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第六章〜魔神誕生〜
第95話 〜調査という名のピクニック!?〜
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イバール国のギルド本部に戻ったロイとイスカリオテは、ギルドマスターのナットに、魔神誕生の報告をする。
「ご苦労だったなロイ。それで何があったのか詳しく教えてもらえるか?」
「……はい。魔神と思われるもの……アスタロトと名乗る存在と遭遇したました。場所は……ナタリ渓谷とジョーバン街道の中間地点になる森の奥です。」
ロイは悔しさを滲ませながらナットに自分達に起きたことを説明する。イスカリオテはそのロイの気持ちを察しながら、補足を付け足していく。
「その場には、その魔神と思われる存在が召喚したドラゴンだけでなく、さらにSSSランクのデーモンキングも複数出現しました。」
「デーモンキングが!?」
「はい、黒い霧が一ヶ所に集まったかと思うと、そこにデーモンキングが現れ、さらに同じように2体のデーモンキングが出現しました」
「3体だと!?ドラゴンとデーモンキングだけでも魔王レベルの案件じゃないか!!」
「はい……それだけなら、まだ良かったのですが……そのアスタロトという魔神……はっきり言って、今の僕には勝てるイメージが湧きませんでした……」
「そ、それほどなのか……」
そのロイの言葉が信じられないナットは、確認するかのように目線をロイからイスカリオテに移す。イスカリオテは、そのナットの視線に気付き、黙って頷く。
「魔神……やはり復活してしまったのか……それも勇者と賢者の2人が、揃って勝てるイメージが湧かないほどの……」
「あの強さは桁違いです……。それにもしかしたら、デーモンキングも他の魔神の手によって生まれたかも知れません。現にアスタロトという魔神は僕たちの目の前で、デーモンキングと同等以上の黒いドラゴンが2匹召喚しました」
「デーモンキングと同等以上の存在を召喚できる……」
「私たちも少しでも情報を集めたかったのですが、SSSランクの魔物5体を相手に精一杯で、立ち去る魔神を追うことも出来ず……なんとかその5体の魔物を倒しててきたところです。」
「本当にご苦労だった。何より無事に帰ってきてくれたことが不幸中の幸いだ。そこでSSSランク5体と魔神の両方と戦って、万が一、どちらか片方でも戻れなかった時の方が絶望だった。とりあえず世界各国にもこの情報を知らせるとともに、冒険者達には高ランクの魔物が増えていることを伝え、気をつけさせなければな」
「はい、特にAランク以下の冒険者は極力、森の奥など未開の地には行かせないようにしないと、下手したらパーティーごと全滅してしまいます」
「魔王の恐怖が消えたと言うのに、戦争、魔神とこの世界はどうなってしまうんだ……」
こうして、ロイ達の情報が世界に広まり、戦争の傷が癒えきらないまま新たな恐怖が世界を震撼させる。そして、ただちにSSランク冒険者とSランク冒険者は、パーティーあるいは2人以上での魔神調査の依頼が出された。ただし、見つけた場合には戦わず、逃げることを最優先とすること、魔神に対してはSS冒険者5人と勇者ロイ、賢者イスカリオテの7人が必ず一緒に戦うことが約束となった。
この日はヒイロとヴァンジャンス、そして《森の家》パーティーで、その魔神調査を行っていた。場所は前回ロイ達が、デーモンキングと戦った場所の周辺である。
ヒイロ達6人は、ヴァンジャンスが魔法で具現化した、《コンボイ》と言われる武装トラックで、森の中を移動していた。ヴァンジャンスが操縦し、助手席にヒイロ、後ろの荷台にパーティーの4人が乗る。森の中を無理矢理走るトラックに揺られ、ウルルとアルトは荷台の乗り物酔いに苦しんでいた。その本体に全然平気なエイスとイルミが興味津々で、ヴァンジャンスに質問攻めしていた。
「ヴァンジャンスさんて、ヒイロ兄より年上なんですよね?ヒイロ兄の方が年上のような態度を取るから、いまいちよくわからないっす」
「俺は自分の正確な年齢はわからんが、多分20代後半の歳ぐらいだ。たんにコイツが生意気なだけだ」
「ん……?なんだエイス!おれに文句があるのか?」
「えっ!?いや、べつに……ただなんか、仲良いなって思っただけでーす」
ヒイロに睨みつけられたエイスは、さりげなく景色を見るふりをしながらアルトの後ろに隠れる。アルトはそんなエイスの行動に構う余裕がなく、今にも吐きそうな顔をしている。今度はイルミが興味津々な様子でヴァンジャンスに話しかける。
「ねぇ、ヴァンジャンスさん!この乗り物はヴァンジャンスの魔法で創造した物でしょ!?そのヴァンジャンスさんの具現化魔法《マテリアライズマジック》って、言ってみればヒイロ兄と同じユニークスキルなんですよね?」
「ん……あぁ、俺は小さい頃からこういうものが好きでな。俺の魔法は具体的なイメージがあれば、生物以外ならそのまま魔法で具現化できるようだ。ただ俺は、コイツのように属性魔法というものは使えないから、なんらかの加護とかユニークスキルということなのだろう」
「いいなぁー、ユニークスキル!ん、でも……小さい頃にこんな乗り物って、トキオ文明国でもわりと最近じゃ……ヴァンジャンスさんはトキオ文明国の中でも最先端な所にいたんですか??」
ヒイロが前世の記憶をさりげなく話してしまったヴァンジャンスを見て、ベロを出しながら小声でバカにする。
「バーカバーカ」
ヴァンジャンスはヒイロへの怒りを隠しながら適当に誤魔化すように嘘を並べる。だが、それがイルミ達にとって意外にも喋ってくれるヴァンジャンスに、さらに興味を示し、イルミとエイスはさらに質問を繰り返す。
「じゃぁ、ヴァンジャンスさんて奥さんいるんですか?」
「ヴァンジャンスさんて、ヒイロ兄より強いんですか?」
だんだん鬱陶しくなってきたヴァンジャンスは、あからさまに不機嫌となり、ヒイロに怒りの矛先を向ける。
「……おいヒイロ、いい加減コイツらうるさいぞ!」
「ハハハッ、興味を持たれていいんじゃないの?」
そんなやりとりをしながら、しばらくそのまま進むヒイロ達だったが、目的地周辺に近くなったにも関わらず、特別異変を見つけることができずにいた。
「それにしてもヒイロ兄、魔神とか言うやつの気配とか全然感じられないね」
周りを見渡しながら、イルミがヒイロに話しかける。ヴァンジャンスもまた周囲を警戒しながら、最近感じていた疑問をヒイロにぶつける。
「おいヒイロ、結局魔神の目的はなんだと思う?」
「俺もそれを疑問に思っていた。魔王達も自身の目的とと言うよりも、このシャングリラと言う世界のシステムの一部のような役割だった。そして、今回は最終的に魔神誕生の犠牲になるような形でな。それによって生まれた魔神は、やはりこの世界のシステムの一部で《運命の神判》が魔神の存在そのものなのか……」
「その魔神……ロイとイスカリオテが勇者と賢者と知りながら、戦おうとせず見逃したんだよな?」
「あぁ。それに魔神は3体のはず、残りの2体の復活を待ち、悪神というもう一つの存在とともに、善神を倒そうとしているのか」
「ヒイロ兄、その悪神と善神て本当にいるの?」
「う~ん、魔神も悪神の一つと数えるなら、善神にもいくつか種類がいるのかもしれない。それなら信じられなくもない」
「俺達の加護がそれから来ているのだとしたら、俺らがその善神の代わりとして戦うことが使命なのかもしれんが……」
「確かにヒイロ兄とヴァンジャンスさんの強さはそうかもしれないわね!イスカリオテくんとかロイくんの天職も言ってみれば神様の特別な加護だもんね」
