222 / 334
第222話 理由あっての用意周到
しおりを挟む
「口裏って――ならばこちらも、演技ですか」
佐野が聞く。
「そうだ。しかも彼らは俺よりも用意周到だった」
「というと?」
「去年のうちから、彼らはケイを引き抜く作戦を立てていたんだ」
「そんな早くに!」
ありがたさと困惑が頭の中で、ごちゃごちゃになる。
「去年、俺と二人であの現場へ手伝いに行っただろ? その後で彼らはケイのことをとても高く評価していたというのは、さっき俺、言ったよな?」
「ええ。いまいち信じがたい話でしたが」
実は今も正直、激しく疑っているのだが。
「当時、現場責任者は引き抜きの話などは一切せず、ただそれだけを俺に伝えたんだ。なので正月の手伝いの要請も、単にケイの腕を買われてのことだと俺は思った。なのでこっちもケイを引き抜きをスムーズに行わせるために、あの現場へ送り出したんだ」
「平たく言えば、橋本建設の人達に顔をおぼえてもらうための売り込みですか」
「そうだ。けど、あっちは既に俺の画策なんか飛び越して、入社試験を彼ら独自でやったんだ。で、それをクリアしたら社長へこの話を持って行こうと考えていたんだ。つまり俺のやり方とは全く逆さ」
「ではもしや、入社試験って……」
「うん。例の、正月の突貫工事だ。あれでケイの全てを見極めようとしたんだ。でも、工期短縮のアクシデントは演技でもやらせでもない。計画外の出来事だ。けれど彼らはそれすら利用してケイを試したんだ。まあ、そこは俺と同じだな」
ユキは苦笑し、そして続ける。
「でもな、彼らを悪く思わないでくれ。こんな乱暴なやり方で、しかもこんなにも急いで試験をしたのには理由があるんだ。決して嫌がらせや下請いじめではないんだ」
佐野が聞く。
「そうだ。しかも彼らは俺よりも用意周到だった」
「というと?」
「去年のうちから、彼らはケイを引き抜く作戦を立てていたんだ」
「そんな早くに!」
ありがたさと困惑が頭の中で、ごちゃごちゃになる。
「去年、俺と二人であの現場へ手伝いに行っただろ? その後で彼らはケイのことをとても高く評価していたというのは、さっき俺、言ったよな?」
「ええ。いまいち信じがたい話でしたが」
実は今も正直、激しく疑っているのだが。
「当時、現場責任者は引き抜きの話などは一切せず、ただそれだけを俺に伝えたんだ。なので正月の手伝いの要請も、単にケイの腕を買われてのことだと俺は思った。なのでこっちもケイを引き抜きをスムーズに行わせるために、あの現場へ送り出したんだ」
「平たく言えば、橋本建設の人達に顔をおぼえてもらうための売り込みですか」
「そうだ。けど、あっちは既に俺の画策なんか飛び越して、入社試験を彼ら独自でやったんだ。で、それをクリアしたら社長へこの話を持って行こうと考えていたんだ。つまり俺のやり方とは全く逆さ」
「ではもしや、入社試験って……」
「うん。例の、正月の突貫工事だ。あれでケイの全てを見極めようとしたんだ。でも、工期短縮のアクシデントは演技でもやらせでもない。計画外の出来事だ。けれど彼らはそれすら利用してケイを試したんだ。まあ、そこは俺と同じだな」
ユキは苦笑し、そして続ける。
「でもな、彼らを悪く思わないでくれ。こんな乱暴なやり方で、しかもこんなにも急いで試験をしたのには理由があるんだ。決して嫌がらせや下請いじめではないんだ」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
81
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる