「先に裏切ったのは貴方ですよ。復讐は貴女だけの特権」-その他

『むらさき』

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マッチングアプリ

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 ある晩、彼女、美咲は彼氏のケータのスマホが光るのをまた見た。彼女の心は疲れていた。

「ケータ、またマッチングアプリ?」

 美咲が尋ねると、ケータは慌ててスマホをポケットに突っ込んだ。

「大丈夫だよ、気にするなって。俺たちの関係に変わりはないから」

 しかし、美咲の耐え忍ぶ心は既に限界だった。彼女は決意を固め、自らもマッチングアプリを始めることにした。復讐ではなく、新たな出発を求めて。

 数週間後、アプリで知り合ったユウジとの初デートの夜、彼女は新しい感情の芽生えを感じた。

「美咲さん、映画どうでした?」ユウジが優しく聞いた。

「素敵だったわ。あなたが選んでくれた映画、本当に私の好みをわかってるみたい」

 ケータとは異なり、ユウジは美咲の好みや価値観に興味を持ち、真剣に向き合ってくれた。彼女の心は徐々にユウジに傾いていった。

 一方、ケータは美咲の変化に気づき始めていた。彼女が笑う理由が、彼ではなくなっていることに。

「美咲、お前、最近楽しそうだな。何かいいことあった?」

 ケータが問うと、美咲は静かに答えた。

「私、誰かに真剣に愛されることの喜びを知ったの。あなたとは違う、新しい誰かにね」

 ケータは言葉を失った。彼が忘れかけていた、関係の大切さを美咲は新たな愛で再発見していたのだ。

 数ヶ月後、美咲とユウジは一緒に海を見に行った。波の音が二人の会話に心地よく溶け込む。

「ユウジ、あなたに出会えて本当に良かったわ」

「俺もだよ、美咲。これからは二人で、もっとたくさんの思い出を作ろう」

 ケータの記憶は遠い彼方にある。美咲は新しい愛に包まれ、本当の幸せを見つけたのだった。


 美咲の去った後、ケータの日常に静かな影を落としていた。彼は自分の行動が招いた結果を冷たく突きつけられたのだ。

 ある曇った日曜日、ケータはふと、美咲との思い出が詰まった公園を訪れた。ベンチに腰掛け、彼はぼんやりとした目で遊ぶ子どもたちを見つめていた。

「美咲と来た時は、もっと色んな話ができたのにな…」

 彼はつぶやいた。しかし、今は誰も彼に応える人はいない。

 その夜、彼のスマートフォンは再びピカピカと光った。しかし今回は違った。マッチングアプリの通知ではなく、バッテリー切れの警告だった。彼は、ふと自分がどれほど孤独であるかを痛感した。

 彼は自分を見つめ直すことにした。美咲との関係を振り返り、自分が何を間違えたのか、何を学ばなければならないのかを考える。彼は心を入れ替え、もう二度と同じ過ちを犯さないと固く誓った。

「もう遊びは終わりだ」

 彼は自らに言い聞かせた。ケータは新しい道を歩み始めるが、その道は長く、孤独で、時には険しいものだった。

 数ヶ月が過ぎ、ケータは自分を変えるための努力を続けていた。彼は仕事にもっと力を入れ、友人や家族との関係を大切にするようになった。しかし、美咲のような人と再び出会うことはなかった。

 一年後、ケータは海を見に行った。美咲とユウジが見た同じ海だ。彼は深くため息をつきながら、過去の自分を赦し、孤独でも前向きに生きることを決心した。

「美咲、ありがとう。お前のおかげで俺は成長できた。幸せになれよ」

 ケータの心の中には、いつまでも消えない美咲の影があった。彼はそれを胸に新しい未来へと歩み始めた。美咲との別れは彼にとって悲劇的な終わりではなく、新しい始まりだったのだ。
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