公女は祖国を隣国に売ることに決めました。

彩柚月

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中編 (前)

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 ロザリアは王子との婚約解消を報告するためにカートレット公爵の父と対面していた。

「ふむ。いいのだな?」
「ええ。お父様。もう隣国に頼る他ありません。決断してください。」

「王家を捨てるか…。こうなっては致し方あるまいな。良いだろう。私は表立っては動けない。お前が隣国へ交渉に行ってくれるか。婚約破棄で傷心のため留学するという理由で良いだろう。その間に婚約解消の手続きは終わらせておく。」

「もちろんです。諸々のこと、お願いいたしますわ。」


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隣国クレイドでの1年が過ぎようとしている。父の外交人脈のおかげもあり、滞りなくクレイドの皇室との交渉は済んだ。既にクレイドの皇女エリザベス様がアクエストに先行している。後から派遣する予定の公爵令息にも急ピッチで教育を受けてもらっている。

「準備は順調に進んでいるよ。」

「アクエストの王太子の様子はどうなのでしょう?」

「君の言った通りのようだ。だがここへきて計画が崩れても困るから、念の為、薬を使うよ。既にあちらの陛下には話は通してある。」

「そうでございますか…」
「気になるの?」

「わたくしはこれでも婚約者でしたので。それなりに情はありますわ。」

「愛していたと?」

「そう…ですわね。いつか嫁いで共に立つものと信じておりましたので。」

「君はよく頑張った。君を大切にしない王子が悪い。もう後戻りはできない。」

「わかっておりますわ。これはほんの少しの懐古でございます。」

「それなら良いが。全てが終わったら君には私の元へ来て欲しいと思っている。」

「え?」

「これから全力で口説くよ。」

「えっと…」

それからさらに半年。
エリザベス様からの連絡がきた。
「全ての準備は整った」と。


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アクエストに着き、久しぶりの王陛下と非公式の謁見を行なった。エリザベス様とオリヴァー皇太子、今はまだアクア家令息のディクソン様と必要な書類の確認をし、後は「その日」を待つだけとなった。

久しぶりの王宮を散歩する。変わらない美しい庭園と、変わってしまった景色に一年半という時間の流れに感慨深いものを感じながら、ゆっくりと歩いていると、会いたくない人と会ってしまう。



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