「雑草係」と追放された俺、スキル『草むしり』でドラゴンも魔王も引っこ抜く~極めた園芸スキルは、世界樹すら苗木扱いする神の力でした~

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第11話 【ざまぁ】その頃の勇者たち「回復役がいないと雑魚敵にも勝てないだと!?」

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「――ぐっ……ここは……」

ジークはうめき声を上げて目を覚ました。
全身を襲う倦怠感と、頭を殴られたような鈍い痛み。
手足はまだ完全に麻痺しており、思うように動かない。

「目が覚めましたか、勇者様」

目の前に、嘲笑を浮かべた黒ローブの男が立っていた。
昨日、ジークたちを拉致した『闇の教団』のリーダーだ。
周囲を見渡すと、そこは薄暗い洞窟の中だった。
レオンとミリアも、近くの壁に鎖で繋がれているのが見える。二人ともまだ意識がないようだ。

「き、貴様ら……! 俺たちをどうするつもりだ!」

ジークは精一杯の虚勢を張って睨みつけた。
だが、男はクツクツと喉を鳴らして笑うだけだった。

「どうもしませんよ。貴方にはこれから、我々の『実験』に付き合っていただくだけです」
「実験だと?」
「ええ。この森の奥深くには、古代の魔力を凝縮した『魔石』が眠っています。我々はその力を使って、人為的に魔王を創り出す研究をしているのですよ」

男は恍惚とした表情で語り始めた。

「そして、その依り代として、貴方ほど最適な素材はありません。聖剣に選ばれた勇者の肉体……これに魔石の力を注ぎ込めば、きっと素晴らしい『魔勇者』が誕生するでしょう!」
「馬鹿なことを……! 俺がそんなことに協力するものか!」
「協力? いえいえ、拒否権はありませんよ」

男が指を鳴らすと、部下たちが巨大な紫色の水晶――『魔石』を運んできた。
それは不気味な光を放ち、見る者の正気を蝕むような邪悪な波動を撒き散らしていた。

「さあ、始めましょうか。新しい神の誕生の儀式を!」

「や、やめろ……! 来るなァァァァッ!!」

ジークの悲鳴が、洞窟の中に虚しく響き渡った。
男たちが魔石をジークの胸に押し当てる。
凄まじい量の負の魔力が、ジークの体内に流れ込み始めた。

「ぐ、ぎゃあああああああああああああっ!!!」

肉を引き裂かれるような激痛。
骨が軋み、血管が沸騰するような感覚。
そして何より、精神が黒く塗りつぶされていく恐怖。

(ノエル……ノエル……!)

薄れゆく意識の中で、ジークはまたあの幼馴染の名前を呼んでいた。
それは助けを求める声だったのか、それとも自分の不運を呪う恨み言だったのか。
もはや、彼自身にもわからなかった。

   ◇

一方、その頃。
俺の家の庭では、新しい『薬草園』の造成が着々と進んでいた。

「主様、土壌の浄化と聖水による活性化、完了しました!」
「ありがとうセラフィナ。完璧な土だ」

セラフィナの土魔法は日に日に精度を増している。
俺が作った野菜を毎日食べているせいか、彼女の魔力は底なしになりつつあった。

「主様、森の奥に自生していた『月光草』と『賢者の石ころ』、持ってきましたわよ」

ティターニアが、その辺の石ころを拾うような気軽さで、伝説級の薬草や錬金素材を運んでくる。
『月光草』は夜になると淡く光る回復薬の最高級素材。
『賢者の石ころ』は、その名の通り、賢者の石の原石であり、あらゆる病を治す触媒になると言われている。

「おお、助かる。こっちはアイリスが見張ってくれてるから、害獣の心配もないしな」

少し離れた場所では、アイリスが仁王立ちで周囲を警戒していた。
彼女の再生した左腕からは、時折金色のオーラが迸っており、半径一キロ以内の魔物は恐怖で近づくことさえできないらしい。
まさに、最強の番人だ。

「よし、じゃあ植えていくか」

俺はティターニアが持ってきた種や苗を、丁寧に植えていった。
植える作業自体は普通の農作業だ。
だが、俺が植えた瞬間、奇跡が起こる。

俺の『草むしり』スキル――もとい、進化して『生命創造(仮)』の領域に達しつつあるスキルが、植えられた植物のポテンシャルを極限まで引き出すのだ。
俺が「病気に強くなれ」と念じれば、植物の遺伝子情報が書き換わり、あらゆる病原菌を寄せ付けなくなる。
俺が「薬効を高めろ」と念じれば、含有成分が数十倍に凝縮される。

