異世界で無自覚に最強だった俺、追放されたけど今さら謝られても遅い

eringi

文字の大きさ
2 / 2

第2話 誰も知らないチートスキル

しおりを挟む
翌朝、東の空に朝焼けが広がるころ、ルークは村の広場にいた。夜のうちに魔物の死骸を処理し、村人たちが安全に暮らせるように周囲も確認しておいた。地面に積まれた灰色の毛皮と魔石の山が、昨夜の激戦を物語っている。  
「あなた、本当にひとりでこれを?」  
ミリアが驚きと感嘆の入り混じった声で問いかけてきた。彼女の両手には湯気の立つ木の器があり、香ばしい匂いのスープを差し出す。  
「グレイウルフの巣ごと潰した。もう安心していい」  
「すごい……あんな群れ、前に騎士団が来たときは七人がかりでも全滅したんですよ」  
「そうなのか? そりゃ悪いことしたな、仕事取っちゃって」  
冗談めかして言うと、ミリアは首を横に振って笑った。  
「そんなことないです! 村の皆、恩人だって言ってて。朝からお祝いの支度してました」  
「お祝い……?」  
「あら、知らないんですか? この村では、命を救ってくれた人を“守護者”として祀る風習があるんです。教会の小屋も用意して、名前を刻むんですよ」  
「祀られるのはさすがに勘弁してほしいな。まだ死んでないし」  
「ふふっ、本当に遠慮深い方ですね」  
そう言って笑うミリアの頬は、朝日を受けて柔らかく光っていた。  

ルークはスープをすすりながら、ふと自分の“ステータス”を確認した。視界の奥で淡い光が浮かび、文字が浮かび上がる。  

=====  
名前:ルーク=グレン  
職業:補助士(サポートクラス)  
レベル:27(昨日は9だった)  
HP:1240/1240  
MP:980/980  
スキル:【成長限界なし】【潜在書き換え】【神聖適応】  
=====  

「……は?」  
思わず声が漏れた。昨日まで気づかなかったスキルが二つ増えている。  

(潜在書き換え? 神聖適応? なんだそれ)  

ルークは首をひねるが、特に心当たりはなかった。考えられるとすれば、昨夜の戦闘で“限界なし”のスキルがなにかを引き出したということだろう。  
(限界なし……それって、もしかして“他のスキルの進化”まで含むのか?)  
常識を超えた発想に、ルーク自身が苦笑する。だが、体の感覚は確かに昨日より軽く、力がみなぎっていた。  

そのとき、村の北側で悲鳴が上がった。  
「魔獣だぁ! また来たぞ!」  
ルークは即座に立ち上がり、剣を握って駆け出した。ミリアも驚いて後を追う。  

***  

村の入口には、見たこともない巨大な影が立っていた。グレイウルフよりも一回り大きな、黒鉄の毛並みと赤い目を持つ異形の狼。背中に骨の棘が生えている。  
「待て、それは……ブラックハウンドか!」  
辺境でも滅多に現れない上位魔物。通常ならBランクパーティーが必要とされる脅威だ。  
震える村人たちを背に、ルークは一歩前へ出た。  
「お前たちは下がってろ。今度は群れじゃない、相手するのは俺だ」  

狼の咆哮が森を震わせる。だが、ルークは恐れなかった。むしろ、内側に湧き出る力を感じていた。まるで、自分の中を神聖な何かが満たしていくような感覚。  

「“潜在書き換え”──発動」  
口が自然にその言葉を紡いだ瞬間、ルークの体が金色の光に包まれた。ステータスの表示が再び変化する。  

=====  
スキル【潜在書き換え】:周囲の魔力構造を再定義し、自身の能力を最適化する。  
発動時、体内魔力効率+200%。攻撃力・防御力ともに成長補正発動。  
=====  

風が炸裂し、地面が砕けた。  
ルークの足が動く。次の瞬間にはもう、ブラックハウンドの懐にいた。剣を振るう、その一閃。鋼鉄の毛皮が紙のように裂け、巨体が悲鳴を上げて崩れる。  
「……嘘だろ……一撃で……?」  
ミリアが呆然と呟いた。  
倒れた魔獣を見下ろしながら、ルークは深く息を吐いた。戦いの興奮が冷めると同時に、体がぽっと軽くなる。  

