。
「なっ……!?」
ガロンが目を見開いた。
「『ファイア・アロー』『アイス・ランス』『サンダー・ボルト』『ウィンド・カッター』……あ、面倒だから全部混ぜちゃえ。『属性混合・魔力爆撃(エレメンタル・レイン)』」
僕が指を振り下ろした瞬間。
世界が光に包まれた。
ズドガガガガガガガッ!!
空から降り注ぐ極彩色の光の雨。
それは、一発一発が上級魔法に匹敵する威力を持ち、しかも自動追尾機能付きだ。
魔物たちが次々と光に貫かれ、爆散していく。
「ギャアアアッ!」
「グオオオッ!」
断末魔の叫びすら、爆音にかき消される。
五千の軍勢が、まるで雪解けのように消滅していく。
「ば、馬鹿な……! たった一人で……軍隊を……!?」
ガロンは自分の目を疑った。
魔法障壁を展開するが、光の雨はいとも容易くそれを貫通し、彼の自慢の鋼鉄の毛皮を焼き焦がす。
「ぐおおおおっ!!」
獣王が膝をつく。
わずか数秒。
たった数秒で、彼の軍団は壊滅した。
立っているのは彼一人だけだ。
「さて、大将さん。どうします? まだやります?」
僕はサンダルのまま、ゆっくりと彼に近づいた。
パジャマには埃一つついていない。
「き、貴様……何者だ……! 勇者か!? いや、勇者ごときがこれほどの魔法を……!」
「ただの付与術師ですよ。ちょっとバフのかけ方を工夫しただけです」
「ふ、付与術師だと……!?」
ガロンは戦慄した。
こいつは化け物だ。
関わってはいけない存在だったのだ。
「撤退……撤退だ!!」
ガロンはプライドを捨て、背を向けて逃げ出した。
四足歩行になり、獣の本能で全力疾走する。
「おっと、逃がしませんよ。『重力操作(グラビティ)』」
ズドンッ!
ガロンの身体が地面にめり込んだ。
見えない巨大な手が彼を押し潰しているかのように、指一本動かせない。
「ぐ、ぐ、ぐ……!」
「ゴミを散らかしたまま帰るのはマナー違反です。ちゃんと片付けてからにしてくださいね」
僕は冷ややかに見下ろした。
これが、最強の(元)付与術師による、一方的な蹂躙劇の幕開けだった。
続く
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