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王太子の事情
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しおりを挟む楽しみができた私の世界は色付いたように見えた。毎日、沸き立つような、浮き立つような、楽しさがあった。これが恋だと知った。
同じ女でもロザリアとは全く違う。あいつはいつも脳面のように微笑を貼り付けて、チラとも動かない。可愛げがない。
だが。何故か、ある日から突然、彼女は居なくなった。教師に聞こうにも、臨時の教師だったらしく、彼も居なくなった。
再び色のない世界に放り込まれたようだった。私の何かが悪かったのか。女性の砦を破ったからには、何とかして一生面倒を見るつもりだったのだが。もしかして、それが誰かにバレて連れ戻されたのかもしれない。
罪悪感に苛まれるも、改めて周りを見渡すと、可愛らしい女性は沢山居ることに気づいた。
例の音楽教室を、私専用のプライペートルームとさせた。学園長を半ば脅すように押し通した。
鍵は私しか持っていない。
何度か、側近達が部屋の検めを強行したが、おあつらえ向きに、準備室があった。元々はそこに楽器などが置いてあったのだろう。そこの鍵は、持っていないことにしてある。女生徒にはそこに隠れてもらった。
昼休み、しばしの時間をそこで過ごし、授業が始まる前に、鍵を閉めるふりをして開けておく。放課後、女性が部屋に入った頃を見計らって、私が鍵を開けたフリをして入る。出る時は私が先に。鍵を閉めて行くが、中からは鍵を開けられる。そして、朝、登校して、鍵を閉めたり閉めなかったり。
つまり、実質開けっぱなしだ。
だが。盗まれるような物も置いて居ないし、だいたい、私の部屋に入るような不敬を犯す愚か者も居ないだろう。
何人もの女性と仲良くした。不思議なことに、しばらくすると、その女性は居なくなってしまうのだが。結婚が決まったとか実家に帰るとか、理由がわからないまま消えた女性も居たが、まあ似たような理由なのだろう。女性だからな。学院に通うことは必須ではないのだし、婚姻などの理由で学院を辞めることは珍しくないのだろう。そこに疑問を感じることはなかった。
その気になれば、相手は向こうから寄ってくるのだと知った私は、相手の事情など、気にしなくなっていた。居なくなったら次を見つければ良いのだから。
そういえば、父も愛人が沢山いる。後宮に立ち入ったことはないが、もう誰が誰だかわからない程の人数がいる。
そうか。父もそうなのだから、たくさんの女性を愛することは間違いではない。これもきっと王家の人間として相応しい振る舞いのひとつで合っているだろう。今は、その練習をしていると思えば良い。
罪悪感など、全く起こらなくなっていた。
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