「……なるほど。強くなりすぎるわけだ」  

村人たちが歓声を上げ、駆け寄ってくる。子どもたちが「すごい!」「本物の英雄だ!」と叫び、彼を囲む。ミリアは胸に手を当てて小さく呟いた。  
「あなた、本当に……ただの補助士なんですか?」  
「うーん、たぶん“元”だな。いまは自分でもよくわからない」  
そう答えながら、ルークは照れくさそうに頭をかいた。  

***  

日が暮れるころ、村の広場では小さな宴が開かれた。子どもたちが火を囲み、ミリアが笑顔でパンとスープを配っている。  
「改めて、本当にありがとうございました。あなたがいなかったら、この村はもう……」  
「助け合いだよ。俺も休む場所が欲しかったから」  
「それでも、この恩は忘れません!」  
彼女の瞳が真剣に光る。ルークはあたたかいスープを飲みながら、静かに夜空を見上げた。  
ふと、星のひとつが一瞬だけ強く瞬いた気がした。その瞬間、頭の中に女の声が響く。  

『汝は、枷を外した者。限界なき魂に祝福を与えよう』  

「……誰だ?」  
反射的に立ち上がるが、周囲には誰もいない。ミリアも村人も気づいていないようだ。声は彼の頭の奥でだけ響いている。  
『“神格段階”上昇。スキル派生:神眼解放』  
視界が白く閃き、次の瞬間、彼は世界を“別の層”で見ていた。  
木々の間を流れる魔力の線、地面を走る生命エネルギー、そして人の体の中で光る魂の輝きが見える。  

「……まさか、冗談だろ」  
思わず息を呑む。目に見える全てが、まるで設計図のように透けている。彼は思い出した。幼い頃、神殿の祭司が言っていた言葉だ。  
――“限界なしのスキルは、神をも超える可能性を秘めている”――  

自分がその道を歩き始めていることを、ルークはようやく理解した。  

***  

その夜、ミリアは静かにルークに尋ねた。  
「ねえ、あなた、これからどうするんですか?」  
「この村を出るよ。王都まで戻るつもりはないけど、西の方に大きな遺跡があると聞いた。ちょっと気になってね」  
「遺跡ですか……すごい。私、恩返しがしたいんです。旅、同行させてください!」  
「え?」  
「どうしても恩返しがしたいんです。それに、外の世界を見てみたい。お願いです!」  
ルークは少し考え込んだ。彼女は戦闘には不向きだが、村を支えてきただけあって生活力が高い。何より、無邪気でまっすぐだった。  

「……まあ、断る理由はないかな。ただし、危なくなったらすぐ逃げるんだぞ」  
「本当ですか! やった!」  
ミリアは嬉しそうに跳ねた。その笑顔に、ルークは思わず頬を緩めた。  

こうして、無自覚に最強へと成長し続ける青年と、彼を信じる少女の旅が始まった。  
夜空に浮かぶ満月だけが、その行く末を静かに見守っていた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

追放されたけど気づいたら最強になってました~無自覚チートで成り上がる異世界自由旅~

eringi
ファンタジー
勇者パーティーから「役立たず」と追放された青年アルト。 行くあてもなく森で倒れていた彼は、実は“失われし最古の加護”を持つ唯一の存在だった。 無自覚のまま魔王を倒し、国を救い、人々を惹きつけていくアルト。 彼が気づかないうちに、世界は彼中心に回り始める——。 ざまぁ、勘違い、最強無自覚、チート成り上がり要素満載の異世界ファンタジー!

役立たずとパーティーからもこの世からも追放された無気力回復師、棚ぼたで手に入れたユニークスキル【銀化】で地味にこつこつ無双する!!

佐藤うわ。
ファンタジー
 超ほのぼの追放・ユニークスキルものです。基本は異世界ファンタジーギャグラブコメ、たまに緩い戦闘がある感じです。(ほのぼのですが最初に裏切ったPTメンバー三人は和解したりしません。時間はかかりますがちゃんと確実に倒します。遅ざまぁ)  最初から生贄にされる為にPTにスカウトされ、案の定この世から追放されてしまう主人公、しかし彼は知らずにドラゴンから大いなる力を託されます……途中から沢山の国々が出て来て異世界ファンタジー大河みたいになります。

無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。 死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった! 呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。 「もう手遅れだ」 これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!

「雑草係」と追放された俺、スキル『草むしり』でドラゴンも魔王も引っこ抜く~極めた園芸スキルは、世界樹すら苗木扱いする神の力でした~

eringi
ファンタジー
「たかが雑草を抜くだけのスキルなんて、勇者パーティには不要だ!」 王立アカデミーを首席で卒業したものの、発現したスキルが『草むしり』だった少年・ノエル。 彼は幼馴染の勇者に見下され、パーティから追放されてしまう。 失意のノエルは、人里離れた「魔の森」で静かに暮らすことを決意する。 しかし彼は知らなかった。彼のスキル『草むしり』は、対象を「不要な雑草」と認識すれば、たとえドラゴンであろうと古代兵器であろうと、根こそぎ引っこ抜いて消滅させる即死チートだったのだ。 「あれ? この森の雑草、ずいぶん頑丈だな(ドラゴンを引っこ抜きながら)」 ノエルが庭の手入れをするだけで、Sランク魔物が次々と「除草」され、やがて森は伝説の聖域へと生まれ変わっていく。 その実力に惹かれ、森の精霊(美女)や、亡国の女騎士、魔王の娘までもが彼の「庭」に集まり、いつしかハーレム状態に。 一方、ノエルを追放した勇者たちは、ダンジョンの茨や毒草の処理ができずに進行不能となり、さらにはノエルが密かに「除草」していた強力な魔物たちに囲まれ、絶望の淵に立たされていた。 「ノエル! 戻ってきてくれ!」 「いや、いま家庭菜園が忙しいんで」 これは、ただ庭いじりをしているだけの少年が、無自覚に世界最強に至る物語。

貴族に無茶苦茶なことを言われたのでやけくそな行動をしたら、戦争賠償として引き抜かれました。

詰んだ
ファンタジー
エルクス王国の魔法剣士で重鎮のキースは、うんざりしていた。 王国とは名ばかりで、元老院の貴族が好き勝手なこと言っている。 そしてついに国力、戦力、人材全てにおいて圧倒的な戦力を持つヴォルクス皇国に、戦争を仕掛けるという暴挙に出た。 勝てるわけのない戦争に、「何とか勝て!」と言われたが、何もできるはずもなく、あっという間に劣勢になった。 日を追うごとに悪くなる戦況に、キースへのあたりがひどくなった。 むしゃくしゃしたキースは、一つの案を思いついた。 その案を実行したことによって、あんなことになるなんて、誰も想像しなかった。

学生学園長の悪役貴族に転生したので破滅フラグ回避がてらに好き勝手に学校を魔改造にしまくったら生徒たちから好かれまくった

竜頭蛇
ファンタジー
俺はある日、何の予兆もなくゲームの悪役貴族──マウント・ボンボンに転生した。 やがて主人公に成敗されて死ぬ破滅エンドになることを思い出した俺は破滅を避けるために自分の学園長兼学生という立場をフル活用することを決意する。 それからやりたい放題しつつ、主人公のヘイトを避けているといつ間にかヒロインと学生たちからの好感度が上がり、グレートティーチャーと化していた。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

転生無双学院~追放された田舎貴族、実は神剣と女神に愛されていた件~

eringi
ファンタジー
「役立たず」と呼ばれ、貴族家を追放された少年エリアス。 すべてを失った彼が辿り着いたのは、見捨てられた古の神殿。 そこで眠っていた「神剣」ルミナと「女神」セリアに出会い、隠された真の力――“世界の法則を書き換える権能”を得る。 学院で最底辺だった少年は、無自覚のまま神々と王族すら凌駕していく。 やがて彼の傍らには、かつて彼を見下した者たちが跪き、彼を理解した者たちは彼に恋をする。 繰り返される“ざまぁ”の果てに、無自覚の英雄は世界を救う。 これは、「追い出された少年」が気づかぬうちに“世界最強”となり、 女神と共に愛と赦しとざまぁを与えていく物語。

処理中です...