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スローライフ始めます?
その1
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『てれび』で見た大草原の大きな家っぽい一面の原っぱが私のひとまずの新天地である。
ここは私以外の魔族なら魔力量的に『移動』の魔法陣を使用しても一度では来れない距離だ。
人間の国の一部ではあるけれど、田舎も田舎の国の端っこ。
近くーーといっても普通に歩けば2日ほどかかる場所に小さな村というか集落があるだけの場所。
その昔、人間の賢者だか大魔導師だかが大規模範囲魔法を試し打ちしたあげく失敗して山を二つ更地にした上に土地が呪われて土が腐ってしまったといういわくのある場所である。
とはいえそれは数百年も前の話で、今では土も自然に浄化されて地面には短いながらも草が一面に生えている。
それでももともと山と森に囲まれた土地のため、今でもごく僅かにしか人は住んでいない。
住んでる人間だってきっとちょいと『訳あり』な人間なんじゃないかと思う。
だってそうでもなきゃわざわざこんな不便な場所には住んでいないだろうし。
「ま、その方が都合がいいやね」
私だって『訳あり』だ。
『訳あり』同士なら仲良くやっていける気がする。
「さあって、何から始めるべきかな?」
のんびり田舎スローライフを目指すにしても何にもない原っぱではさすがに辛い。
昼間の内は草の上でゴロゴロするのも魅力的だけど、原っぱにそのまま布団敷いて寝るってのはねぇ?
「寝てる間に蟻にでも這われてたら最悪だわ」
と、いうことはだ。
「まずは家からか……」
とはいえ。
生産魔法が得意な私だけれど、魔法だって万能というわけではない。
何を作るにも材料は必要なのだ。
無から有は作れない。
--家を作るのに必要なのは木と釘。
窓を作るなら硝子と留め金だって必要だろう。
「ってことは鉄」
私は地面から小石や土をすくい上げた。
「『分解』」
その中から炭素と鉄鉱石と石灰石をそれぞれ分解させる。
「『合成』」
数種類の釘を頭の中でイメージする。
コロコロと手の中に30本の釘ができた。
あとは木材。
「……めんどいな」
半日ほど歩けば林があるはずだけど。
--私が自分で伐採して処理するの?
私はキョロキョロと周囲を見回した。
大きめの岩を探しているのだ。
が、草原にはたいして大きな岩はない。
「仕方ないなぁ」
私は空間収納魔法から小さな魔鉱石を一つ取り出して地面に置いた。
「『合成』」
赤く光る魔鉱石に周囲の土くれが集まって一塊になっていき固まっていく。
見る間に私の背を越すほどの巨大な岩の塊が出来上がった。
「『創造』」
頭の中でイメージを膨らませていく。
思い浮かべたのはアニメで見た『どらごん』。
なんでってなんとなく格好いいから?
岩の塊がいったん融解して形を変えていく。
巨大な蜥蜴に羽根の生えた岩の『どらごん』。
岩だから『どらごんゴーレム』って感じだろうか。
でもこれではまだただの『どらごんゴーレム』の彫像だ。
私は『どらごんゴーレム』の顔にフゥッと息と共に魔力を吹き付ける。
ええと、『どらごんゴーレム』だから、『ドラゴ』でいいか。
ま、適当でいいやね。
「『ドラゴ』」
名を呼ぶと、『どらごんゴーレム』こと『ドラゴ』はゆっくりとその目を開けた。
「さっそく命令よ!家を建てるための木材を集めてきてちょうだい!」
私がビシッと指を指して命令すると『ドラゴ』はパカッと大きな口を開いて、何度かパクパクさせたかと思うと首を傾げてうなだれた。
どうやら返事をしようとしたらしい。
けど声が出なかったらしいね。
そりゃそうだ。
だって岩だし。
声帯とか、そこまで細かく作り込んでないし。
や、だってとりあえず木材調達のためにやっつけで適当に作ったしね。
『ドラゴ』のような魔力と名付けで作った疑似生命体--使い魔は制作者=主の思考がなんとなく読み取れてしまう。
私のやっつけだの適当だのな思考をおぼろげながらも読み取った『ドラゴ』はあからさまにしゅんとした。
細かい岩が繋がり合った尻尾がだらんと垂れ下がり、巨木の一つや二つ簡単にへし折るぶっとい片足と爪でいじいじと地面にのの字を書き出したのがうっとうしい。
「あ~、そのうち。うん、役に立ってくれたらちゃんと声出せるように作り直すから」
このままこの巨体にグジグジめそめそされているのもうざいし面倒なのでそう言ってみる。
するとパアッとばかりに『ドラゴ』の顔が明るくなった、と思う。岩だからよくわからんが。
張り切って羽根をバタバタしだした。
「……うぉっ」
ものすごい風圧に私の軽い身体の方が飛ばされそうになる。
慌てて重力魔法を自身に発動。
私の周りだけ重力を1.5倍にした。重い。
『ドラゴ』はといえばふわっ、ともぶわっともしない。岩だし、重いし、羽根は動く飾りみたいなもんでたぶんそれで空は飛べない。
哀愁漂いまくりな魔鉱石と同じ赤い瞳と瞳が合った。
うん、ごめん。
あとでこっちも作り直します。
ちゃんと仕事してくれたらね。
ここは私以外の魔族なら魔力量的に『移動』の魔法陣を使用しても一度では来れない距離だ。
人間の国の一部ではあるけれど、田舎も田舎の国の端っこ。
近くーーといっても普通に歩けば2日ほどかかる場所に小さな村というか集落があるだけの場所。
その昔、人間の賢者だか大魔導師だかが大規模範囲魔法を試し打ちしたあげく失敗して山を二つ更地にした上に土地が呪われて土が腐ってしまったといういわくのある場所である。
とはいえそれは数百年も前の話で、今では土も自然に浄化されて地面には短いながらも草が一面に生えている。
それでももともと山と森に囲まれた土地のため、今でもごく僅かにしか人は住んでいない。
住んでる人間だってきっとちょいと『訳あり』な人間なんじゃないかと思う。
だってそうでもなきゃわざわざこんな不便な場所には住んでいないだろうし。
「ま、その方が都合がいいやね」
私だって『訳あり』だ。
『訳あり』同士なら仲良くやっていける気がする。
「さあって、何から始めるべきかな?」
のんびり田舎スローライフを目指すにしても何にもない原っぱではさすがに辛い。
昼間の内は草の上でゴロゴロするのも魅力的だけど、原っぱにそのまま布団敷いて寝るってのはねぇ?