「ひ、ヒイロ兄……オレもウルルももう限界だ……」
「わ~っ、あ、アルト兄!?ウルルも!?やばいヴァンジャンスさん止めて、2人とも顔が死んでる!!」
「うっぷ……」
「わっ、あ、アルト!!ダメだ!!こっちに顔を向けるな!!そっち向け!!」
「わ、バカ、運転手に顔を向ける奴がいるか!?後ろだ、後ろ向け~!!」
混乱した武装トラックはなんとか森を抜け、少し広い草原で止まる。ヒイロは2人にとりあえず状態回復の魔法をかけながら2人の背中をさすり、世話をする。
「うえ~ん、私もうお嫁さんに行けないよ~」
「お、オレもお婿さんに行けない~」
「あんたら……たかが車酔いで……」
「ハッハッハ、それにしてもヒイロ兄はともかくヴァンジャンスさんも焦ったりするんですね!ギャップがおもしろ過ぎる!」
「お前、エイスと言ったな……ハイウェッポンズ・トランスフォーム・コンボイ……スタンバイ……ファイア」
全員が降りて無人だった武装トラック《コンボイ》がヴァンジャンスの魔法により、人型のロボットに変形する。そして、その人型となった《コンボイ》が自動小銃を構えたと思うと、いきなりエイスを狙い、銃弾を発射する。
ダダダダッダダダダッ
「いてっ!?いてててっ!!な、なんだ??いて!いてて!!ご、ごめんなさ~い」
威力がかなり抑えられているのか、血が出ることは無さそうだが、エイスはかなり痛そうに逃げ回り、ヒイロに助けを求める。ヒイロは、そんなエイスを庇うことなく、その様子を見ながら昔よく見た映画を思い出していた。
(うわー懐かしい、まんま◯ランス◯ォーマーじゃん。懐かしい~)
「さっ、バカはほっといて、ヒイロ兄!お腹減ったし、そろそろご飯食べよ~」
イルミが状態が回復してきたアルトとウルルを寝かせながら、自身のマジックバックから、食事セットを出し、準備を始める。ヒイロもそのイルミの言葉に頷きながら、何かを思い出したように、自身のストレージボックスの中を探し始める。
「なぁヴァンジャンス、お前、昔はどこら辺に住んでたんだ?」
「……福岡だ」
「おっ、運がいいですな~」
にやにやしながら、ヒイロは得意げ顔で、何かを準備し始める。
「なんだお前、気持ち悪いぞ」
「まぁまぁ、エイスをいじめるのもそれぐらいにしといて、楽しみにしときなさい!」
そこに体調が完全に回復したのか、アルトとウルルが合流する。
「あ、ヒイロ兄!!それは!?もしかして完成したのか!?」
「あぁ、アルトよ、苦節8年……このシャングリラの西から東へ世界各国をかけまわり、食材、調味料を探し出し、ついに完成した至高の逸品……」
「えっ、なになに!?」
元気になったウルルが興味津々にヒイロに近づこうとする。だが、そんなウルルをアルトが首を振りながら、静止し、イルミが準備した食事セットの椅子に皆を座らせる。
「ウルル、黙って待てばいいんだ!」
アルトの問答無用の態度にヴァンジャンスさえも無言のまま椅子に座る。
そして、ヒイロはぶつぶつとつぶやきながら、ストレージボックスから、カウンターキッチンに調理道具、中身が入った4つの大きい寸胴と空の寸胴を一つを出した。そして空の寸胴に大量の水を入れ、沸騰させ始める。
「お、おい、ヒイロ!お、お前……まさか……!?」
「おっ、さすがこれだけで気付いたか?ヴァンジャンス君!」
「な、何味が……あるんだ?」
「ヘイ、お客さん!古今東西、北は札幌味噌に函館塩から関東の醤油、博多豚骨まで、どのスープも三日三晩寝ずに煮込んで作りあげた自慢のスープだよ。手作り焼豚に味玉、キクラゲ、なんなら流行りの魚介つけ麺や○ろう系までありやすよ!」
急にキャラが変わった変なヒイロにつっ込むこともなく、そのキャラ変に乗っかるヴァンジャンス。
「ほう……なら大将、博多豚骨ラーメンにしてもらおうか?味にはちょっとうるさいぞ」
