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ローウィル子爵領
その1
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前世で同じように死んで、二度目の過去でも同じことをする。
って学習能力ないのか?俺!
ゴボゴボと喉の奥に容赦なく冷たい水が流れ込んでくる。
これは10才になったばかりの冬。
小川で遊んでいた子供が足を滑らせて溺れていた。
この頃の俺は馬に一人で乗れるようになったばかりで、人目を盗んでは一人で馬を走らせて領内を回っていた。
10分ほども馬を走らせてちょっと疲れたなあ、と馬の足を緩めたその時だった。
すぐ側にあった小川で子供が溺れていたのだ。
俺は愚かにも「俺が助けねば!」とかいらん正義感を抱いてしまった。
俺も子供だったのに。
しかもデブでカナヅチの。
しかもちょっとアホな。
さて、どうなったか?
もちろん助けに飛び込んだ俺も溺れた。
と、いうか小川の水深は子供の膝丈程度、大体30センチほどしかなかったので、飛び込んだ勢いで額をしこたま強打し流血した。
後で冷静に考えてみれば、俺は誰か大人に助けを求めに行くべきだったのだ。
もしくは他の子供たちのように「大丈夫!落ち着けって!足着くからっ!」と声をかけてやるべきだった。
子供は足を滑らせてパニクってただけで、小川の流れは緩やかでただ落ち着いて立ち上がるだけで事なきを得られる状況だったのだから。実のところ。
実際俺の額から流れ出る血にびっくりした子供は慌てて立ち上がって「……あれ?」となり岸に上がるついでに窒息寸前だった俺のことも引きずって行ってくれた。
うちの領内の子供は幼い時から親の手伝いで力仕事をしてたりするから大抵年のわりに力持ちだ。
「これって領主様んとこのバカ息子?」
バカとはなんだバカとは!
失礼な!
仮にも領主様の息子だぞ!
五男で他とはちょっとばかり年の離れた恥かきっ子だけど。
……ってか俺の領民たちからの評価ってそうなの?
まあ、末っ子だし両親共に年をとってから出来た子供だし、兄たちも姉も皆すでに成人していて手がかからなかった分、俺はかなり甘やかされて育ってきた。
勉強しろとも言われないし、多少引きこもり気味でゴロゴロ食っちゃ寝してても怒られない。
家は一応貴族で小さくて辺境とは言え領主だから、贅沢とまではいかなくとも食べるに困った覚えはない。
その結果。
基本引きこもり気味でおデブでちょっとおバカな貴族のボンボンが出来上がるわけか。
最近は馬に乗れるようになったおかげで少しは外にも出るようになったけど、所詮10分で疲れる程度の体力。
ちょっとオタクで友達もろくにいない、
頭も良くはない。
……。
ま、言われても仕方ないな。
前回。
俺は溺れ死には免れたものの夜になって高熱を出しそれから三日間寝込んだ。
そして熱にうなされながら前世を思い出していった。
今回はそれを待つまでもなく川底で頭を強打した時点で前世のことも、生まれ変わった後のことも思い出している。
確かに俺は10才前後に戻ることを願ったが、何もこの時でなくていいと思う。
寝て起きたら、とかでいいと思う。
……若干誰かの悪意を感じる気がする。
最下位になってしまった神の嫌がらせとかだろうか。
だとしたらこれで最後にしてほしいものだ。
前世で俺は日本の中学生で、引きこもりのオタクだった。
中学には一年の夏過ぎ、アニメ〇トに美少女アニメのポスターを買いに行った帰りを同級生に見つかってからかわれるようになって以来行かなくなった。
最初はしつこく促していた母親も共働きで忙しく、疲れていたせいもあるのだろう半年を過ぎる頃にはあきらめてたまに声をかけるくらいになった。
俺には結構な進学校に通う兄がいて、親の期待や関心がそちらに傾いていたというのもあると思う。
そんな俺が家を出るのはゲームやマンガの新作が出た時だ。
その日も俺はゲームを買いに家を出た。
そしていつも向かう小さなゲームショップの帰り、川で溺れている子供を見つけて飛び込んだ。
泳げないどころかもう何年もまともに運動もしてないのに。
その後の記憶がないことから、俺はそのまま溺れて死んだのだろう。
引きこもりのクセに妙なところで正義感は強かったらしい。
そしてそのクセは生まれ変わっても変わっていなかったようだ。
気をつけよう。
妙な正義感は禁物だ。
〇〇〇〇〇〇
熱が下がったその日から、俺はさっそく朝夕のランニングを始めた。
朝は身体がまだ本調子とはいかなかったため、軽く屋敷の周りを一周だけ。
夕方は三周。
身体の調子をみながら少しずつ伸ばしていく予定だ。
前世でも、生まれ変わってからも、俺は引きこもりで、そのせいで大切なもの、色んなものをなくした。
前世ではなくしてるって意識はなかったけど、きっと知らずにたくさんのものをなくしていたのだと思う。
なので今回は引きこもりはやめる。
まずは、体力をつけることから始めていく。
ランニングの後は忘れずに念入りにストレッチをして身体を伸ばす。
……固い。
まあいい、いきなりはムリだ。
翌日は筋肉痛で朝夕一周ずつに予定変更した。
大丈夫。
止めずに続けるだけでもいい。
少しずつだ。
その後、一週間は朝夕一周ずつで過ぎた。
って学習能力ないのか?俺!