「寝てる間に蟻にでも這われてたら最悪だわ」
と、いうことはだ。
「まずは家からか……」
とはいえ。
生産魔法が得意な私だけれど、魔法だって万能というわけではない。
何を作るにも材料は必要なのだ。
無から有は作れない。
--家を作るのに必要なのは木と釘。
窓を作るなら硝子と留め金だって必要だろう。
「ってことは鉄」
私は地面から小石や土をすくい上げた。
「『分解』」
その中から炭素と鉄鉱石と石灰石をそれぞれ分解させる。
「『合成』」
数種類の釘を頭の中でイメージする。
コロコロと手の中に30本の釘ができた。
あとは木材。
「……めんどいな」
半日ほど歩けば林があるはずだけど。
--私が自分で伐採して処理するの?
私はキョロキョロと周囲を見回した。
大きめの岩を探しているのだ。
が、草原にはたいして大きな岩はない。
「仕方ないなぁ」
私は空間収納魔法から小さな魔鉱石を一つ取り出して地面に置いた。
「『合成』」
赤く光る魔鉱石に周囲の土くれが集まって一塊になっていき固まっていく。
見る間に私の背を越すほどの巨大な岩の塊が出来上がった。
「『創造』」
頭の中でイメージを膨らませていく。
思い浮かべたのはアニメで見た『どらごん』。
なんでってなんとなく格好いいから?
岩の塊がいったん融解して形を変えていく。
巨大な蜥蜴に羽根の生えた岩の『どらごん』。
岩だから『どらごんゴーレム』って感じだろうか。
でもこれではまだただの『どらごんゴーレム』の彫像だ。
私は『どらごんゴーレム』の顔にフゥッと息と共に魔力を吹き付ける。
ええと、『どらごんゴーレム』だから、『ドラゴ』でいいか。
ま、適当でいいやね。
「『ドラゴ』」
名を呼ぶと、『どらごんゴーレム』こと『ドラゴ』はゆっくりとその目を開けた。
「さっそく命令よ!家を建てるための木材を集めてきてちょうだい!」
私がビシッと指を指して命令すると『ドラゴ』はパカッと大きな口を開いて、何度かパクパクさせたかと思うと首を傾げてうなだれた。
どうやら返事をしようとしたらしい。
けど声が出なかったらしいね。
そりゃそうだ。
だって岩だし。
声帯とか、そこまで細かく作り込んでないし。
や、だってとりあえず木材調達のためにやっつけで適当に作ったしね。
『ドラゴ』のような魔力と名付けで作った疑似生命体--使い魔は制作者=主の思考がなんとなく読み取れてしまう。
私のやっつけだの適当だのな思考をおぼろげながらも読み取った『ドラゴ』はあからさまにしゅんとした。
細かい岩が繋がり合った尻尾がだらんと垂れ下がり、巨木の一つや二つ簡単にへし折るぶっとい片足と爪でいじいじと地面にのの字を書き出したのがうっとうしい。
「あ~、そのうち。うん、役に立ってくれたらちゃんと声出せるように作り直すから」
このままこの巨体にグジグジめそめそされているのもうざいし面倒なのでそう言ってみる。
するとパアッとばかりに『ドラゴ』の顔が明るくなった、と思う。岩だからよくわからんが。
張り切って羽根をバタバタしだした。
「……うぉっ」
ものすごい風圧に私の軽い身体の方が飛ばされそうになる。
慌てて重力魔法を自身に発動。
私の周りだけ重力を1.5倍にした。重い。
『ドラゴ』はといえばふわっ、ともぶわっともしない。岩だし、重いし、羽根は動く飾りみたいなもんでたぶんそれで空は飛べない。
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あとでこっちも作り直します。
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