21 / 91
チャラ男会計
2
しおりを挟む【來城祥side】
楽しいこと大好き。気持ちいいこと大好き。セックス大好き。
そんな俺の名前は來城祥。生徒会会計をしているよ~。
あ、この話し方からか知らないけどよく皆からチャラ男って言われてるんだー。まあ、親衛隊は皆セフレだし仕方ない。下半身ゆるゆるっていうのは自分でも自覚している。
だって、俺男だよ?男は全員性欲の塊っていうじゃん。まじそれ。この男子しかいない学校でもヤらせてくれそうな奴がいたら普通に気持ちいいことしてる。
そこに愛だのなんだのそう言う感情は全くない。ただ、性処理をしているだけ。
まあ、ここまで言えば俺が悪いやつみたいじゃん?いやいや、全然違うからねー。
ま、説得力ないとか言われてもしょうがないか。
よし、今日も暇潰しにあの嫌われ者の苦しむ姿でも見ようか。そう思いながら、前で一人廊下をトロトロと歩いていたキモオタを後ろから蹴ってやった。
そしたら、すぐに悲痛な声を出し、崩れ落ちた。
ふふふ、ざまぁ。
「うわ、小さくてゴミかと思ったー。じゃあねん」
俺はクク、と笑いながら横を通りすぎて行った。
今日は金曜日。気分がいい日。
だって明日は、“あの子”に会えるから。
俺が“あの子”に出会ったのは生徒会の仕事で見回りに行っていた時のことだ。全部のクラスを確認し、チェックをしなければない。
仕事なんて、正直面倒くさかった。だけど生徒会の特権がなくなるのは嫌だからやるしかない。
そんなやる気のない気持ちでもほぼ見回りが終わり、最後にあとは、1年Zクラス、通称落ちこぼれクラスだけだった。
────そこにいた。
“あの子”は。
俺が扉越しに窓から教室の中を確認しようとした時、誰か人がいるっていうことはわかった。
最初はうわ、人いんのかよ~最悪ー。的なことを思っていたけどあの子の顔が見えた瞬間、胸が張り裂けるように熱くなり言葉が何も出なかった。
…な、なにあれ。あんな子いた?誰もが惹き付けられる容姿。とても綺麗で言葉では表せようができないくらいその子は可愛くて美しかった。
天使じゃん。すぐ思った。いつもなら、可愛い子大好きな俺は強引にナンパして話しかける。
だけど、その子にはそれができなかった。ここから見ることしか許されない、俺が話しかけてもいいような子ではないような感じがした。
汚れを知らなそうで、その子は一人で机を一つ一つ丁寧に布巾で拭いていた。
それから俺は土曜日が来るのが楽しくなった。その子を見るだけで幸せな気持ちになった。
…いつか、話してみたい。
…笑ってる顔がみたい。
感じたことのない欲求が次々と溢れてきた。
あの子は、いつも土曜日の朝、誰もいないZクラスに現れる。それからはあの子のことを知るためにいろいろ自分なりに調べたりした。
だけど、結果なし。
Zクラスにいたから、そこの生徒かな?って思って調べてみたけどやっぱりあの子姿はなかった。範囲を広げてもだめだった。
あの子は一体、誰なんだろう…。ものすごく、知りたくてたまらない。
この時、俺は思った。
あの子のことが好きなんだって。
まさか、自分が誰かを本気で好きになるなんて思わなかった。しかも名前も知らない、話だって一度もしたことがない相手に。
誰かを好きになる気持ちがわかった気がした。夢中になるし、その子しか考えられない。こう…心が温かくなる。
どうしよう。遠くから見守っているだけで欲情してしまう。
それからずっと土曜日はZクラスにあの子を見に通いつめた。
誰にも教えてやんない。俺だけが知っていればそれでいい。渡さない。
俺って、結構独占欲強いんだってその時知った。
カモフラージュ?するために、季節外れにきた転校生に惚れてるような態度をとった。その転校生、瑞希は“あの子”がいたZクラスの生徒。
ただそれだけの興味本意。
瑞希にはぶっちゃけ悪いんだけど俺、あーいうタイプ無理なんだよね~。顔はまあ、整ってる感じだけど惚れようとは思わない。でも、惚れてるような態度をとらないと怪しまれるし、結構好きアピール演技をしている。
まじで俳優なれるかもとか思ったね。
瑞希に近づくものの、瑞希は俺の嫌いなあの嫌われ者と一緒に行動していた。まじ、うんざり。
何でよりに限ってアイツ?勘弁だわ。見るだけでイラつくよね。
あー、早く土曜日こい。
あの子に会いたい。
─────
───────
……。
それから、毎日楽しみにしていた土曜日がきた。あの子に会える。
早く会いたくて仕方がない。一週間前も見たけど、やっぱり毎日会いたい。土曜日だけっていうのがなんか焦らされるよね。
そして、Zクラスに着いた。
…ん?
