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26  デート

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 この世界に来て、一人暮らしをしていた部屋と商会と近所のお店、伯爵家しか行ったことがなかった。あとお城。

 今日は、街の名所案内という名のデートだ。ディランさんも俺もデートは初めてだ。体の関係なら経験豊富だが付き合ったことがないからデートは初めて。朝から二人でソワソワしてしまい、ミランちゃんに笑われた。

 ミランちゃんが服をコーディネートしてくれた。白いシャツにグレーのチェック柄のズボンの黒いベスト。かなりお洒落な気がする。向こうでは金がなかったから、とにかく安い服、そして、汚れが目立たない色ばかりだった。白い服や高い服は緊張する。


「ゼロ。すごく可愛い。似合う」
 
「あ ありがとう。ディランさんも格好いいよ」

「ありがとう。ゼロに恥をかかせないようにミランダに服を見てもらった」

「いいでしょ。二人のコーディネートは、カップルコーディネートだよ。ディランお兄様の黒いズボンとゼロのベスト、グレーのチェックは、ベストとズボン。さすが私、完璧だね」

「ありがとう。なんかテレる」

「じゃあ、行ってくる」

「楽しんで来てね」

「うん。ありがとう、ミランちゃん」



「ゼロ、てってっ手を繋いでもいいか?」

「う うん」

 大きい手、指も長い。こんな風に手を繋いだのはいつぶりだろう。施設の小さい子たちは、ノーカンとしたらほぼないかも。手を繋ぐだけでも緊張するんだ。繋がっている感じがする。心がぽかぽかする。

「ゼロ、ごめん、手汗がすごくて」

「えっ、そんなことないよ。大きい手だと思って」

「そうか、ゼロは可愛いな」

 ゼロの手は、白くてスベスベしている。ほっそりとして指に小さな爪、手を繋ぐだけで緊張して手汗がヤバイ。意識がないときに繋いだ手と違う。手を繋ぐってこんなに幸せなんだな。

「手を繋ぐってなんか幸せだね」

「俺もそう思った」

「そうなんだ。同じように感じてくれてうれしいかも」

「やばいな、可愛い過ぎて、おかしくなりそうだ」

「大丈夫。俺もおかしくなってるから」

「さあ、今日は、いっぱい街を案内するから」

「うん」



 街に行くとなんだか視線が痛い。

「ゼロすまん。俺がゼロと釣り合いがとれていないから見られているだ。美人と怪物だ」

 ディランさんがすまなそうに言うが、ディランさんは格好いいし怪物になんて思えない。

「ディランさん、俺はディランさんが格好いいと思うし、釣り合いがとれないのは俺だと思うよ。こんなに貧弱だし」

「そんなことはない。ゼロは美しい。注目の的だ。俺のせいで」

「俺はディランさんが好きだよ。だから気にしない。みんながディランさんの魅力に気が付かないでいてくれた方がいい。俺だけかディランさんの魅力を知っているってうれしい。ごめんね、ひどいやつで」

「いや、そんなことはない」

「さぁ、気にしないでデートしよ」



 どんなとこでも二人で見たり聞いたり、食べたりすることが楽しかった。デートってこんなに楽しいんだ。相手の喜ぶ顔が見れたり、同じ感情を共有したり、ドキドキしながら話すことも本当に楽しい。
 楽しい時間はあっという間に過ぎてしまった。またディランさんとデートしたいって思った。また誘ってくれるかなあ?ディランさんもデート楽しんでくれたかなあ?
 こんな俺が幸せを感じていいのか不安になる。でも、もう前を向くって決めたから。ディランさんといっぱい色々経験したい。


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