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呪いと真実
小話 とある魔族のお話①
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もう10日以上『魔力タンク』が来ない。
『魔力タンク』とは魔王軍四天王の一人、ユナ・フリーディアの研究所でのあだ名である。
研究員の一人、ライル・ホークスは開発途中の魔法具『魔導自動車』のボンネットを磨きながら「参ったな」と肩を落とした。
ライルは研究所でも1、2を争う研究者だという自負がある。
実際ライルが主な仕事のパートナーであるユナと共に作り上げてきた魔法具の数々はここ10年ほどで魔族の魔法具の歴史を変えた。
ライルが考えユナが必要な魔力を提供する。
またユナは少々、というか結構なアホの天然娘ではあるが、何故か『間違い探し』が得意だった。
それとひらめきとでもいうべきものと。
ライルが魔力回路の構造や計算、素材の合成に頭を悩ませていると、ひょっこりと顔を覗かせたユナが「こっちのが面白くね?」なぞと一見おかしな提案を寄越してくることがある。
大半は馬鹿げた塵あくたの世迷い言であったが、時折大正解を出してくるから侮れない。
おかげで意味のない検証を何度も繰り返すはめになることもあるが。
『魔導自動車』はライルが一月と少し前に作り上げた鏡型の魔法具――ユナのよく言うところの『てれび』に映し出された『自動車』をガソリンではなく魔力、あるいは魔法具で動かすものだ。
最終的には魔力の少ない人間にさえ動かせるほどに改良を重ねる予定だが、現段階では大量の魔力を必要とする代物。
その試運転を行うはずだった。
なのにユナが、『魔力タンク』が来ない。
現段階の『魔導自動車』を動かせるのはユナくらいのものだ。
同じ四天王の誰か、あるいは自分自身でも多少は動かせなくはない。しかしまともな検証結果が出せるだけの距離が、回数がこなせるかというと――無理である。
ユナが、ガソリンが来ない。
これではライルの大事な研究が先に進まない。
「あ~っ、しかしどうなってんだ?アイツ」
ユナが研究所に来ないなど、今まで一度たりともなかった事態だ。
それも何日も。
入所以来遅刻ナシ欠勤ナシ残業アリの皆勤賞絶賛更新中であったのに。
風邪か?まさか。
アホは風邪なんざひかないはずだ。
「……行ってみるか、屋敷」
ここでひたすらボンネットを磨いていても埒があかない。
ライルはそう決めるとすぐに『移動』の魔法を発動した。
そうして訪れた屋敷に――ユナの姿はなかった。
『魔力タンク』とは魔王軍四天王の一人、ユナ・フリーディアの研究所でのあだ名である。
研究員の一人、ライル・ホークスは開発途中の魔法具『魔導自動車』のボンネットを磨きながら「参ったな」と肩を落とした。
ライルは研究所でも1、2を争う研究者だという自負がある。
実際ライルが主な仕事のパートナーであるユナと共に作り上げてきた魔法具の数々はここ10年ほどで魔族の魔法具の歴史を変えた。
ライルが考えユナが必要な魔力を提供する。
またユナは少々、というか結構なアホの天然娘ではあるが、何故か『間違い探し』が得意だった。
それとひらめきとでもいうべきものと。
ライルが魔力回路の構造や計算、素材の合成に頭を悩ませていると、ひょっこりと顔を覗かせたユナが「こっちのが面白くね?」なぞと一見おかしな提案を寄越してくることがある。
大半は馬鹿げた塵あくたの世迷い言であったが、時折大正解を出してくるから侮れない。
おかげで意味のない検証を何度も繰り返すはめになることもあるが。
『魔導自動車』はライルが一月と少し前に作り上げた鏡型の魔法具――ユナのよく言うところの『てれび』に映し出された『自動車』をガソリンではなく魔力、あるいは魔法具で動かすものだ。
最終的には魔力の少ない人間にさえ動かせるほどに改良を重ねる予定だが、現段階では大量の魔力を必要とする代物。
その試運転を行うはずだった。
なのにユナが、『魔力タンク』が来ない。
現段階の『魔導自動車』を動かせるのはユナくらいのものだ。
同じ四天王の誰か、あるいは自分自身でも多少は動かせなくはない。しかしまともな検証結果が出せるだけの距離が、回数がこなせるかというと――無理である。
ユナが、ガソリンが来ない。
これではライルの大事な研究が先に進まない。
「あ~っ、しかしどうなってんだ?アイツ」
ユナが研究所に来ないなど、今まで一度たりともなかった事態だ。
それも何日も。
入所以来遅刻ナシ欠勤ナシ残業アリの皆勤賞絶賛更新中であったのに。
風邪か?まさか。
アホは風邪なんざひかないはずだ。
「……行ってみるか、屋敷」
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ライルはそう決めるとすぐに『移動』の魔法を発動した。
そうして訪れた屋敷に――ユナの姿はなかった。
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