(元)引きこもりダンジョンマスターが異世界生活をやり直してみた件

黒田悠月

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王立学校魔法科

その11

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 当初の予定通りギルド公認ショップにも立ち寄って簡易な胸当てと膝当てを購入してから寮に戻ると、そこにはいくつかの屍が転がっていた。

 俺は食堂に入ると、屍の一つと同じテーブルに座る。

「おい、シチューに髪が入るぞ?」
「……アイク?」

 ちょっとばかりポッチャリな屍ーーいや、テーブルに突っ伏してへちゃっていたノエルはのそのそと顔をあげる。

「食わないんだったら部屋でさっさと寝た方がいいんじゃないか?」
「ああ、そうしたいところなんだけど。……最低三品は食べるようにって言われてるんだよね」
「まあ、だろうな」

 体力をつけるんなら身体を動かすと同時にしっかり食べることも必須だ。
 食堂内にはノエルの他にも数人が同じようにテーブルに夕飯の皿を並べたまま突っ伏していた。

「……しばらくはこんな光景が続くんだろうな」

 俺は盆に食べ物の皿を乗せながら、胸の中で「ドンマイ」と彼らにエールを贈る。
 寮の食事はバイキング方式で五皿まで好きな皿を選べる。
 それ以上だと事前に支払われている寮費とは別に追加で金を取られる。

 ちなみに今日の俺の夕飯はパンとベーコンステーキと茸の炒め物にコーンスープ。

 なかなかうまそうだ。
 ここの料理人は優秀だな。



 ××××××××××××××××××



 部屋に戻ると俺はすぐに窓を開けて、風の聖霊に呼び掛ける。

 相変わらずクスクス笑いながら周りに集まってくる聖霊たち。
 コイツらはいつでも陽気だな。
 そんなことを思いながら聖霊たちの報告を聞く。

 風には距離など関係がない。
 そこで、俺は風の聖霊に頼んでヤルジの森の様子を探ってもらっている。

 聖霊ってのは、非常に魔力の動きに敏感だ。
 ダンジョンが形成される場所はその前に魔力が段々と濃くなっていく。
 人では気づけない僅かな違い。
 少しずつ、少しずつ濃く深く強く濃密になる魔力に聖霊なら早い段階で気付くことができる。

 聖霊の報告に、俺は眉をひそめた。

 予想はしていたが、実際にそうとわかると嫌気がさす。

 誰かの、何かの陰謀か?
 それとも世界が先の歴史を変えないためにそう過去を変えているのか。
 俺という異分子が入り込んだ弊害か。

「わかった。また頼む」

 そう言って指先を伸ばす。
 指先に魔力を纏わすイメージで。
 そこに群がる聖霊たちに魔力を与えてやる。
 結構な量の魔力を持っていかれて軽く立ち眩みがした。

 ヤルジのダンジョンが形成されるのは過去の世界では俺が学校を卒業してまだ先。
 だが、聖霊たちの報告ではすでに森に僅かだが魔力が増えて来ている。

 ーー早まってる。

 この分だと卒業までもつかどうか。

「……っ」

 俺は小さく舌打ちして、窓を閉めた。

「のんびりはしてられないか」

 やはり歴史を変えるというのは簡単ではないようだ。
 だが変えなければ戻ってきた意味がない。

「……ま、なんとかするしかない」

 とりあえず今日も自分を鍛えるか、と俺は鑑定を発動させた。
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