「わっかりやした!もちろん紅生姜からニンニクまでありやすよ!ちなみに麺の硬さはどうしやす?ウチでは粉落とし~ずんだれまでありやすが」
「俺はバリカタ、他の奴らは……硬めでいいだろう」
「ご注文、お受けいたしやーす!」
「あの…えーと…ヒイロ兄?だれ?」
いつのまにか、頭に布を巻き、腰エプロンを巻いたヒイロはラーメン屋になりきっていた。
「ヴァンジャンスさん?ラーメン?」
「いいから、お前達座って待っていろ」
アルト以外の3人が混乱する中、ヴァンジャンスとアルトは黙って腕を組み、ヒイロの料理が終わるのを待つ。
ヒイロが湯切りに極細ストレート麺を入れ、沸騰した寸胴にさっと入れていく。
「そうだぞ、ヴァンジャンスさんの言う通りにしろ」
「アルト兄も……ラーメンて何?」
アルトに変わって同じくキャラ変しているヴァンジャンスが答える。
「ラーメン……それは多くの日本人が生涯をかけて研究してきた至高の逸品……」
「ニホンジン?」
その間にもヒイロは手早くどんぶりを並べ、スープを入れていく。
「あぁ、俺も一度、ヒイロ兄に試作を食べさせてもらったが……気をつけろ!油断すると病みつきになってしまうぞ!!」
ヒイロが音速の湯切りをすると、目にも止まらぬ速さでトッピングなど、ラーメンを仕上げていく。
「ヘイ、お待たせしやした!ボア骨ラーメンの出来上がりでございやす。麺が伸びる前に食べておくんなせい!」
いつのまにかヴァンジャンス達の前には箸とレンゲまで用意され、豚骨ラーメンが目の前に出てくる。その食欲をそそる食べ物に皆がうっとりとしていた。そして、静かに食べ始める。
「……ん!?何これ……すごく美味しい!!」
「なんて濃厚な味なんだ……」
「この細い食べ物もスープが絡んですごく美味しい」
「そうだろう!オレも試作を食べた時の瞬間は今でも忘れられない……そしてこれはそれ以上だ!!」
「……お前……この味、絶対素人には出せない……ラーメン屋だったのか?」
「いや、れっきとした保育士さ!ただ休みの日は全国を食べ歩き、自身でも鶏ガラ、豚骨から自作するほどのラーメンオタクだったがな!ふん……悲しいことでもあるが、アラフォー独身の料理の腕前……舐めるなよ!」
「時々、ヒイロ兄とヴァンジャンスさんて、訳の分からない話をするわよね」
「そうね!……でも、本当にこれ美味しい!」
「ヒイロ兄、おかわり!」
「エイスよ、おかわりではなく、替え玉といえ!そうだな……大将、オレにはハリガネ、コイツらにはバリカタで替え玉頼む」
「わっかりやしたー!」
「お前達……次はここにあるトッピングというもの入れて食べてみろ……うまいぞ」
「えっ、この真っ赤なやつとか黒いやつを入れるの!?」
「何これ、少し臭いが強い!」
「紅生姜にキクラゲ、そしてニンニク……豚骨には最高の組み合わせだ」
こうして、ヒイロ達は魔神調査という名のピクニック!?を楽しむのであった。ちなみに午後は修行と称し、ヒイロとヴァンジャンスにしごかれる森の家パーティーであった。
「ご苦労だったなロイ。それで何があったのか詳しく教えてもらえるか?」
「……はい。魔神と思われるもの……アスタロトと名乗る存在と遭遇したました。場所は……ナタリ渓谷とジョーバン街道の中間地点になる森の奥です。」
ロイは悔しさを滲ませながらナットに自分達に起きたことを説明する。イスカリオテはそのロイの気持ちを察しながら、補足を付け足していく。
「その場には、その魔神と思われる存在が召喚したドラゴンだけでなく、さらにSSSランクのデーモンキングも複数出現しました。」
「デーモンキングが!?」
「はい、黒い霧が一ヶ所に集まったかと思うと、そこにデーモンキングが現れ、さらに同じように2体のデーモンキングが出現しました」
