０(ゼロ)同士の恋愛 ほんとは愛されたい。【完結】

7 嬉しいけど

「ゼロは、星野と言うのね。」

「あーすみません。」

「いいのよ。名前を教えることに深い意味があるとは、素敵ね」

「ははは」
(ごめんなさい。本で読んだのを参考にしました。)

「あの場で、傷物と言ったのは、何故？みんな勘違いしているわよ。怪我なんて傷物ではないわよ。」

「お腹に傷があるのは、本当のことだし。それに、俺は、本当に傷物だから。経験あるから。」

「そんなの黙っていれはわからないのに。」

「母上様、分かるよ。だから、言った。俺は、綺麗な人じゃない、汚れてる。向こうでは、泥をすすって生きてきた。だから、無理。」

「そんなの関係ないわよ。ディランは、本気よ。」

「あー名前出しちゃダメ。反則。」

「だって」

「本気だから無理なんだ。」

「ディランは、気にしないわよ」

「分かるよ。でも、無理だ。俺なんかより良い人いっぱいいる。」

「俺は、無理なんだ。必要とされ、好意を向けられるのは、うれしいけど、怖いんだ。ごめん。」

「そう。なら強くは言えないわね。でも覚えておいて、どんなあなたでも、私は好きよ。どんな過去だとしてもそれがあるから今ここにいるんだもの。」

「ありがとう。」


　母上様ありがとう。ディランさんが俺のこと好きなのは、分かってる。俺は、養護施設にいたから分かるんだ。人の気持ちを読んで嫌われないようにしていたから。ディランさんは目が訴えてくるし、毎日おやすみを言ったあとに、様子を見に来ているのも知っている。
　嫌いじゃない。嬉しいさ。でも、知られて嫌われたらと思うともう無理だ。俺は、汚れきっている。汚いこともして生きてきたから。
　
　神様、なんで転移にしたんだよ。必要とされたい、愛されたいって願ったけど、この体では、無理だよ。せめて、転生なら体は綺麗なままだったのに。

　


「さぁ、帰ろう。」

「父上様、俺、断って大丈夫だった？」

「大丈夫だよ。でも、かなり残念がっていたよ。」

「なら良かったけど。」

「屋敷に帰ってからこれからのことを話そう」

「うん。」




「はぁ疲れたわ」

「スコットお茶の準備を」

「伯爵様」

「なんだ、父上様じゃないのか？」

「俺、いや、私をこの家で使用人として雇ってもらえませんか？働かないと生きていけないけど、まだ、外で働くのは、怖いし。」

「そんな必要はない」

「でも」

「さっき、王と隣国での落ち人の対応などを聞いてきた。落ち人は、幸福を運ぶ人とも呼ばれていて、とても大切にされているらしい。だから、自分の家だと思って過ごしてくれ。」

「俺は、幸福なんて運べないし、出来ない。」

「うちが後見人だから、名前ものホシノ・バードナーで登録したから家族だ。家族が増える幸福を早速運んで来てくれたぞ。」

「いいの、簡単にバードナーの姓与えて。」

「一人増えたぐらいで傾く伯爵家ではない」

「うっうっ　グス　ありがとうございます」

「ほら泣かない、かわいい顔が台無しだよ。」

「うっ、うっ、ひっく　ひっく」

「お茶飲もう。お菓子美味しいぞ」

「ひっく、うん、ありがとう。」