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33話 頼りにしてます

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「頼りにしてます……っ!」

 反射的に返事をしちゃった。

 ただでさえ暑い七月のお昼休み。
 一気に体温がぶわぁっと熱くなった気がした。

 悠真がかっこよく見える気がする。

 いや、元々顔はかっこいいとは思ってたけど。
 それだけじゃなくて、なんか、こう……。

 そっけないようで、いつも色々アドバイスしてくれるし、思ったより優しい、というか。

 ……て、悠真を意識しても、しょうがないんだった。
 攻略対象じゃないもん。悠真を好きになっても、ハッピーエンド迎えられないし。

 そう自分に言い聞かせ、悠真の言葉を待つ。

「よし。じゃあ、まずは」

 まずは? 新しい攻略対象の紹介?
 なんて、ちょっとだけワクワクしてたんだけど。

「勉強だね」

 予想外の返しにガックリきてしまう。

「勉強?」
「もうすぐ期末テストだって、忘れてない?」

 悠真が呆れたような視線を私に向ける。

 そ、そうだった。テスト……、やばい……!

「勉強もがんばらないと、誰も攻略できないよ」

 たしかに。
 そこまで高いパラメーターが求められない人を攻略するとしても、前回みたいなテストの点数が続いたら攻略無理だよね。私のテストの点数が酷すぎるせいで、広夢くんの好感度も下がった。

「どうしよう……」

 たぶんサーっと青ざめているだろう顔で、悠真を見上げる。

「一緒に勉強しようか」
「悠真が教えてくれるの?」
「いいよ。厳しくてもいいなら」

 真顔で言ってのける悠真。
 ですよね、分かってた。

「お、お願いします……」

 その日からテストまでの一週間、放課後は毎日どちらかの家で勉強することになった。
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