ゴボゴボと喉の奥に容赦なく冷たい水が流れ込んでくる。
これは10才になったばかりの冬。
小川で遊んでいた子供が足を滑らせて溺れていた。
この頃の俺は馬に一人で乗れるようになったばかりで、人目を盗んでは一人で馬を走らせて領内を回っていた。
10分ほども馬を走らせてちょっと疲れたなあ、と馬の足を緩めたその時だった。
すぐ側にあった小川で子供が溺れていたのだ。
俺は愚かにも「俺が助けねば!」とかいらん正義感を抱いてしまった。
俺も子供だったのに。
しかもデブでカナヅチの。
しかもちょっとアホな。
さて、どうなったか?
もちろん助けに飛び込んだ俺も溺れた。
と、いうか小川の水深は子供の膝丈程度、大体30センチほどしかなかったので、飛び込んだ勢いで額をしこたま強打し流血した。
後で冷静に考えてみれば、俺は誰か大人に助けを求めに行くべきだったのだ。
もしくは他の子供たちのように「大丈夫!落ち着けって!足着くからっ!」と声をかけてやるべきだった。
子供は足を滑らせてパニクってただけで、小川の流れは緩やかでただ落ち着いて立ち上がるだけで事なきを得られる状況だったのだから。実のところ。
実際俺の額から流れ出る血にびっくりした子供は慌てて立ち上がって「……あれ?」となり岸に上がるついでに窒息寸前だった俺のことも引きずって行ってくれた。
うちの領内の子供は幼い時から親の手伝いで力仕事をしてたりするから大抵年のわりに力持ちだ。
「これって領主様んとこのバカ息子?」
バカとはなんだバカとは!
失礼な!
仮にも領主様の息子だぞ!
五男で他とはちょっとばかり年の離れた恥かきっ子だけど。
……ってか俺の領民たちからの評価ってそうなの?
まあ、末っ子だし両親共に年をとってから出来た子供だし、兄たちも姉も皆すでに成人していて手がかからなかった分、俺はかなり甘やかされて育ってきた。
勉強しろとも言われないし、多少引きこもり気味でゴロゴロ食っちゃ寝してても怒られない。
家は一応貴族で小さくて辺境とは言え領主だから、贅沢とまではいかなくとも食べるに困った覚えはない。
その結果。
基本引きこもり気味でおデブでちょっとおバカな貴族のボンボンが出来上がるわけか。
最近は馬に乗れるようになったおかげで少しは外にも出るようになったけど、所詮10分で疲れる程度の体力。
ちょっとオタクで友達もろくにいない、
頭も良くはない。
……。
ま、言われても仕方ないな。
前回。
俺は溺れ死には免れたものの夜になって高熱を出しそれから三日間寝込んだ。
そして熱にうなされながら前世を思い出していった。
今回はそれを待つまでもなく川底で頭を強打した時点で前世のことも、生まれ変わった後のことも思い出している。
確かに俺は10才前後に戻ることを願ったが、何もこの時でなくていいと思う。
寝て起きたら、とかでいいと思う。
……若干誰かの悪意を感じる気がする。
最下位になってしまった神の嫌がらせとかだろうか。
だとしたらこれで最後にしてほしいものだ。
前世で俺は日本の中学生で、引きこもりのオタクだった。
中学には一年の夏過ぎ、アニメ〇トに美少女アニメのポスターを買いに行った帰りを同級生に見つかってからかわれるようになって以来行かなくなった。
最初はしつこく促していた母親も共働きで忙しく、疲れていたせいもあるのだろう半年を過ぎる頃にはあきらめてたまに声をかけるくらいになった。
俺には結構な進学校に通う兄がいて、親の期待や関心がそちらに傾いていたというのもあると思う。
そんな俺が家を出るのはゲームやマンガの新作が出た時だ。
その日も俺はゲームを買いに家を出た。
そしていつも向かう小さなゲームショップの帰り、川で溺れている子供を見つけて飛び込んだ。
泳げないどころかもう何年もまともに運動もしてないのに。
その後の記憶がないことから、俺はそのまま溺れて死んだのだろう。
引きこもりのクセに妙なところで正義感は強かったらしい。
そしてそのクセは生まれ変わっても変わっていなかったようだ。
気をつけよう。
妙な正義感は禁物だ。
〇〇〇〇〇〇
熱が下がったその日から、俺はさっそく朝夕のランニングを始めた。
朝は身体がまだ本調子とはいかなかったため、軽く屋敷の周りを一周だけ。
夕方は三周。
身体の調子をみながら少しずつ伸ばしていく予定だ。
前世でも、生まれ変わってからも、俺は引きこもりで、そのせいで大切なもの、色んなものをなくした。
前世ではなくしてるって意識はなかったけど、きっと知らずにたくさんのものをなくしていたのだと思う。
なので今回は引きこもりはやめる。
まずは、体力をつけることから始めていく。
ランニングの後は忘れずに念入りにストレッチをして身体を伸ばす。
……固い。
まあいい、いきなりはムリだ。
翌日は筋肉痛で朝夕一周ずつに予定変更した。
大丈夫。
止めずに続けるだけでもいい。
少しずつだ。
その後、一週間は朝夕一周ずつで過ぎた。
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