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しおりを挟むと、思っていた時期がありました。
「お母様。今なんと…?」
家に帰り、お風呂や夕食を終えた後ゆっくり自室で過ごしていたら、母から耳を疑うようなことを言われた。
「あなたに婚約者が決まったのよ」
にっこりと嬉しそう。突然のことで理解が追いつかない。
「こ、婚約者って…あのまだ10歳なんですけど」
それに勝手に話を進められちゃったら正直困る。色々俺にもやりたいことがあるし。
「年齢は関係ないわ。早いのは一般的よ。早くて損はないし、ルアンはこんなに可愛い子だから変な人にもらわれても困るのよね。それにね、婚約者相手がなんとあの公爵家様となんてこんな喜ばしいことないわ」
母は自分のことのように喜んで生き生きしている。まあ、言い分はわかる。自分の子には良い人と結ばれてほしいことは。公爵家と言っていたので、将来性のことを考え安心したんだろう。でも!それは自分で見つけたいし、第一母が無理に婚約者側を説得させたに違いない。
「お母様は知らないだろうけど、俺はわがままで態度もデカいし、気に入らないことがあれば相手を傷つけることなんて当然。それに魔力なんて無いし…。他所に出せないくらいだと自覚しています」
言ってて悲しいが、つまりその公爵家の子が可哀想だ。惜しいけどきっと可愛い子なんだろうな。俺以外の人と幸せになってくれと、まだ見ぬ婚約者に心の中で別れを告げる。
「あらあら、わがままくらいが可愛いのよ。魔力が無いのも愛嬌じゃない。それにね、相手の子からの申し込んできたわよ、ルアンが良いって」
「え、それは本当ですか?」
相手から申し込んできたとは俺の知ってる人なのか?それにわがままも可愛い、魔力が無いのも愛嬌と言ってくれる母は俺に甘過ぎる。母からは自分のだめのところも含めて好きと肯定してくれるところが伝わって温かい。でも人を傷つける行為はちゃんと注意してくれたっていいんだよ!
「知らないの?同じ学園の子じゃない。本人から聞いてないの?」
「え?誰?」
同じ学園の子か…。特に仲の良い女の子はいないし、残念ながら接点なんか何も無い。もしかして人違いなんじゃないかと思えてきた。
「ダリルという子よ」
「ダリル?…え?」
本日2回目の耳を疑う発言。ダリルってあのダリル?今日文句を言われてた気がするけどあいつ?いやいやまさかな。
「えっともう一度聞いてもいいですか?」
「公爵家の子のダリルよ。魔力も高くて最近では剣の腕も将来有望と言われてるほどと聞くわ」
「絶対、無理です」
「あら、どうして?」
「その人に嫌われてますんで、多分人違いです」
というか頼むから人違いで合ってくれ。
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