何やら騒がしい。
いつものように、こっそりバレないように窓から覗く。
「っ!」
な、なんだ、あれ。俺はクラスを見て目を見開いた。嘘だろ。
あれって、あの子と瑞希…?なんで、あそこに瑞希がいるんだ?俺は何が起きてるかわからなかった。
中の様子は、瑞希があの子に手を差し伸べているところだった。あの子は瑞希の手を掴み、ゆっくりと立ち上がった。
すると、その瞬間突然、瑞希はあの子の顎をクイッとあげて
『…どうしよう。すっごく今キスしたい。…いい?』
とか言い出した。
は?キ、ス…だと?
ふざけるなッ。
怒りが心の奥底から溢れ出た。
俺が最初に見つけたんだ。横取りなんて許さない。
ガラッー
黙って見ることなんて当然できなくて扉を開けた。我慢が限界に達した。
瑞希も見つけたんだあの子を。
俺だけだと思っていたのに。
でも、絶対渡さないよ。俺のものだから。
「だ、誰だ!?」
「やっほーん♪瑞希~」
さりげなく入って、近づいた。
すると、ムカつくことに瑞希は誰にも見せないようにあの子の顔を自分の胸へと寄せて隠していた。
…うわー、まじむかつく。俺だってまだ触れたことないのに。
「な、なんで祥がここにいるんだよ!!いつからいた!?」
「今来たとこだよ~。うーんと、瑞希が見えたからかな~?」
瑞希は慌てた様子だった。まさか、瑞希とあの子が一緒にいたこと時点で驚きだ。
でも最初に見つけたのは俺が先。
「そ、そうなのか!でも今はお取り込み中だ!!」
へぇ。お取り込み中…ね。
「その子は誰なのー?」
「は!?ぜ、絶対教えないぞ!!!」
なんだ、それ。
「瑞希のことは何でも知りたいんだ~。だから教えてよ」
「こ、これだけは無理だ!!しつこいぞ!」
なんとしてでも言わない気だ。
「なんで無理なの~?」
ここで引き下がったらだめだ。
「だ、だって、あおいは俺のものだからな!!」
その瞬間、瑞希はしまったみたいな顔をしてあの子を連れて教室から飛び出して行った。
はっ?
「………………あおい?」
あの子が…あおいだと?てことは、。
っ!?
はははっ!何ふざけたことを…。あおいって俺が嫌いな奴の名前じゃん。そんなことあるわけないだろ。
後を追う気力さえ失い、俺は全身から力が抜けるような感じがした。
84
あなたにおすすめの小説
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
生まれ変わりは嫌われ者
青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。
「ケイラ…っ!!」
王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。
「グレン……。愛してる。」
「あぁ。俺も愛してるケイラ。」
壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。
━━━━━━━━━━━━━━━
あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。
なのにー、
運命というのは時に残酷なものだ。
俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。
一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。
★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!
告白ごっこ
みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。
ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。
更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。
テンプレの罰ゲーム告白ものです。
表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました!
ムーンライトノベルズでも同時公開。
風紀委員長様は王道転校生がお嫌い
八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。
11/21 登場人物まとめを追加しました。
【第7回BL小説大賞エントリー中】
山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。
この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。
東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。
風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。
しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。
ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。
おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!?
そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。
何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから!
※11/12に10話加筆しています。
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
【完結】初恋のアルファには番がいた—番までの距離—
水樹りと
BL
蛍は三度、運命を感じたことがある。
幼い日、高校、そして大学。
高校で再会した初恋の人は匂いのないアルファ――そのとき彼に番がいると知る。
運命に選ばれなかったオメガの俺は、それでも“自分で選ぶ恋”を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる