2 / 31
2
しおりを挟むあの日は日曜日で、私はピアノの発表会だった。3部に分かれており、小学生の私は1部で発表を終えて、両親とご飯を食べて帰ってきたのだ。
発表会のために買ってもらった、おニューのツーピースドレスに、ピカピカのローファー。おめかししたその格好を誰かに見せたくて仕方がなかった私は、家に着いてから着替えをせずに、お寺に向かった。
そこで目にしたのは、男の子達が、私のお気に入りのグルグルジャングルで、1人が天辺に立ちグルグル回す回転にどれだけ耐えられるか、という遊びだった。
今ならわかるが、ものすごく危険な遊び方だと思う。落ちたら怪我で済まないこともあるかもしれない。それは規制も入るだろう。
しかも、あれは私の遊具ではないのだから、子供達の誰が遊んでいてもいいはずだ。なのに、大切な自分の物を勝手に使われて、しかも自分の知らない遊びをしていることに腹立たしさを感じて、あろうことか、男の子達に宣戦布告をしたのだ。
私にだって、あのくらい登れる。その時は本気でそう思ったし、実際、いつもの装いなら登れただろう。でもその時の私は、小学生低学年ながら、ドレスアップした窮屈なボレロにスカート。それに、運動靴ではなく、裏がツルツルのローファー。
天辺に辿り着く直前で、見事に滑ったのだ。転落する私を蓮が掴んでくれたのだが、掴んだ場所が悪かった。スカートが破れて履いていた毛糸のパンツが丸見えになってしまった。可愛いピンクのクマが描いてあったので、それからしばらく、私はピンくまという渾名で呼ばれることになった。
蓮の方はパンツめくりと揶揄われていたようだ。正しくはスカートめくりじゃないかな?と思うが、子供にはパンツが印象に残ったのだろう。
そういえば。あの事件から距離を取るようになった気がする。気恥ずかしくて仕方がなかったんだ。
「お互い気まずい、みたいな?」
「そうかも。まあ、あれが理由だったら仕方ないなあ。」
「あの年頃にパンツ事件はキッツいもんねえ。」
「はっきり言わないでよ。今でも思い出すと恥ずかしいんだから。」
「ふふ。ごめんごめん。」
瑠奏はイタズラっぽく揶揄ってから誤った。私の恥ずかしさを軽減しようとしてくれているのだとわかるから、私も本気では怒っていない。
瑠奏みたいに、蓮とも友達でいられたら良かったのにな。
「そう言えばさ。知ってる?」
と、瑠奏が言う。何のことかと私も聞き返す。
「何を?」
「あの遊び場、人魂が出るってオカルトな噂があるんだよ。」
「何それ?」
「夜になると、青い人魂が浮いてるんだって。遊具が古くなって危険だし、そんな変な噂も出るから、今は立ち入り禁止なんだって。って言っても、看板が立ってるだけだから簡単に入れるみたいだけど。」
「へえ。何か思い出の場所がオカルトスポットになるのって、微妙な気分。」
「そうだね。思い出の場所が汚された気分。」
そんな話をして家に帰る。
こうして、何気ない毎日は過ぎていく。
2
あなたにおすすめの小説
お姫様の願い事
月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。
ローズお姉さまのドレス
有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です*
最近のルイーゼは少しおかしい。
いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。
話し方もお姉さまそっくり。
わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。
表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成
理想の王妃様
青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。
王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。
王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題!
で、そんな二人がどーなったか?
ざまぁ?ありです。
お気楽にお読みください。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
20年、へそくり30万円が3000万円になったら、夫が毎月「今いくら?」と聞いてくる
ベテランママ。
経済・企業
2005年、ライブドアショックのちょい前から投資生活を始め、最初は投資資産30万円。で、現在はへそくり総額3000万円に。3000万円を超えた!とついうれしくて夫に報告したら、それから毎月「今いくら?」と人のへそくりを聞くようになりました。ちょっとウザイ。
悪女の死んだ国
神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。
悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか.........
2話完結 1/14に2話の内容を増やしました
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる