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幼少期
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しおりを挟む櫂は本当に良い子に育った。何回でも言うが俺が育てたと言ってもおかしくない。自慢の推しだ。そりゃあさ、こんな良い子が近くにいたら親目線にもなる。うんうんと心の中で一人頷く。
まあ、そんな良い子が最近、誰かのせいでキスキスと言い出しては変なことをするようになったわけだけど。元々はそんな子じゃなかった。もっと純粋でぽわぽわしていた。
櫂に誤った知識を教えた獅子堂ってやつは重罪だ。いずれにしろ、会う気はないがもし今後間違えて会ってしまったらそれなりの対応はするつもりだ。推しは偉大だ。
何せ、櫂の幸せのために今まで頑張ってきた。それを壊されてしまってはいけない。なぜかは知らないが、俺は獅子堂ってやつに好奇な目で見られているらしい。それも余計に腹が立つし、気に食わない。
『ーーー残念、今日の最下位は乙女座のあなたです。特にライオンに関連するものに注意!!』
テレビから流れる朝の生放送の番組。占いは毎朝、ルーティンとして必ず見ると言っても過言じゃない。残念ながら、今日の俺の星座は最下位らしい。そんな日もあるさとかポジティブに考えられない。
くそ。まじか。
意外と占いは信じる方だ。
内容は、ライオンに関連するものに注意だって。動物園にはさすがに行かないし、ライオンに関連するアイテムなんて持ってないからきっと大丈夫だと思うけど。
「悠生、今日は午後から大雨だから傘を持って行きなさいね」
母親から、ビニール傘を渡された。すると、傘の持ち手部分に何かのストラップが付いていた。
よく見ると、あれだ。
食べるっ子アニマルのライオン丸くんじゃん。
ん?ライオン…?そう言えばさっき
『ライオンに関連するものに注意!』
え、さっそくですか…?まだ数分も経ってないんですけど。そして、ライオン丸くんとしばらく見つめ合う。
母さんには悪いが傘はそぅっと置いて家から出た。少し寂しげに見えたライオン丸くん。今日はお前の出番じゃないんだ。許してくれ。
「はぁ~…」
玄関を出て、すぐにため息。スタートがこれだと落ち込むんだが。占いまじで恐ろしや。
てか、天気めっちゃ良い!太陽が眩しい。これで雨が降るって展開ありえない。
「ゆうせい、どうしたの?もしかして元気ない?」
櫂がひょっこり顔を出す。すでに家の前で待っていてくれたみたいだった。ちなみに櫂とは毎朝一緒に学校へと登校している。俺たちの中でどちらかの家の前で待つっていうのが自然に決まっている。
「まあちょっと、乙女座が最下位だったから落ち込んでた」
しかもすぐにライオンが現れてビビった。あれは本当ビビるからやめてほしい。結構あのキャラ好きだったのに、トラウマになりそうだ。ごめんな、ライオン丸くん。
「ふふっ。ゆうせいは本当ウラナイが好きだね!」
「まあ、俺の場合結構当たるし」
「ただし悪いことだけね!ふふ」
「他人事だと思って笑うなよ」
「あははっ!ほら学校行くよ!」
俺とは正反対に楽しそうな櫂。推しがハッピーなら別にいいか。いつもはネガティブだが、推しの前だとポジティブになれる。
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