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俺のこと、“どことなく元カレに似てる”って昔言ってただろ。
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「高橋、ちょっといい?」
偶々、給湯室の前を通ったら女性社員に絡んでいる高橋を見かけたので捕まえた。
っていうか、またお前女に絡んでいるのかい。
「城之内!何か用?」
「ちょっとこっちに来なさい」
流石に気に入らないとはいえ、皆がいる前でこき下ろすのは社会人的にダメかもなぁ・・・と思い、あまり人気のない場所へ誘導する。
「なんだ城之内?一緒に飲みに行く気になったか?」
「その話じゃないんだけど。
あんた最近、女性社員に対して馴れ馴れしいって話題になってるわ。
確かにあんたのルックスは並み以上よ。
でもね、そういうの関係なく踏み込んだ質問をされたりするのが嫌な子もいるし・・・。
昨今それはセクハラになり得るの、自重しなさい」
そう注意すれば。
「やきもちかー?姫華」
なんて軽薄な返事がきたことが普通にムカつく。
「むしろあんたには嫌悪感しかないんだけど」
いかんいかん。
コイツの煽りに頭に血が上ってきそうだ。
「ムカつくけど、好きなんだろ?」
「んなわけない」
被せ気味に即答した私に、挑むような笑顔を向けて腕を組む高橋。
「俺のこと、“どことなく元カレに似てる”って昔言ってただろ。
元カレの面影がある俺が、他の女の子にちょっかい出すところ見たくないんじゃないか?」
―――元カレ。
城之内姫華に元カレと呼べる男はただひとり。
そう、姫華の子どもの父親である。
高橋に色々言い返したい気持ちと、姫華を妊娠させた男への憎悪、本物の姫華が発した言葉へのショックで言葉が出てこなくなった。
私の無言を肯定と捉えた高橋は、
「デスクの引き出しに元カレからのプレゼントを大事懇々しまってるくらいだから、まだ未練があるんだろ?
でも、俺はその元カレとは違う人間だし、遊んでくれるならいいけどあんまり俺に干渉してくれるなよ」
とジロリと私を一瞥し、手をひらひら振って立ち去っていく高橋。
彼の上質そうなスーツに包まれた形の良い背中を見つめながら、様々なことが頭を駆け巡る。
城之内姫華を妊娠させた元カレは、どことなく高橋敢に似た雰囲気の男性である。
元カレと高橋敢が似ていることと、元カレからのプレゼントを会社のデスクにしまってあることを、本物の姫華は高橋敢に教えている。
「それくらい、姫華は高橋のことが好き、だったのかなぁ・・・?」
誰もいない空間に、私の小さく呟いた声が響いた。
偶々、給湯室の前を通ったら女性社員に絡んでいる高橋を見かけたので捕まえた。
っていうか、またお前女に絡んでいるのかい。
「城之内!何か用?」
「ちょっとこっちに来なさい」
流石に気に入らないとはいえ、皆がいる前でこき下ろすのは社会人的にダメかもなぁ・・・と思い、あまり人気のない場所へ誘導する。
「なんだ城之内?一緒に飲みに行く気になったか?」
「その話じゃないんだけど。
あんた最近、女性社員に対して馴れ馴れしいって話題になってるわ。
確かにあんたのルックスは並み以上よ。
でもね、そういうの関係なく踏み込んだ質問をされたりするのが嫌な子もいるし・・・。
昨今それはセクハラになり得るの、自重しなさい」
そう注意すれば。
「やきもちかー?姫華」
なんて軽薄な返事がきたことが普通にムカつく。
「むしろあんたには嫌悪感しかないんだけど」
いかんいかん。
コイツの煽りに頭に血が上ってきそうだ。
「ムカつくけど、好きなんだろ?」
「んなわけない」
被せ気味に即答した私に、挑むような笑顔を向けて腕を組む高橋。
「俺のこと、“どことなく元カレに似てる”って昔言ってただろ。
元カレの面影がある俺が、他の女の子にちょっかい出すところ見たくないんじゃないか?」
―――元カレ。
城之内姫華に元カレと呼べる男はただひとり。
そう、姫華の子どもの父親である。
高橋に色々言い返したい気持ちと、姫華を妊娠させた男への憎悪、本物の姫華が発した言葉へのショックで言葉が出てこなくなった。
私の無言を肯定と捉えた高橋は、
「デスクの引き出しに元カレからのプレゼントを大事懇々しまってるくらいだから、まだ未練があるんだろ?
でも、俺はその元カレとは違う人間だし、遊んでくれるならいいけどあんまり俺に干渉してくれるなよ」
とジロリと私を一瞥し、手をひらひら振って立ち去っていく高橋。
彼の上質そうなスーツに包まれた形の良い背中を見つめながら、様々なことが頭を駆け巡る。
城之内姫華を妊娠させた元カレは、どことなく高橋敢に似た雰囲気の男性である。
元カレと高橋敢が似ていることと、元カレからのプレゼントを会社のデスクにしまってあることを、本物の姫華は高橋敢に教えている。
「それくらい、姫華は高橋のことが好き、だったのかなぁ・・・?」
誰もいない空間に、私の小さく呟いた声が響いた。
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