「3体だと!?ドラゴンとデーモンキングだけでも魔王レベルの案件じゃないか!!」
「はい……それだけなら、まだ良かったのですが……そのアスタロトという魔神……はっきり言って、今の僕には勝てるイメージが湧きませんでした……」
「そ、それほどなのか……」
そのロイの言葉が信じられないナットは、確認するかのように目線をロイからイスカリオテに移す。イスカリオテは、そのナットの視線に気付き、黙って頷く。
「魔神……やはり復活してしまったのか……それも勇者と賢者の2人が、揃って勝てるイメージが湧かないほどの……」
「あの強さは桁違いです……。それにもしかしたら、デーモンキングも他の魔神の手によって生まれたかも知れません。現にアスタロトという魔神は僕たちの目の前で、デーモンキングと同等以上の黒いドラゴンが2匹召喚しました」
「デーモンキングと同等以上の存在を召喚できる……」
「私たちも少しでも情報を集めたかったのですが、SSSランクの魔物5体を相手に精一杯で、立ち去る魔神を追うことも出来ず……なんとかその5体の魔物を倒しててきたところです。」
「本当にご苦労だった。何より無事に帰ってきてくれたことが不幸中の幸いだ。そこでSSSランク5体と魔神の両方と戦って、万が一、どちらか片方でも戻れなかった時の方が絶望だった。とりあえず世界各国にもこの情報を知らせるとともに、冒険者達には高ランクの魔物が増えていることを伝え、気をつけさせなければな」
「はい、特にAランク以下の冒険者は極力、森の奥など未開の地には行かせないようにしないと、下手したらパーティーごと全滅してしまいます」
「魔王の恐怖が消えたと言うのに、戦争、魔神とこの世界はどうなってしまうんだ……」
こうして、ロイ達の情報が世界に広まり、戦争の傷が癒えきらないまま新たな恐怖が世界を震撼させる。そして、ただちにSSランク冒険者とSランク冒険者は、パーティーあるいは2人以上での魔神調査の依頼が出された。ただし、見つけた場合には戦わず、逃げることを最優先とすること、魔神に対してはSS冒険者5人と勇者ロイ、賢者イスカリオテの7人が必ず一緒に戦うことが約束となった。
この日はヒイロとヴァンジャンス、そして《森の家》パーティーで、その魔神調査を行っていた。場所は前回ロイ達が、デーモンキングと戦った場所の周辺である。
ヒイロ達6人は、ヴァンジャンスが魔法で具現化した、《コンボイ》と言われる武装トラックで、森の中を移動していた。ヴァンジャンスが操縦し、助手席にヒイロ、後ろの荷台にパーティーの4人が乗る。森の中を無理矢理走るトラックに揺られ、ウルルとアルトは荷台の乗り物酔いに苦しんでいた。その本体に全然平気なエイスとイルミが興味津々で、ヴァンジャンスに質問攻めしていた。
「ヴァンジャンスさんて、ヒイロ兄より年上なんですよね?ヒイロ兄の方が年上のような態度を取るから、いまいちよくわからないっす」
「俺は自分の正確な年齢はわからんが、多分20代後半の歳ぐらいだ。たんにコイツが生意気なだけだ」
「ん……?なんだエイス!おれに文句があるのか?」
「えっ!?いや、べつに……ただなんか、仲良いなって思っただけでーす」
ヒイロに睨みつけられたエイスは、さりげなく景色を見るふりをしながらアルトの後ろに隠れる。アルトはそんなエイスの行動に構う余裕がなく、今にも吐きそうな顔をしている。今度はイルミが興味津々な様子でヴァンジャンスに話しかける。
「ねぇ、ヴァンジャンスさん!この乗り物はヴァンジャンスの魔法で創造した物でしょ!?そのヴァンジャンスさんの具現化魔法《マテリアライズマジック》って、言ってみればヒイロ兄と同じユニークスキルなんですよね?」
「ん……あぁ、俺は小さい頃からこういうものが好きでな。俺の魔法は具体的なイメージがあれば、生物以外ならそのまま魔法で具現化できるようだ。ただ俺は、コイツのように属性魔法というものは使えないから、なんらかの加護とかユニークスキルということなのだろう」
「いいなぁー、ユニークスキル!ん、でも……小さい頃にこんな乗り物って、トキオ文明国でもわりと最近じゃ……ヴァンジャンスさんはトキオ文明国の中でも最先端な所にいたんですか??」
ヒイロが前世の記憶をさりげなく話してしまったヴァンジャンスを見て、ベロを出しながら小声でバカにする。
「バーカバーカ」
ヴァンジャンスはヒイロへの怒りを隠しながら適当に誤魔化すように嘘を並べる。だが、それがイルミ達にとって意外にも喋ってくれるヴァンジャンスに、さらに興味を示し、イルミとエイスはさらに質問を繰り返す。
「じゃぁ、ヴァンジャンスさんて奥さんいるんですか?」
「ヴァンジャンスさんて、ヒイロ兄より強いんですか?」
だんだん鬱陶しくなってきたヴァンジャンスは、あからさまに不機嫌となり、ヒイロに怒りの矛先を向ける。
「……おいヒイロ、いい加減コイツらうるさいぞ!」
「ハハハッ、興味を持たれていいんじゃないの?」
そんなやりとりをしながら、しばらくそのまま進むヒイロ達だったが、目的地周辺に近くなったにも関わらず、特別異変を見つけることができずにいた。
「それにしてもヒイロ兄、魔神とか言うやつの気配とか全然感じられないね」
周りを見渡しながら、イルミがヒイロに話しかける。ヴァンジャンスもまた周囲を警戒しながら、最近感じていた疑問をヒイロにぶつける。
「おいヒイロ、結局魔神の目的はなんだと思う?」
「俺もそれを疑問に思っていた。魔王達も自身の目的とと言うよりも、このシャングリラと言う世界のシステムの一部のような役割だった。そして、今回は最終的に魔神誕生の犠牲になるような形でな。それによって生まれた魔神は、やはりこの世界のシステムの一部で《運命の神判》が魔神の存在そのものなのか……」
「その魔神……ロイとイスカリオテが勇者と賢者と知りながら、戦おうとせず見逃したんだよな?」
「あぁ。それに魔神は3体のはず、残りの2体の復活を待ち、悪神というもう一つの存在とともに、善神を倒そうとしているのか」
「ヒイロ兄、その悪神と善神て本当にいるの?」
「う~ん、魔神も悪神の一つと数えるなら、善神にもいくつか種類がいるのかもしれない。それなら信じられなくもない」
「俺達の加護がそれから来ているのだとしたら、俺らがその善神の代わりとして戦うことが使命なのかもしれんが……」
「確かにヒイロ兄とヴァンジャンスさんの強さはそうかもしれないわね!イスカリオテくんとかロイくんの天職も言ってみれば神様の特別な加護だもんね」
「ひ、ヒイロ兄……オレもウルルももう限界だ……」
「わ~っ、あ、アルト兄!?ウルルも!?やばいヴァンジャンスさん止めて、2人とも顔が死んでる!!」
「うっぷ……」
「わっ、あ、アルト!!ダメだ!!こっちに顔を向けるな!!そっち向け!!」
「わ、バカ、運転手に顔を向ける奴がいるか!?後ろだ、後ろ向け~!!」
混乱した武装トラックはなんとか森を抜け、少し広い草原で止まる。ヒイロは2人にとりあえず状態回復の魔法をかけながら2人の背中をさすり、世話をする。
「うえ~ん、私もうお嫁さんに行けないよ~」
「お、オレもお婿さんに行けない~」
「あんたら……たかが車酔いで……」
「ハッハッハ、それにしてもヒイロ兄はともかくヴァンジャンスさんも焦ったりするんですね!ギャップがおもしろ過ぎる!」
「お前、エイスと言ったな……ハイウェッポンズ・トランスフォーム・コンボイ……スタンバイ……ファイア」
全員が降りて無人だった武装トラック《コンボイ》がヴァンジャンスの魔法により、人型のロボットに変形する。そして、その人型となった《コンボイ》が自動小銃を構えたと思うと、いきなりエイスを狙い、銃弾を発射する。
ダダダダッダダダダッ
「いてっ!?いてててっ!!な、なんだ??いて!いてて!!ご、ごめんなさ~い」
威力がかなり抑えられているのか、血が出ることは無さそうだが、エイスはかなり痛そうに逃げ回り、ヒイロに助けを求める。ヒイロは、そんなエイスを庇うことなく、その様子を見ながら昔よく見た映画を思い出していた。
(うわー懐かしい、まんま◯ランス◯ォーマーじゃん。懐かしい~)
「さっ、バカはほっといて、ヒイロ兄!お腹減ったし、そろそろご飯食べよ~」
イルミが状態が回復してきたアルトとウルルを寝かせながら、自身のマジックバックから、食事セットを出し、準備を始める。ヒイロもそのイルミの言葉に頷きながら、何かを思い出したように、自身のストレージボックスの中を探し始める。
「なぁヴァンジャンス、お前、昔はどこら辺に住んでたんだ?」
「……福岡だ」
「おっ、運がいいですな~」
にやにやしながら、ヒイロは得意げ顔で、何かを準備し始める。
「なんだお前、気持ち悪いぞ」
「まぁまぁ、エイスをいじめるのもそれぐらいにしといて、楽しみにしときなさい!」
そこに体調が完全に回復したのか、アルトとウルルが合流する。
「あ、ヒイロ兄!!それは!?もしかして完成したのか!?」
「あぁ、アルトよ、苦節8年……このシャングリラの西から東へ世界各国をかけまわり、食材、調味料を探し出し、ついに完成した至高の逸品……」
「えっ、なになに!?」
元気になったウルルが興味津々にヒイロに近づこうとする。だが、そんなウルルをアルトが首を振りながら、静止し、イルミが準備した食事セットの椅子に皆を座らせる。
「ウルル、黙って待てばいいんだ!」
アルトの問答無用の態度にヴァンジャンスさえも無言のまま椅子に座る。
そして、ヒイロはぶつぶつとつぶやきながら、ストレージボックスから、カウンターキッチンに調理道具、中身が入った4つの大きい寸胴と空の寸胴を一つを出した。そして空の寸胴に大量の水を入れ、沸騰させ始める。
「お、おい、ヒイロ!お、お前……まさか……!?」
「おっ、さすがこれだけで気付いたか?ヴァンジャンス君!」
「な、何味が……あるんだ?」
「ヘイ、お客さん!古今東西、北は札幌味噌に函館塩から関東の醤油、博多豚骨まで、どのスープも三日三晩寝ずに煮込んで作りあげた自慢のスープだよ。手作り焼豚に味玉、キクラゲ、なんなら流行りの魚介つけ麺や○ろう系までありやすよ!」
急にキャラが変わった変なヒイロにつっ込むこともなく、そのキャラ変に乗っかるヴァンジャンス。
「ほう……なら大将、博多豚骨ラーメンにしてもらおうか?味にはちょっとうるさいぞ」
「わっかりやした!もちろん紅生姜からニンニクまでありやすよ!ちなみに麺の硬さはどうしやす?ウチでは粉落とし~ずんだれまでありやすが」
「俺はバリカタ、他の奴らは……硬めでいいだろう」
「ご注文、お受けいたしやーす!」
「あの…えーと…ヒイロ兄?だれ?」
いつのまにか、頭に布を巻き、腰エプロンを巻いたヒイロはラーメン屋になりきっていた。
「ヴァンジャンスさん?ラーメン?」
「いいから、お前達座って待っていろ」
アルト以外の3人が混乱する中、ヴァンジャンスとアルトは黙って腕を組み、ヒイロの料理が終わるのを待つ。
ヒイロが湯切りに極細ストレート麺を入れ、沸騰した寸胴にさっと入れていく。
「そうだぞ、ヴァンジャンスさんの言う通りにしろ」
「アルト兄も……ラーメンて何?」
アルトに変わって同じくキャラ変しているヴァンジャンスが答える。
「ラーメン……それは多くの日本人が生涯をかけて研究してきた至高の逸品……」
「ニホンジン?」
その間にもヒイロは手早くどんぶりを並べ、スープを入れていく。
「あぁ、俺も一度、ヒイロ兄に試作を食べさせてもらったが……気をつけろ!油断すると病みつきになってしまうぞ!!」