「ふむ、この『月光草』、ちょっと光が弱いな。もっと光れ」

俺が葉っぱを撫でると、月光草がカッと太陽のように輝き出した。

「お、この『賢者の石ころ』、ただの石じゃ面白くないな。根っこでも生やしてみるか」

俺が土に埋めると、石からニョキニョキと芽が出て、可愛らしい双葉が開いた。
後に『賢者の樹』と呼ばれることになる、新種の誕生の瞬間である。

「主様、また世界の理を弄んでいますね……」
「錬金術師が見たら発狂しますわよ……」

後ろでセラフィナとティターニアが何か言っているが、俺は気にしない。
俺にとっては、野菜も薬草も同じ「可愛い我が子」だ。
最高の環境で、最高の状態に育ててあげたいと思うのは、親心というものだろう。

数時間後。
そこには、ありとあらゆる伝説級の薬草が、雑草のように生い茂る『神々の薬草園』が完成していた。
その一角から漂う香りだけで、不治の病が治り、寿命が延びると言われるほどの、とんでもないパワースポットの誕生である。

「よし、これで風邪をひいても安心だな!」

俺は満足げに頷いた。
まさかこの薬草園が、後に王都の医療崩壊を救い、俺が『薬神』として崇められる原因になるとは、この時の俺は知る由もなかった。

   ◇

ジークが悪の教団に改造されている頃。
彼らとはぐれ、一人で森を彷徨っていた冒険者がいた。
それは、ジークのパーティに所属していた魔法使い、レオンだった。

いや、正確には「所属していた」は過去形だ。
彼は、ジークたちが見捨てられた隙に、一人で逃げ出したのだ。

「ハァ……ハァ……ここまで来れば、もう追いつかれないだろう」

レオンは木の根元に座り込み、荒い息をついた。
彼の顔は、恐怖と自己嫌悪で歪んでいた。

(俺は悪くない……! あんな奴らと一緒にいたら、こっちまで殺される! ジークは無能で、ミリアは泣いてばかり。俺は賢者だぞ? あんな奴らのお守りをする義理はない!)

彼は必死に自己を正当化した。
だが、心の奥底ではわかっていた。
自分がただの卑怯者だということを。
そして、この森で一人で生き残る力など、自分にはないということも。

食料は尽き、魔力も残りわずか。
おまけに、先ほどから背後で何かの気配がする。
ガサガサと茂みを揺らす音。
それは徐々に近づいてきていた。

(ま、魔物か……!?)

レオンは震える手で杖を構えた。
だが、彼の魔法はもはや火種程度の威力しか出ない。
茂みから現れたのは、体長三メートルはあろうかという巨大な狼だった。
漆黒の毛皮、燃えるような赤い瞳。
その口からは、鋭い牙が覗いている。

「フ、フェンリル……!?」

Aランクの伝説級魔獣。
その一撃は鋼鉄の鎧を切り裂き、その咆哮は下級魔物を恐怖で支配するという。
単独で遭遇した場合、生還率はゼロに近い。

「グルルルルル……」

フェンリルはレオンを獲物として認識し、喉を鳴らした。
絶体絶命。
レオンの頭は真っ白になった。

(終わりだ……! こんなところで、犬死にかよ……!)

彼が死を覚悟した、その時だった。

「――こら、ウルフ。お客さんを怖がらせちゃダメだろ」

場違いなほど、のんびりとした声が響いた。
レオンが声のした方を見ると、そこには黒髪の青年が立っていた。
エプロンをつけ、手にはカゴを持っている。
まるで、ピクニックにでも来たかのような軽装だ。

「きゃうん!」

次の瞬間、レオンは信じられない光景を見た。
あの凶暴なフェンリルが、尻尾を振って青年の足元に駆け寄り、子犬のようにじゃれつき始めたのだ。

「よしよし、いい子だ。今日はお前の好きな『ドラゴンの骨ガム』があるぞ」

青年――ノエルは、カゴから巨大な骨を取り出し、フェンリルに与えた。
フェンリルは嬉しそうにそれに食らいつき、ガリガリと噛み砕き始めた。

「……え?」

レオンは呆然としていた。
目の前の光景が理解できない。
Aランク魔獣を手懐ける農夫?
ドラゴンをペットのおやつに?

