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32話 そのためにいる
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「だったら、他の人を攻略するんだね」
「う、ん。だけど、他の人っていっても……」
ため息混じりに言われ、つい口ごもってしまう。
一成先輩は攻略不可になったし、潤くんはありえない。
他に攻略できる人っていったら、……同じクラスの佐久間広夢くんぐらい?
広夢くんは明るくて人懐っこそうで良い感じだったけど、私の破滅的なテストの点数を見て、好感度が下がったんだよね。しかも、広夢くんはクラスの人気者だから、気が引けるというか。
コミュ力のない私が広夢くんの攻略をするのは、難しい気がする。
一番攻略が簡単と言われていた一成先輩の攻略に失敗し、完全に気落ちしている私。
高校生の授業にもついていけないし、運動もできないし、友達も少ないし、恋愛もダメダメだし。
「もう、無理な気がしてきた」
思わず弱音を吐いてしまう。
「何が?」
「このゲーム、クリアできないかも」
苦笑いで言葉を返したら、悠真が真剣な表情で私の目をじっと見つめた。
「リタイヤするの?」
リタイヤか。その方がいいのかな。
「私なんかよりも、他の人の方がきっと上手くやれるよね」
「だから、何?」
「何って」
「他の人がどうとかじゃなくて、杏がどうしたいかを聞いてるんだけど」
「私は……」
自分がどうしたいのかも、正直よく分からない。
ただ、疲れたなって……。
「たった二回失敗したぐらいで諦めるの?」
返事を返せないでいる私に代わり、悠真が畳みかけてくる。
「無職引きこもりに戻りたいなら、どうぞ」
うぅ……、厳しい。
でも、悠真の言う通りだ。
途中でギブアップしたところで他に就職先があるわけでもないし、行き着く先は元の引きこもり。
これが人生を変えるラストチャンスだと思って、ゲーム攻略を決めたのに。結局私は、いつまでも無職引きこもりマインドのままだ。
少しでも上手くいかなったら、すぐにやめたくなる。
途中で投げ出したくなる。
両方の手のひらをぎゅっと握り、うつむいまま口を開く。
「悠真。私、本当は続けたい。諦めたくない」
「うん、続けたらいいんじゃない?」
「でも、クリアできる自信がないの」
私の声はびっくりするくらいに震えていて、顔もあげられない。悠真がどんな顔をしているのか見るのが怖かった。
「自信ないなら、頼ってよ」
もっとこき下ろされるかなと思ったけど、悠真の声は意外にも優しかった。おそるおそる顔をあげる。
「そのために僕がいる」
目が合った瞬間、悠真がわずかに笑みを浮かべた。
「う、ん。だけど、他の人っていっても……」
ため息混じりに言われ、つい口ごもってしまう。
一成先輩は攻略不可になったし、潤くんはありえない。
他に攻略できる人っていったら、……同じクラスの佐久間広夢くんぐらい?
広夢くんは明るくて人懐っこそうで良い感じだったけど、私の破滅的なテストの点数を見て、好感度が下がったんだよね。しかも、広夢くんはクラスの人気者だから、気が引けるというか。
コミュ力のない私が広夢くんの攻略をするのは、難しい気がする。
一番攻略が簡単と言われていた一成先輩の攻略に失敗し、完全に気落ちしている私。
高校生の授業にもついていけないし、運動もできないし、友達も少ないし、恋愛もダメダメだし。
「もう、無理な気がしてきた」
思わず弱音を吐いてしまう。
「何が?」
「このゲーム、クリアできないかも」
苦笑いで言葉を返したら、悠真が真剣な表情で私の目をじっと見つめた。
「リタイヤするの?」
リタイヤか。その方がいいのかな。
「私なんかよりも、他の人の方がきっと上手くやれるよね」
「だから、何?」
「何って」
「他の人がどうとかじゃなくて、杏がどうしたいかを聞いてるんだけど」
「私は……」
自分がどうしたいのかも、正直よく分からない。
ただ、疲れたなって……。
「たった二回失敗したぐらいで諦めるの?」
返事を返せないでいる私に代わり、悠真が畳みかけてくる。
「無職引きこもりに戻りたいなら、どうぞ」
うぅ……、厳しい。
でも、悠真の言う通りだ。
途中でギブアップしたところで他に就職先があるわけでもないし、行き着く先は元の引きこもり。
これが人生を変えるラストチャンスだと思って、ゲーム攻略を決めたのに。結局私は、いつまでも無職引きこもりマインドのままだ。
少しでも上手くいかなったら、すぐにやめたくなる。
途中で投げ出したくなる。
両方の手のひらをぎゅっと握り、うつむいまま口を開く。
「悠真。私、本当は続けたい。諦めたくない」
「うん、続けたらいいんじゃない?」
「でも、クリアできる自信がないの」
私の声はびっくりするくらいに震えていて、顔もあげられない。悠真がどんな顔をしているのか見るのが怖かった。
「自信ないなら、頼ってよ」
もっとこき下ろされるかなと思ったけど、悠真の声は意外にも優しかった。おそるおそる顔をあげる。
「そのために僕がいる」
目が合った瞬間、悠真がわずかに笑みを浮かべた。
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