(元)引きこもりダンジョンマスターが異世界生活をやり直してみた件

黒田悠月

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王立学校魔法科

その12

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 授業が午前のみだったので、ダンジョンに出掛けることにする。

 必要な荷物は持って来ているので、寮には戻らずそのまま向かうことにした。
 靴はそのままだからいいとして、胸当てや剣が装備せずに持ち歩くとそこそこな荷物だ。
 アイテムボックスの便利さが身に染みる。

 全盛期の俺だとアイテムボックスの容量は無制限。
 時間経過なしの代物だったが、まあないものは仕方ない。
 一応道具屋にアイテムバックという劣化版な代物が置いてあるが、バカ高い上に容量は小さいし時間経過もある。

 わざわざ購入するだけの価値はないだろう。

 ーーあーぁ、イヤだな……。 

 ダンジョンに向かう前に寄らなくてはならないだろう。
 今日のところはなくてもいいかな?という気もするが、どのみち後で行くのなら先に済ませた方がマシというもので。

 ーーコートだけ受け取って速攻で逃げる、これでいこう。

 よし、と気合いを入れ直して俺は昨日入ってしまった魔窟に足を踏み入れた。

「いらっしゃい♪」

 相変わらずのスキンヘッドがフリフリエプロンを翻して奥からやってくる。

 ーー……おっしゃ!一人だ!

 昨日より時間が早いからか、ヨハンの姿はない。
 一人でも充分暑苦しいが二人よりはマシだ。

「あら、早かったのね。ヨハンちゃんはまだ来てないのよ」

「今日は学校が昼までだったんで」
「そうそう王立学校の学生さんなんですってね。……ウフフ、いいわねぇ。将来有望ね♪」

 他人の肩に指先でのの字を描くのはやめい。

「コート出来上がってますか?」

 俺は一歩後ろに下がりながら聞いた。 

「出来てるわよ。ちょっと待って」

 ホッ。

 スキンヘッドが俺から離れ、カウンターの下を漁る。
 すぐに袋に入ったコートを取り出してきた。

「一度着てみて?」

 と、差し出されたが、

「や、大丈夫です。裾の長さだけだったし、急ぐんで」

 はよ寄越せ!

「そう?」

 そんな首とか傾げても可愛くないから!
 怖いだけですから!

「じゃ、何かあったら持ってきてくれたらタダで直してあげるから、ね?ウフ」

 ゾワッ!!!!!

 ヤバイ。
 筋肉おネエの上目使いヤバイ。
 背筋が凍りついて一瞬気が遠くなった。

「どもっす」

 俺はコートを受け取ると一目散に店の外にトンズラする。
 その勢いのままダンジョンに向かうと、一心不乱にスライムを狩りながら一気に二階まで駆け下りた。

 そこまで来て、ようやく少し落ち着いた。
 何も考えずに駆け下りてきたので、ドロップアイテムも放置してきてしまったが、まあ、大した金額にもならないのでよしとしよう。

 ーー二階に出現するのはおおねずみか。

 おおねずみは幼稚園児サイズのねずみの魔物だ。
 単独ではなく数匹単位の群れで動く。

 悪いが気晴らしになってもらおう。

 俺は左手にブラックカーテンを発動させ、右手に剣を下げてねずみの群れに突進した。
 ひたすらダンジョン内を走り、人目のない場所を見付けては追ってきた群れを駆逐する。

 ねずみ無双だ。

 何度かレベルアップのメロディーが頭に響く。
 それをひとまず無視して、俺はただただ、ひたすらにねずみを狩り続けた。
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