【改訂版】元保育士の異世界物語〜子どものためなら魔王もワンパン!?天職保育士!?創造魔法と神獣召喚で世界の子どもたちを救います〜

イル

文字の大きさ
76 / 96
第五章〜悲しき戦い〜

第76話 〜ヴァンジャンスの過去〜

しおりを挟む
 ヴァンジャンスは、六大魔王との戦いの後、原因不明の頭痛に悩まされていた。老人福祉をヒイロに無理矢理作らせ、ある程度の形が出来たところで、後遺症と疲れを理由にしばし休むことにした。

 今思えば、SSランクの冒険者になる前はのんびりと暮らしていたが、SSランクの冒険者になり、さらにヒイロと出会ってからは急激に変化しすぎたのだろう。少しぐらい休んでも、バチが当たらないと思ったのだ。

(それにしてもヒイロのやつ、俺の家に突然来たかと思うと「お前は鋼鉄○ークかロボ○ップのファンか?」とバカにしてきやがったな。その時は頭も痛かったから、言い返すことも出来ず、無言で中指を立てたが、うっかり心の中では「アイ○ンマンだ、バカやろー」と不覚にも突っ込んでしまった……)

 頭痛のせいで、身体が怠いため、ベットに横になっていたヴァンジャンスは昔のことを思い出していた。ヴァンジャンスの前世はあまりいいものでなかった。それなりに裕福な家庭に生まれたが、家庭内はDVとネグレクトで幼い頃に離婚。ヴァンジャンス自身もその代償からか、他人とのコミュニケーションがうまく出来ず、中学を入ってすぐ、引きこもりまでは行かないものの、仲の良い友人も作れず、パソコンやネットのゲームに逃げていた。今の魔法のモデルもその時の知識による物だ。

 高校を出てからは、運良くIT系に勤め、実家から逃げるように一人暮らしをしていた。だが、その会社が運の尽きだった。休みはほとんどなく、待遇も悪く、下手したら死人も出るほどのブラック企業だったのだ。ヴァンジャンスも、やめられることならやめたかったが、高卒でコミュ障には他で働く選択肢はなかった。

 その頃は特に将来に希望や夢もなく、疲労感からの絶望と、なんの楽しみもなかった青春時代に恨みを持ち、「世界が滅びればいい」とさえ、常につぶやいていた。そんな日々が10年も続いたある日、いつのまにかヴァンジャンスは自ら会社の屋上から飛び降りていた。

 その時、ある声が聞こえた。最近の頭痛で少しずつその時の記憶が戻りつつあった。

「……復讐だ……その絶望に感謝しろ……オレがいた世界とつながった……新しい人生をやろう……」

 ヴァンジャンスは転生をしていた。ヒイロと違い、生まれた頃の記憶はない。気がついたら5、6歳で、頭から血を流していた。周りの同じような子どもからヴァンジャンスと呼ばれていたことで、そのまま自分の名前と認識した。頭のケガはどうやら物を盗もうとして失敗し、頭を思い切り殴られ、瀕死の状態だったらしい。

 なんとか、命を取り止めたが、前世の記憶も戻っためか頭が混乱し、思えばその頃もずっと頭痛に悩まされていた。ヴァンジャンスは、物乞いで日々を過ごし、その空腹感からの絶望感が復讐心に代わり、前世と同じように世界を呪った。

 それから8年近く経ち、身体が大きくなったヴァンジャンスは物乞いや盗みから、成り行きで盗賊となっていた。生きる為には無実の人も殺したこともあった。それは、ヴァンジャンスが入っていた盗賊団が、たまたま移動の途中で見つけた、ある山の奥にある小さな村を襲った時だった。

 ヴァンジャは前世の平和な世界での記憶から、命のやり取りは好きではなかったが、生きるためにはやむ得ないと言う気持ちはあった。村のどこを見ても老人しかいないこの村は10人程度の盗賊相手にも、なす術がなかった。相手が抵抗しない老人のためか、盗賊達もむやみに殺さないものの、食料や金目の物をほとんど奪っていっ出いた。

 ヴァンジャンスは虐げられる老人の様子を見ながらその行為に嫌悪感を抱きつつも、生きるために仕方ない、恨むなら俺と同じようにこの世界を恨めと思っていた。

 そんな中だった。一人の爺さんが、盗賊の頭領にむかい、笑いながら話しかけた。

「そんなに暴れんくてもいい……儂らはもう死ぬ寸前の老人達じゃ。食べ物も金品も必要はない。この集落は、口減らしに捨てられた老人達で作った場所じゃ。皆、いつ死んでも良いと思っておる。見たところ、お前達はまだ若い、罪を犯さなくても、話し合えば、それなりの物をやれる。」

 ヴァンジャンスはその言葉に違和感の原因に気付いた。その老人の言う通り、この村には粗末な建物と本当に老人しかいなかったのだ。そして、その様子から老人達が言っていることも嘘ではないと感じた。

 盗賊の頭領とその周りは、その言葉に耳を貸さず、無理矢理奪えるだけ奪って去っていったが、ヴァンジャンスだけは何故かその村に残ってしまった。そこの村人達も奪われたことに絶望する様子もなく、笑いながら、また木の実やうさぎなどを集め、何事もなかったように暮らし始めた。そして、なんとなくヴァンジャンスもその村で暮らし始めてしまったのだった。

 老人達は、口では「いつ死んでもいい」と、言っているが、生きることへの絶望はしていなかった。生きる知恵を持ち、生きることを楽しんでいた。そして、まだ若かったヴァンジャンスは盗賊の一味だったにも関わらず、老人達は、儂らの孫と言ってヴァンジャンスをなによりも可愛がった。

 その経験は前世から今まで味わったことのない感覚だった。今まで、生きることに絶望し、世界に八つ当たりし、恨んでいたヴァンジャンスにとって、老人達との質素で豊かではないはずの暮らしが、何よりも豊かに幸福に思えた。ヴァンジャンスは、老人達に聞かれ、今までの人生や、前世のことも話したが老人達は頷くばかりだった。そして、

「そうか、そうか」

 と言って、抱きしめてくれた。同情されるのかとも思っていたが、何故かそれだけの言葉と行動にヴァンジャンスは、ひどく安心し、涙が勝手に流れていた。そしてその時、気付いたのだった。生きる希望もなく、自分も、周りからも、存在自体を否定され続けていたヴァンジャンスにとって、何よりも欲しかったものは、自身を認め、受け止めてくれる存在だったのだと。

 同情や惰性とは違う、ただそこにいる、ヴァンジャンスという存在を、ただ認めて欲しかったのだと。それからのヴァンジャンスは、その老人達と、貧しかったが今までにないほどの幸せな日々を過ごせていた。

 そんな生活が5年近く続いた時、ヴァンジャンスの心から復讐や恨み、絶望という気持ちはほとんど無くなっていた。でも、それと同時に30人もいた老人達も、皆ほとんど寿命を迎え、残り僅かとなっていた。

 ヴァンジャンスは残った老人達から半ば追い出されるように、街に行けと言われた。残りの老人も死期が近いと感じていたのだろう。これからの人生を楽しめと言われたが、ヴァンジャンスにとっては、ここでの生活は今までの人生の中で最高だった。

 だが、老人の最後の願いと希望により、渋々ながら村に出ることにした。何をするでもなく、とりあえず老人に言われた通り、天職を聞きに行った。天職は《マシンエンジニア》だった。同時にユニークスキル《マテリアライズ魔法》も持っていることを知った。

 天職は久しぶりの聞いた前世の言葉だった。それは前世での自分の職業。神官も混乱していたが、ヴァンジャンスは逆に安心していた。とりあえず、老人達の聞いた話を頼りにトキオ文明国に行きつき、天職を活かせる場所を探した。魔法も道中試しながら行ったが、前世の記憶も重なりヴァンジャンスには使いやすい魔法だった。

 それからいつのまにかSSランクの冒険者になり、ヒイロに出会った。そんな昔のことを思い出していたら、また頭痛がしてきた。そして、言葉も聞こえた。

「……思い出せ……復讐を……」

 ヴァンジャンスの中で忘れていた気持ちが少しずつ溢れてきていた。老人達との記憶で書き換えられていた気持ちが……。そこから激しい頭痛とともにヴァンジャンスの記憶と意識は途切れたのだった……。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした

渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞! 2024/02/21(水)1巻発売! 2024/07/22(月)2巻発売!(コミカライズ企画進行中発表!) 2024/12/16(月)3巻発売! 2025/04/14(月)4巻発売! 応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!! 刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました! 旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』 ===== 車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。 そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。 女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。 それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。 ※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

処理中です...