「あ、君、大丈夫?」

ノエルがようやくレオンの存在に気づいたようだ。

「森で迷ったのか? 腹でも減ってるんだろ。うちに来るか? ちょうど今、薬草の天ぷらを揚げてるところなんだ」
「……の、ノエル……?」

レオンは掠れた声で、その名前を呼んだ。
間違いない。
かつて自分たちが見下し、追放した、あの地味な幼馴染だ。
だが、その雰囲気はまるで違う。
自信に満ち溢れ、その身から放たれるオーラは、もはや人間のものではなかった。

「お、俺は……」

レオンは何か言おうとしたが、言葉にならなかった。
安堵か、恐怖か、それとも羞恥か。
様々な感情がごちゃ混ぜになり、彼はそのまま気を失ってしまった。

   ◇

レオンが次に目を覚ましたのは、ふかふかのベッドの上だった。
見知らぬ豪華な部屋。
そして、目の前には心配そうにこちらを覗き込むノエルの顔があった。

「気がついたか。良かった」
「ノエル……ここは……?」
「俺の家だよ。とりあえず、これを飲んで」

ノエルが差し出したのは、緑色の液体が入ったコップだった。
薬草の匂いがする。

「これは?」
「薬草園で採れたハーブを絞っただけのジュースだよ。栄養満点だから」

レオンは疑うことなくそれを飲んだ。
すると、驚くべきことが起こった。
枯渇していた魔力が、一瞬で全快したのだ。
それどころか、魔力の総量そのものが、以前の倍近くに膨れ上がっている。

「な、なんだこれは!? エリクサーか!?」
「ただの野菜ジュースだって」

ノエルはこともなげに言う。
レオンは混乱した。
この数日で、一体ノエルに何があったのか。

「お前……なんでこんな所に……? それに、あのフェンリルは……」
「ああ、ウルフのことか。あいつは庭の番犬だよ。最初は襲ってきたけど、撫でてやったら懐いたんだ」

撫でて懐いた……?
Aランク魔獣が、そんな犬猫のように?

「それより、お前こそなんでこんな森にいるんだ? ジークとミリアは一緒じゃないのか?」

ノエルの言葉に、レオンはビクリと体を震わせた。
そして、顔を俯かせた。

「……はぐれたんだ。いや……俺が、見捨てて逃げた」

レオンは、これまでの経緯を正直に話した。
ダンジョンで立ち往生したこと。
装備が壊れ、金が尽きたこと。
そして、闇の教団に襲われ、仲間を見捨てて逃げ出したこと。
話しながら、涙が溢れてきた。

「俺は……クズだ。最低の裏切り者だ……」

自分でもわかっている。
ノエルに合わせる顔などない。
彼はきっと、自分を軽蔑するだろう。
罵倒されても、殴られても仕方がない。

だが、ノエルの反応は予想外のものだった。

「……そっか。大変だったな」

彼は、ただ静かにそう言った。
その声には、軽蔑も怒りも含まれていなかった。
ただ、純粋な同情と、昔と変わらない優しさがあった。

「腹、減ってるだろ。食堂に行こう。みんな待ってる」
「……みんな?」

レオンが顔を上げると、ノエルは悪戯っぽく笑った。

「ああ。俺の新しい家族がな」

レオンはノエルに連れられて、食堂へと向かった。
そこで彼が見たのは、エルフの王女と、大精霊と、王国の騎士団長が、和気藹々とテーブルを囲んでいるという、現実離れした光景だった。

そして、テーブルの上には、レオンが今まで見たこともないような、輝く料理の数々が並んでいた。
その匂いを嗅いだ瞬間、レオンの腹がぐぅぅぅぅと鳴った。

「さあ、遠慮するなよ。たくさん食え」

ノエルの言葉に、レオンは再び涙を流した。
それは、後悔と、そして感謝の涙だった。
自分が捨てたものが、どれほど大きく、温かいものだったのかを、彼はこの時、痛いほど理解したのだった。

   ◇

一方、その頃。
闇の教団のアジトでは、異変が起きていた。

「成功だ……! ついに成功したぞ!」

教団のリーダーが、狂喜の声を上げていた。
彼の目の前には、禍々しいオーラを放つ人影が立っていた。
全身を黒い鎧で覆い、その手には、邪悪な紫色の光を放つ魔剣が握られている。

「目覚めよ、我が魔勇者よ! その力で、世界を混沌に染め上げるのだ!」

黒い鎧の騎士――魔石と融合させられたジークは、ゆっくりと顔を上げた。
その兜の隙間から覗く瞳は、赤く、憎悪に満ちていた。

「……ノエル」

ジークの口から漏れたのは、ただ一つの名前だった。
だが、その声にはもはや、かつての友情や後悔の色はなかった。
あるのは、自分をここまで追い詰めた世界そのものへの、そして、自分とは対照的に幸せを掴んでいるであろう幼馴染への、底なしの嫉妬と憎しみだけだった。

「ノエル……殺す……!」

魔勇者として覚醒したジークは、暴走する力のままに、アジトの壁を破壊し、外へと飛び出した。
彼の目的はただ一つ。
ノエルを見つけ出し、その手で八つ裂きにすること。

運命の歯車が、狂い始める。
最強の農家と、最凶の魔勇者。
二人の幼馴染が、最悪の形で再会する日は、すぐそこまで迫っていた。

続く
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