ヒイロが音速の湯切りをすると、目にも止まらぬ速さでトッピングなど、ラーメンを仕上げていく。
「ヘイ、お待たせしやした!ボア骨ラーメンの出来上がりでございやす。麺が伸びる前に食べておくんなせい!」
いつのまにかヴァンジャンス達の前には箸とレンゲまで用意され、豚骨ラーメンが目の前に出てくる。その食欲をそそる食べ物に皆がうっとりとしていた。そして、静かに食べ始める。
「……ん!?何これ……すごく美味しい!!」
「なんて濃厚な味なんだ……」
「この細い食べ物もスープが絡んですごく美味しい」
「そうだろう!オレも試作を食べた時の瞬間は今でも忘れられない……そしてこれはそれ以上だ!!」
「……お前……この味、絶対素人には出せない……ラーメン屋だったのか?」
「いや、れっきとした保育士さ!ただ休みの日は全国を食べ歩き、自身でも鶏ガラ、豚骨から自作するほどのラーメンオタクだったがな!ふん……悲しいことでもあるが、アラフォー独身の料理の腕前……舐めるなよ!」
「時々、ヒイロ兄とヴァンジャンスさんて、訳の分からない話をするわよね」
「そうね!……でも、本当にこれ美味しい!」
「ヒイロ兄、おかわり!」
「エイスよ、おかわりではなく、替え玉といえ!そうだな……大将、オレにはハリガネ、コイツらにはバリカタで替え玉頼む」
「わっかりやしたー!」
「お前達……次はここにあるトッピングというもの入れて食べてみろ……うまいぞ」
「えっ、この真っ赤なやつとか黒いやつを入れるの!?」
「何これ、少し臭いが強い!」
「紅生姜にキクラゲ、そしてニンニク……豚骨には最高の組み合わせだ」
こうして、ヒイロ達は魔神調査という名のピクニック!?を楽しむのであった。ちなみに午後は修行と称し、ヒイロとヴァンジャンスにしごかれる森の家パーティーであった。
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2025/04/14(月)4巻発売!
応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!!
刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました!
旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』
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車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。
そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。
女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。
それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。
※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
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農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
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【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
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