悪役令嬢になりました。

黒田悠月

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閑話② 走馬灯1 (カーライル・ネスト・ヘイシス)

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物心つく頃には、俺には母親といえる女性が二人いた。

一人は産みの母親。
一人は育ての親。

二歳を過ぎて少しだけ物事がわかるようになったあたり、それが覚えている最初の記憶たど思う。
とはいえ、まだようやく一人で立ち上がれるようになり、言葉も多少覚えた程度の頃。
それが正しく自身の記憶なのかも定かではなく、ぼんやりとした曖昧なものでしかない。

ただ、なんとなく記憶にあるのは広い毛足の長い絨毯の敷き詰められた部屋。

小さい子供ーー自身に合わせられて揃えられていたのだろう小さな椅子や積木細工にからくり細工。
柔らかな淡い色のソファに女性が座り、手に絵本を持っている。

その女性の記憶はいつも絵本を持っていたように思う。

いや、正確に言うとその頃のその女性は。

俺は彼女の膝に乗せられ、うとうとしながら読み聞かせられる物語を聞いている。

時おり彼女は細い指先で俺の髪をすき、頭のてっぺんに唇を落とす。
フワリと漂う甘い香りが、まだ幼子だった俺をいつも眠りに誘うようで、いつも物語の途中で眠ってしまう。

そうすると側で見守っていた乳母がやってきて眠る俺を受けとる。

半分夢の中に入った頭の隅。
半分以上閉じられた視界の中で、彼女が笑う。


その笑顔が胸の中で、別の女性と重なった。



4歳になり、自我もしっかりと芽生える頃には、俺には二人目の母親がいた。

父親である皇帝の妻の一人。

第三夫人であるその女性は兄の母親でもあった。

俺には兄と呼ぶべき人が二人いて、けれども俺が兄上と呼び慕うのは一人。

俺の母親が嫁いだ時、父親にはすでに二人の妻がいた。

と、いうか。
皇帝である父は同盟国であるグレンファリアを訪れた際に、侯爵令嬢であった母を見初め、婚姻を申し入れたらしい。
だがヘイシス皇国では皇帝位は皇国の氏族から。
そのような不文律があった。
つまり皇帝となるべき長子、皇太子はヘイシス皇国の氏族の血を継ぐ子であるべしというわけだ。

ヘイシス皇国は全部で12の氏族により成る。
そのためその結婚へは氏族より二つの条件が成された。

一つは氏族の女性から二人、妻をめとること。
もう一つは皇太子となるべき男子を氏族の妻との間に作ること。

父親だけでなく、グレンファリア側もその条件を受け入れたのは、理由がある。

一番の理由は侯爵令嬢ーー俺の母もまた父に惹かれていたこと。
本人がそれでもと、強そう望んだことだ。

それとその頃隣国との睨み合いが続いていたグレンファリアにとって、諜報に秀でたヘイシス皇国との繋がりを強固にすることは益があると判じられたため。

そのためヘイシス皇国皇帝はグレンファリアの侯爵令嬢と婚約をするとほぼ同時に氏族から二人の妻を取り、側室にした。
ほどなく一人が長子を産み、もう一人がしばらくして男子を一人、女子を一人産んだ。

二人目の男子を得てようやく母はヘイシス皇国の正妃となり、数年の時を経て俺を産んだ。


母が俺を産んでしばらくすると、グレンファリアは隣国を併合し国力を増していった。
もともと世界を救う聖女を輩出してきた国として教会と繋がりの強いグレンファリアの影響力は海を隔てたヘイシス皇国でも増し、その血を引く俺を皇太子としてはどうかという意見が少しずつ囁かれていく。

同時に俺の周りでは様々な出来事が起こり始めた。



ーーーーーーーーーーーーーーー

すみません!エリカがまだ出て来てませんが続きは明日必ず(;>_<;)

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