どんな選択肢を選んでも失敗エンドを迎える現代学園物乙女ゲームのヒロインになりましたが、ハッピーエンドを目指したいと思います!

春音優月

文字の大きさ
36 / 44

36話 試合観戦

しおりを挟む
 三日後の土曜。
 広夢くんの出る試合を見るため、私は休日の学校にきていた。

 全然関係ないなのに試合を見にくるのもどうかと思ったんだけど、せっかく誘ってくれたんだし。うん。

 そう自分に言い聞かせながら、校庭まで歩いていく。

 休日の校庭には、男子サッカー部以外の部活の人もけっこういた。

 野球部、陸上部、ハンドボール部。
 それから、女子サッカー部も。千夏ちゃんいるかな?

 赤色のユニフォームの女子サッカー部の中から千夏ちゃんを探しているうちに、男子サッカー部の試合が始まった。

 広夢くんは、すぐに見つけることできた。
 だって、広夢くんは誰よりも輝いていたから。

 相手チームから素早くボールを奪い、広夢くんはゴールを目指す。チーム内でパスを回しながらも、広夢くんは広いフィールドを駆ける。

 広夢くんはクラスの人気者で、いつだって輝いている。
 だけど、サッカーボールを追いかけている広夢くんは、教室にいる時よりも、もっともっと輝いていた。

 すごいな、かっこいいなって、ただだた引き込まれる。

 広夢くんを目で追っているうちに、いつのまにか試合が終わっていた。

 いったんお昼休憩に入ったのか、男子サッカー部員の人たちがバラバラに散っていく。

 広夢くんは、一人で運動場から校舎に向かって歩いていた。

 さっきの試合、かっこよかったよ――広夢くんにすぐに伝えたくて、彼の後を追いかける。

 後ろから広夢くんに声をかけようとしていたとき。

「広夢!」

 千夏ちゃん?

 反対側から千夏ちゃんが走ってくるのが視界に入り、とっさに校舎の裏に隠れる。

 別に隠れる必要なんてなかったかもしれないけど、つい隠れてしまった。千夏ちゃんの顔があまりに必死だったというか、焦って見えたというか、とにかくいつもの千夏ちゃんと全然違っていたから。

「さっきのケガ、大丈夫?」

 千夏ちゃんは広夢くんに近づきながら、早口で話しかける。

「よく見てるね」

 苦笑いを浮かべる広夢くん。
 
 ケガ……? なんてしてたの?
 全然分からなかった……。

「大丈夫。ちょっと足首をひねっただけだよ」
「そうやって無理してたら、またサッカーやれなくなるからね?」

 またって……?

「分かってる。ありがとう、千夏」
「分かってないでしょ……」

 千夏ちゃんは呆れたような目で広夢くんを見て、ため息をつく。しばらくして諦めたのか、千夏ちゃんはこちら側に向かって歩き出した。

 ……や、やばい。
 逃げようと思っても逃げる場所なんてどこにもなく、千夏ちゃんと鉢合わせてしまう。

「杏? 来てたの?」

 私を見つけた途端、千夏ちゃんは目を丸くした。
 
「あー……、えっとーっ」
「広夢でしょ? 向こうにいるから、声かけてあげなよ」

 千夏ちゃんが広夢くんのいる方を指差す。

「最近のあいつ、杏の話ばかりでさ。絶対杏のこと好きだよね」
「え? いやー……」

 まだ好感度半分だし、それはないと思うけどな。
 なんてことはもちろん言えず、曖昧な返しをしていると、「早くいってきなよ」と背中を押される。

 勢い余って、広夢くんのいる場所にまで移動してしまった。

「杏ちゃん? 来てくれてたんだ!」

 広夢くんの顔がぱぁっと明るくなる。
 同時に胸のハートのピンク色部分もぐーんと増えた。

 あ、好感度半分超えた。
 喜ぶべきなのかもしれないけど、私はさっきの千夏ちゃんと広夢くんの会話が気になり、それどころではなかった。

 広夢くんと千夏ちゃん、思っているよりもずっと
 仲良いんだね。

 それに、広夢くんのケガにもすぐに気がついて、千夏ちゃんって本当に良く広夢くんを見てるんだなーって。
 本当にケガしてたとしても、大したことなかったとしても、どっちにしても気がつかなかった。

 ただ広夢くんがかっこよくて、キラキラしてて、それだけだった。だけど、千夏ちゃんは違うんだね。

 
 千夏ちゃんと広夢くんって、何かあるのかな?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが

侑子
恋愛
 十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。  しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。 「どうして!? 一体どうしてなの~!?」  いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

【完結】平安の姫が悪役令嬢になったなら

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
 平安のお姫様が悪役令嬢に転生した、平安おかめ姫と皇太子の恋物語。  悪役令嬢のイザベルはある日、恨みをかったことで階段から突き落とされて、前世の記憶を思い出した。  平安のお姫様だったことを思い出したイザベルは今の自分を醜いと思い、おかめのお面を作りことあるごとに被ろうとする。  以前と変わったイザベルに興味を持ち始めた皇太子は、徐々にイザベルに引かれていき……。  本編完結しました。番外編を時折投稿していきたいと思います。  設定甘めです。細かいことは気にせずに書いています。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...